古い和本に残された「毛髪」が、江戸の食生活を語る――毛髪ミネラル検査から見えてくる、身体と暮らしの記録

「髪の毛から、過去の身体の状態がわかる」

毛髪は、血液のように「その瞬間」の状態を見る検体とは異なり、伸ばしていく過程でミネラルなどの情報を取り込みながら、一定期間の傾向を残していく特徴があります。弊社の毛髪ミネラル検査でも、毛髪に含まれるミネラルや有害金属を測定し、数か月単位の栄養状態や曝露の傾向を把握することに役立てています。

そんな「毛髪に残された過去の情報」が、なんと江戸時代から明治時代の人々の暮らしを知る手がかりにもなっていた――。

2026年8月、龍谷大学などの研究グループが、古い和本の表紙に漉き込まれていた毛髪を分析し、当時の都市庶民の食生活や生活環境を復元した研究を発表しました。国際学術誌『Scientific Reports』に掲載された、非常に興味深い論文です。

「古い本」が、なぜ毛髪を保存していたのか?

今回注目されたのは、江戸時代から明治時代にかけて作られた「和本」です。

当時の和本の表紙には、古紙などを原料とした再生厚紙が使われていました。そして、その紙を作る工程で、人の毛髪が偶然混ざり込んでいたのです。

研究グループは、龍谷大学大宮図書館の蔵書を中心に約7万冊の古い和本を調査。そのうち約400部から毛髪試料を収集し、元素分析や安定同位体分析を行いました。

さらに和本には、出版地や年代を示す「刊記」が残っているものがあります。

  • 「いつ・どこで作られた本なのか」が特定できる
  • その本に残された毛髪を調べることで「その時代、その地域で暮らしていた人々の食や環境」を推定できる

まさに、毛髪を内包した「暮らしのタイムカプセル」といえます。

江戸の庶民は「質素な食事」? ミネラルから見えた意外な事実

研究から見えてきたのは、江戸から明治にかけての都市庶民の食生活です。

同位体分析からは、食生活が米などのC3植物と海産魚を中心としており、時代が進むにつれて米への依存や海産魚の利用が増えていったことが示されました。

「米と魚が中心の質素な食生活だったのでは?」と思われがちですが、毛髪中の元素を調べてみると意外な結果が出ました。

歴史時代の毛髪からは、現代の都市住民と比較して、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、銅(Cu)、カリウム(K)、マンガン(Mn)など、複数の元素濃度が高い傾向が確認されたのです。

「食材の種類が多い=必ずしもミネラルが豊富」とは限らない。この事実は、現代の私たちにとっても深い示唆を与えてくれます。精白度の低い米や海産物、当時の調理法や加工・保存方法などが、ミネラルの供給や利用可能性に関係していたと考えられます。

「食べたもの」だけでなく「暮らしの痕跡」まで読み解く

今回の研究が特に面白いのは、毛髪から読み取れるのが単純な「栄養状態」にとどまらない点です。

例えば、歴史時代の毛髪では塩素(Cl)鉛(Pb)も高く検出されました。

  • 塩素:冷蔵庫がなかった時代、塩蔵による食品保存が一般的だった背景を反映
  • :当時使われていた「白粉(おしろい)」など、日常生活での曝露が要因として推察

毛髪を残された元素から分析することで、「何を食べたか」だけでなく、食品の保存法や調理器具、生活用品に至るまで、当時の「暮らしそのもの」に迫ることができるのです。

論文では、このように本の中に保存された生体情報を分析する学問的アプローチを「libraromics(ライブラロミクス)」と紹介しています。本そのものが生物学的なアーカイブになり得るという、実に刺激的な概念です。

過去と現代をつなぐ「毛髪の記録性」

毛髪は1か月に約1cmという安定したペースで伸び、その過程で成分を取り込んでいきます。そのため、血液検査とは異なり、一定期間にわたる傾向(履歴)を見やすいという特徴があります。

もちろん、何百年も前の毛髪から歴史を紐解く学術研究と、現在の健康管理を目的とした毛髪ミネラル検査は、アプローチも目的も異なります。

しかし共通しているのは、「毛髪には、過去の暮らしに関する情報が静かに記録されている」という事実です。

毛髪は、身体内部の出来事を完璧に写し出す魔法の媒体ではありません。元素濃度は食事量だけに比例するわけではなく、代謝や外部曝露など多様な要因が絡み合います。だからこそ、毛髪のデータだけでなく、食文化や歴史的背景と組み合わせて解釈することが重要になります。

