水銀による健康と環境への被害を食い止めるため、国際的な取り組みがスイス・ジュネーブで進められています。水俣病の原因物質である水銀を規制する「水銀に関する水俣条約」の第6回締約国会議(COP6)が、2025年11月3日から7日まで開催されています。
焦点は「銀歯(歯科用アマルガム)」と「化粧品」の規制強化
今回の会議の最大の焦点は、歯科用アマルガム(銀歯)の規制強化です。
1. 歯科用アマルガムの規制:
- 現状: 現在、アマルガムは「段階的削減」の対象となっています。
- COP6での議論: 会議では、「禁止」に向けた規制強化(段階的な廃止)が議論の中心です。
- 国際的な状況: カナダ、米国、オーストラリアなどでは今も安価な治療法として使われていますが、日本では2016年に保険適用から外され、現在は製造・使用されていません。
2. 水銀を含む化粧品の実効性:
- 現状: 水銀を含む化粧品はすでに国際的に禁止されています。
- 課題: しかし、インターネット通販やアフリカ・アジアの一部地域では依然として販売が続いている現状があります。
- COP6での議論: 禁止の実効性を高めるための方策、特に違法取引対策やモニタリングの強化が話し合われます。
水銀は、使用を制限するだけでなく、禁止の実効性を確保するための国際協力が不可欠です。
水俣病とは? 人体と環境への深刻な影響
水俣条約の名称の由来となった水俣病は、改めて水銀の危険性を世界に訴えています。
水俣病は、化学工場から海や河川に排出されたメチル水銀化合物を魚介類が体内に高濃度に蓄積し、それを日常的に食べた住民に発生した中毒性の神経疾患です。
- 発生地と経過: 熊本県水俣湾周辺を中心とする八代海沿岸で、昭和31年(1956年)に初めて患者が報告されました。その後、新潟県阿賀野川流域でも発生が確認されました。
- 症状: メチル水銀は中枢神経系に強い毒性を示し、感覚障害(手足のしびれ)、運動失調、視野狭窄、聴力障害などを引き起こします。特に、胎児はメチル水銀に対して感受性が強く、胎児性水俣病として深刻な症状が現れることがあります。
日本人は水銀が体内に蓄積されやすい?
魚を日常的に食する日本人は、特に有機水銀(メチル水銀)が体内に入ることが多い傾向があります。食物連鎖により、マグロなどの大型魚に蓄積されるためです。
<ら・べるびぃ予防医学研究所のブログより>
・水銀、長かった戦い…ついに集結(完結編)3ヶ月毎日マグロとはんぺん食べてみた
・「水俣病は遺伝する?」報道を受けて─正しく知っておきたい、胎児性水俣病と遺伝の違い
未来のための国際的な約束
水俣条約は、日本の公害の経験から生まれた、未来のための国際的な約束です。
今回の会議を通じて、水銀のない世界の実現に向けた具体的な一歩が踏み出されることが期待されます。水俣病という悲劇を経験した日本の知見と教訓が、国際社会の議論をリードすることが重要です。
ら・べるびぃ予防医学研究所
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