刺身のミネラルを測ってみた|第1回 ブリの血合いは鉄がすごかった

ミネラル分析を仕事にしていると、普段食べているものにどんなミネラルが含まれているのか、どうしても気になります。

「魚には、どんなミネラルがどのくらい含まれているんだろう?」

そんな素朴な疑問から、今回は刺身を実際に購入して、ミネラル分析をしてみることにしました。

会社の近くのマルエツで刺身を購入

購入したのは、会社の近くのマルエツ様。

「刺身の盛り合わせがあるかな」と思っていたのですが、今回は見当たらなかったので、単品で購入することにしました。

今回購入したのは、

  • サーモン
  • ブリ
  • キハダマグロ
  • ビンナガマグロ

です。

せっかくなので、ブリについては少し工夫しました。

ブリの刺身を見ると、赤い部分と、それ以外の白っぽい部分がはっきり分かれています。

この赤い部分、いわゆる血合いです。

そこで、

「血合いと、それ以外ではミネラルの量はどのくらい違うんだろう?」

と思い、ブリについては血合いの部分と、血合いではない白い部分を分けて分析することにしました。

※ブリは分類上、赤身魚です。今回の記事では便宜上、血合いではない部分を「白い部分」と表現しています。

そして、購入した刺身はもちろん……

おいしくいただきました。

食べるだけでは終わらないのが、ミネラル分析屋です。

いざ、ICP-MSで分析

ICP-MSは、非常に微量な元素まで測定できる分析装置です。

髪の毛を中心に普段からさまざまな試料を分析していますが、今回は「刺身」。

身近な食品を自分たちで測るというのは、なかなかワクワクします。

まずは前処理で酸の海にゆっくりと沈めて。。。

時間をかけて溶けていただきました。

そしてICP-MSでの分析(こちらはイメージ画像です)

ブリの血合いと白い部分で、鉄が20倍違った

そして、結果を見てみると……

かなりはっきりした違いが出ました。

鉄です。

今回分析したブリでは、血合いの部分と血合いではない白い部分で、鉄の量に大きな差がありました。

100gあたりに換算すると、

部位鉄
血合い4.1 mg/100g
白い部分0.21 mg/100g

なんと、

約20倍です。

血合いのほうが、圧倒的に鉄が多い結果になりました。

刺身を見ていると、赤い部分と白っぽい部分があることは分かります。

でも、実際に元素分析をしてみると、

「こんなに違うんだ」

と驚かされます。

あの赤い血合いの部分には、鉄がかなり集まっていたんですね。

なぜ血合いには鉄が多いのか?

そもそも、魚の血合いは何なのでしょうか。

血合いは、魚が泳ぎ続けるために重要な筋肉です。

魚の中でも特に、長時間泳ぎ続けるような魚では、酸素を利用するための仕組みが発達しています。

その中で重要なのが、ミオグロビンです。

ミオグロビンは筋肉中に存在する、鉄を含むタンパク質。

筋肉に酸素を供給・保持する役割を担っています。

血合いが赤黒く見えるのも、このような色素タンパク質が多く含まれていることが関係しています。

今回の鉄の分析結果を見ると、

「なるほど、だから血合いは赤いんだな」

と、目で見ていたものと元素分析の結果がつながってきます。

食品を元素という視点から見てみると、普段何気なく食べているものにも、いろいろな発見があります。

食品成分表では、ブリの鉄は1.3mg/100g

ちなみに、文部科学省の食品成分データベースでは、ブリ(生)の鉄は100gあたり1.3mgとされています。

今回の分析では、

  • 血合い:4.1mg
  • 白い部分:0.21mg

でした。

この差を見ると、

「食品成分表の1.3mgは、血合いの多い部分と少ない部分を含めた代表的な値なのかな?」

とも考えられます。

仮に血合いの割合が2割を仮定すると100g中1mgとなり、だいぶ食品成分表と近くなります。

ただし、食品成分表の値と今回の実測値は、必ずしも同じ個体・同じ部位・同じ試料条件ではありません。

そのため、今回の結果だけから「食品成分表はこういう内訳で作られている」と断定することはできません。

食品成分表は、私たちが食品の栄養成分を知るうえで非常に重要な基礎データです。

一方で、今回のように実際に購入した食品を自分たちで測ってみると、代表値だけでは見えてこない部分にも気づくことがあります。

刺身から見えてくるミネラル

今回の分析は、まだ始まったばかりです。

サーモン、ブリ、キハダマグロ、ビンナガマグロ。

それぞれの魚について、さまざまな元素を測定しています。

今回のブリの血合いと白い部分の鉄のように、

「同じ魚なのに、こんなに違うの?」

と思うようなデータもありました。

次回以降、ほかの魚についても少しずつご紹介していきたいと思います。

魚を食べるとき、いつもなら「赤身かな」「脂がのってるかな」と見ますが、

これからは少しだけ、

「この部分には、どんなミネラルが入っているんだろう?」

という目線で刺身を見てみるのも面白いかもしれません。


やりたいを、いつまでも。

ミネラル検査をきっかけに。

ら・べるびぃ予防医学研究所