これは、現代の毛髪ミネラル検査にもまったく同じことが言えます。数値だけに囚われるのではなく、日々の食事内容や生活環境と照らし合わせながら活用することにこそ、本当の価値があります。

「今の自分」を知るために、過去の積み重ねを振りかえる

今回の研究は、「昔の食事の方が健康的だった」と単純に結論づけるものではありません(鉛の曝露や塩分の高さなど、注意すべき点もあります)。

重要なのは、「私たちの毎日の積み重ねが、毛髪という身近な組織にひとつの『履歴』として残っていく」という視点です。

食べたもの、生活環境、日々の習慣。それらが自分の身体にどう影響しているのか。

毛髪ミネラル検査は病気を診断するものではありませんが、数か月単位の体の傾向を映し出し、自身の食生活や生活環境を客観的に見直すきっかけになります。

何百年前の和本に閉じ込められた一本の毛髪が、当時の人々の生き生きとした暮らしを教えてくれたように。あなたの髪もまた、今日までのあなたの生活を静かに記録しています。

「過去の自分」を振り返り、これからの健康をつくるための小さなタイムカプセルとして、一度ご自身の毛髪ミネラルバランスに目を向けてみてはいかがでしょうか。

参考文献

毛髪ミネラル検査にご興味がある方はこちら↓↓

からだミネラル検査 | ら・べるびぃ予防医学研究所 Online Shop

塗るマグネシウムクリーム 3本使い切ってみた

「ミネラル、足りていますか?」

そう聞かれて、すぐに答えられる人はどれくらいいるでしょうか。

そもそも私は、「ミネラル不足」という言葉を見るたびに、少し不思議な気持ちになります。

ミネラルって、全部ひとまとめで考えていいの?

という疑問です。

ミネラルにはいろいろな種類があります。

普段の食事で比較的摂れているものもあれば、摂りすぎに注意したいものもある。そして、食生活によっては不足しやすいものもあります。

だから「ミネラルが足りない」ではなく、

「何のミネラルが足りないの?」

と考えることが大切だと思っています。

私が注目しているのがマグネシウム

マグネシウムは、体内で300種類以上の酵素反応に関わる重要なミネラルです。

エネルギー産生にも関わりますし、筋肉や神経の正常な働きにも関係しています。

特に私の場合、ランニングをします。走る。汗をかく。そして、脚が疲れる。

そんな生活をしていると、マグネシウムなどのミネラルが気になってきます。

そこで試してみたのが、「塗るマグネシウムクリーム」です。

本当に「塗る」だけ?

今回使ったのは、塩化マグネシウムを20%配合したクリーム。

最初に使ったときの感想は、

おお……クリームだ、でした。当たり前です(笑)。

普段、あまりクリームを使わないので、塗った直後の

「ぬるぬるする!」

という感覚が気になりましたが、使っているうちに慣れてきました。

そして、私が使ったのは1本ではありません。

3本です。

せっかくなので、しばらく使い続けてみることにしました。

ランニング後に使ってみた

私の場合、使うタイミングは主にランニング後。

走った後って、脚に独特の疲労感があります。

そして、何度も走っていると、

「今日はちょっと脚が張っているな」

とか、

「このままいくと攣りそうだな」

という感覚が分かるようになってきます。

そんなときに、マグネシウムクリームを塗ってみました。

すると……

なんとなく、落ち着く。

これが正直な感想でした。

疲労感がスーッと抜けていくような感じ。

「お、これはいいかも」

と思いました。

ただし、ここは大事なので言っておきます。

これは、あくまで私自身の「感覚」です。

マグネシウムクリームを塗ったら筋肉の疲労が取れる、と科学的に確認したわけではありません。

「効いた!」と断言するつもりもありません。

だからこそ、3本使い切ってみました。

そして、血液も調べてみた

せっかく、ら・べるびぃ予防医学研究所です。

「塗ったら本当にマグネシウムが増えるの?」

これは一度、調べてみたくなります。

そこで、塗る前と、使った後で、血液中のマグネシウムを分析してみました。

結果は……あまり変わりませんでした。

「え? じゃあダメじゃん」

と思った方。

ちょっと待ってください。

血液中のマグネシウムは、そんな簡単には動かない

医学博士にこの結果を確認してみました。

すると、

「血液中のマグネシウムは恒常性が保たれているから、そう簡単に変化しない。むしろ、何かを塗っただけで血液中の濃度が大きく変わったら、それはそれで怖い」

という話でした。

なるほど。考えてみれば、身体は血液中のミネラル濃度を一定に保とうとします。

実際、体内にあるマグネシウムのうち、血清中に存在するのは1%未満。血清Mgはかなり厳密に調節されています。

つまり、

「血液中のマグネシウムが変わらなかった=マグネシウムクリームに意味がない」

とは、単純には言えません。

そもそも血液中のマグネシウムだけでは、体内のマグネシウム状態をすべて評価することもできません。

じゃあ、3本使ってどうだった?

ここからは、完全に私個人の感想です。

私の場合は、

「攣りそうだな」

と感じたときに塗る。

これが一番しっくりきました。

そして、塗った後に、

「なんとなく落ち着く」

という感覚がある。

だから、3本使い切った今の私なら、

「ランニングやスポーツをする人が、セルフケアのひとつとして使ってみるのはアリ」

だと思っています。

ただし、ここは繰り返します。

今回は、あくまで私自身の体感です。

マグネシウムが筋肉の働きに関係することはよく知られていますが、マグネシウム補給による「こむら返り予防」そのものについては、研究結果が一貫しているわけではありません。特に運動に伴う筋痙攣については、十分な臨床試験がありません。

だから私は、

「これを塗れば攣らない!」

とは言いません。

でも、

「攣りそうになる前の、自分なりのケアとして使ってみる」

というのは、面白い使い方だと思います。

今回、3本使い切ってみて改めて思ったのは、個人的には、かなり気に入りました。

ランニングやスポーツをされる方。

脚のケアを大切にしている方。

マグネシウムを毎日の生活に取り入れてみたい方。

気になる方は、ぜひ一度チェックしてみてください。

塗るマグネシウムクリーム NuRuMg – ヌルマグ-

※本記事は、筆者個人の使用感・体験を紹介するものであり、製品の効果を保証するものではありません。

ゲリラ豪雨を採取して、本気でミネラル分析してみました。

先日、突然のゲリラ豪雨。

「あっ、雨だ。」

普通の人なら洗濯物を取り込むところですが、

「サンプル採らなきゃ!!」

慌てて容器を持って外へ飛び出しました。

その時の様子はこちらです。

実はリベンジだったんです

「なんでそんなことを?」

実は以前、台風(チャンミー)が来たときにも雨を採取しようとしたことがありました。

ところが…。

ビーカーを置いて雨水をためようと思っていたら、ビーカーが無くなっておりました。。。

今回は、そのリベンジ、何がなんでも集めてやらねばと。

……目的はもちろん雨水のミネラル分析です。

まずはpHを測定

採取した雨水のpHを測定すると、約5でした。

現在、日本の酸性雨調査では全国平均がおおよそこのくらいと報告されており、今回の結果もその範囲に収まりました。

一方で、約5年前に採取した台風の雨水はpH6前後でした。

なぜ違うのでしょうか。

考えてみると、今回のゲリラ豪雨は降り始めに採取しています。

一方、5年前は雨が降り始めてからしばらく経ってから採取しました。

雨は降り始めと降り続いた後では大気中の物質の取り込み方が変わることが知られているため、その影響があったのかもしれません。

もちろん、天候や場所などさまざまな要因があるので、今回だけで結論は出せませんが、とても興味深い結果でした。

いよいよミネラル分析

続いて、ICP-MSでミネラルを分析しました。

今回はイメージしやすいように、一般的な水道水と比較してみます。

硬度

水道水(全国平均):約46 mg/L

ゲリラ豪雨0.4 mg/L

なんと、

100分の1以下。

まさに超・超軟水でした。

「軟水」というレベルではなく、ミネラルがほとんど含まれていない水と言ってもよいくらいです。

ほとんどの元素が非常に少ない

カルシウムやマグネシウムをはじめ、多くの元素は水道水よりかなり低い値でした。

一方で、比較的水道水との差が小さかったのはマンガンです。

実は水道水では、鉄やマンガンは浄水処理によって取り除かれています。

そのため、この結果を見たときは、

「なるほど、そういうことか。」

と納得しました。

雨はとてもきれいな水…とは限らない

今回の分析では、雨水は非常にミネラルが少ないことが分かりました。

ただし、「ミネラルが少ない=安全」「雨は純水だから飲める」という意味ではありません。

雨は降る過程で大気中のさまざまな物質を取り込みますし、採取方法や環境によっても成分は変化します。

だからこそ、実際に分析して確かめることが大切です。

これからも面白そうなサンプルを見つけたら、どんどん分析していきたいと思います。

水の検査にご興味があればぜひおうち水ミネラル検査。

【お酒の飲みすぎに注意】アルコールが「体内の鉄バランス」を乱す?意外と知られていない鉄過剰のリスク

「鉄分=不足すると貧血になる栄養素」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。

確かに鉄は健康維持に欠かせない必須ミネラルですが、実は不足しても過剰になっても体に悪影響を及ぼすことが知られています。

近年では、習慣的な飲酒が体内の鉄を調節する仕組みを乱し、体内に鉄が溜まりやすくなる可能性が報告されています。

今回は、国立がん研究センターなどによる大規模疫学研究(JPHC研究)をもとに、鉄の役割や過剰蓄積のリスク、そしてアルコールとの意外な関係について解説します。

1.鉄は体の中でどんな働きをしている?

鉄は、私たちの生命維持に欠かせない必須ミネラルです。主な働きには次のようなものがあります。

  • 酸素を全身へ運ぶ: 赤血球に含まれるヘモグロビンの材料となり、肺で取り込んだ酸素を全身へ届けます。
  • エネルギーを作る: 細胞内でエネルギー(ATP)を産生する酵素の働きをサポートします。
  • 体や脳の機能を支える: コラーゲンの合成や神経伝達物質の産生に関わり、皮膚、骨、脳の健康維持を支えています。

このように、鉄は日々の活動を裏で支える重要な存在です。

2.実は「多すぎても危険」な鉄

鉄不足による貧血は有名ですが、実は鉄が体内に過剰に蓄積することも健康上のリスクとなります。

人間の体には、増えすぎた鉄を積極的に排出する仕組みがほとんどありません。そのため、必要以上に吸収された鉄は、主に肝臓などに溜まりやすい性質があります。

鉄過剰が引き起こす「酸化ストレス」

体内の余分な鉄(遊離鉄)は、体内の過酸化水素などと反応し、「ヒドロキシラジカル」と呼ばれる非常に攻撃力の強い活性酸素を生み出します(フェントン反応)。

この強力な酸化ストレスによって、以下のようなリスクが生じることが指摘されています。

  • DNAや細胞の損傷: 長期的にはがんのリスクとの関連が指摘されています。
  • 肝臓への負担: 鉄が蓄積することで、脂肪肝や肝硬変などへの影響が懸念されます。
  • 糖尿病リスクの上昇: 膵臓の細胞がダメージを受けることで、インスリンの分泌が低下する可能性があります。

つまり、鉄は生命維持に不可欠である一方、多すぎると細胞を傷つける「諸刃の剣」にもなり得るのです。

3.鉄バランスを守るブレーキ役「ヘプシジン」

では、私たちの体はどのようにして鉄の量を調整しているのでしょうか?

そのカギを握るのが、肝臓で作られる「ヘプシジン」というホルモンです。

  • 鉄が十分にあるとき: ヘプシジンが増加し、腸からの鉄吸収を抑える
  • 鉄が不足しているとき: ヘプシジンが減少し、腸からの鉄吸収を促す

このようにヘプシジンは、体内の鉄が増えすぎないようにコントロールする「ブレーキ役」を果たしています。

4.アルコールは鉄の調節機能を狂わせる?

国立がん研究センターなどの研究グループは、日本人を対象とした大規模研究(JPHC研究)において、飲酒量と鉄代謝マーカー(血清鉄、フェリチン、ヘプシジン)の関係を解析しました。

その結果、お酒と鉄代謝に関して興味深い傾向が明らかになりました。

飲酒量が多い人ほど「フェリチン」が高い傾向

男性および閉経後の女性において、アルコール摂取量が多い人ほど血清鉄やフェリチン値が高い傾向が認められました。 ※フェリチンは体内の貯蔵鉄量を反映する指標ですが、炎症や肝障害でも上昇するため、この数値だけで直ちに鉄過剰と断定はできません。

ヘプシジンの「ブレーキ機能」が弱まる可能性

本来であれば、貯蔵鉄(フェリチン)が増えるとヘプシジンも増え、鉄の吸収を抑えようとします。 しかし習慣的に飲酒している人では、フェリチンが高いにもかかわらずヘプシジンが十分に増えず、鉄の吸収を抑えるブレーキが利きにくくなっている可能性が示されました。

男性・閉経後女性で明確な傾向

この関連は男性と閉経後女性で顕著にみられました。閉経前の女性で同様の傾向が見られなかった背景には、月経による日常的な鉄の喪失や、性別による代謝の違いが影響していると考えられています。

【研究から言えること】 今回の研究は因果関係を直接証明するものではありませんが、「習慣的な多量飲酒がヘプシジンの調整機能を低下させ、体内の鉄バランスを乱す一因になり得る」という重要な示唆を与えています。

5.今日からできる3つの鉄・アルコール対策

「お酒の影響」といえば肝機能指標(γ-GTPなど)に目が向きがちですが、これからは「鉄代謝への影響」にも配慮することが大切です。

  1. 適正飲酒と休肝日を意識する 毎日の大量飲酒は鉄代謝のブレーキ機能を鈍らせる可能性があります。週に数日は休肝日を設け、適量を楽しみましょう。
  2. 自己判断での「高用量鉄サプリ」に注意する 特に男性や閉経後の女性は、明確な鉄欠乏がないにもかかわらず高用量の鉄サプリメントを飲み続けるのは避けましょう。判断に迷う場合は医師へ相談することをおすすめします。
  3. 定期的な健診で体をチェックする 健診や精密検査の際、必要に応じてフェリチンなどの鉄代謝マーカーを調べることも可能です。気になる症状や数値がある場合は、医療機関で受診・相談しましょう。

「鉄分=摂れば摂るほど良い」というわけではありません。

アルコールは肝臓だけでなく、体内の鉄バランスの調整役にも影響を与えている可能性があります。これまでの「貧血対策」という視点に加えて、これからは「鉄の過剰蓄積を防ぐ」という視点も持ち合わせながら、適度なお酒とバランスの良い食事を心がけていきましょう。

参考文献

タイの食塩誤認事故で注目された「亜硝酸塩」とは?知っておきたい光と影

今回は、ニュースで報じられた衝撃的な事故をきっかけに、私たちの身近にある化学物質「亜硝酸塩」について、その役割と危険性を分かりやすくご紹介します。

タイの飲食店で起きた「食塩と亜硝酸塩」の誤認事故

2026年6月、タイ・ウドンタニ州の飲食店で、店主がゴミの山から見つけた正体不明の薄黄色の粉末を食塩と思い込み、麺料理の調味料として使用する事故が発生しました。

料理を食べた客や店主の親族らは、食後まもなく激しい吐き気、めまい、嘔吐、呼吸困難などの症状を訴え、次々と病院へ搬送されました。一時は4人が重篤な状態となり、大きなニュースとなりました。

その後の調査で、この粉末は「亜硝酸塩」であることが判明しました。当局の分析では、料理を数杯食べるだけで致死量に達する可能性があるほど高濃度だったと報告されています。

この事故は、亜硝酸塩そのものというより、「正体不明の薬品を調味料として使用した」ことが原因で起きた悲劇でした。

一方で、亜硝酸塩は私たちにとって決して珍しい物質ではありません。ハムやソーセージなどの加工肉では、発色剤や保存料として国の厳しい基準のもと、ごく微量が使用されています。

では、この亜硝酸塩(そして体内で変化する硝酸塩)は、私たちの健康にどのような影響を与えるのでしょうか。

亜硝酸塩の光──健康に役立つ働き

「毒」というイメージを持たれがちな亜硝酸塩ですが、実は野菜にも深く関係しています。

ほうれん草、小松菜、チンゲンサイ、ビーツなどには硝酸塩が多く含まれており、これが口の中の細菌や体内の酵素によって亜硝酸塩へ、さらに一酸化窒素(NO)へと変化します。

この一酸化窒素には、次のような働きがあります。

1.血圧を下げる

一酸化窒素は血管を拡張し、血流を改善します。そのため、高血圧の予防や心血管の健康維持に役立つと考えられています。

2.運動能力を高める

筋肉が酸素を効率よく利用できるようになるため、持久力の向上が期待されています。このため、硝酸塩を多く含むビーツジュースは、多くのアスリートにも利用されています。

3.食中毒菌を抑える

加工肉に亜硝酸塩が使われる最大の理由は、強力な食中毒菌であるボツリヌス菌の増殖を抑えるためです。

ボツリヌス菌は極めて強い毒素を産生する細菌であり、その増殖を防ぐことは食品の安全性を保つうえで非常に重要です。

亜硝酸塩の影──過剰摂取による健康リスク

一方で、今回のタイの事故のように大量の亜硝酸塩を一度に摂取すると、重大な健康被害を引き起こします。

1. メトヘモグロビン血症

今回の事故で患者が呼吸困難となった主な原因が「メトヘモグロビン血症」です。

通常、赤血球中のヘモグロビンは酸素を全身へ運搬しています。しかし亜硝酸塩を大量に摂取すると、ヘモグロビンが酸素を運べない「メトヘモグロビン」へ変化してしまいます。

その結果、体内が酸欠状態となり、

  • 唇や皮膚が青紫色になる(チアノーゼ)
  • 息苦しさ
  • めまい
  • 意識障害

などが現れ、重症では命に関わることもあります。

特に乳幼児は影響を受けやすいことが知られています。

2.ニトロソアミンの生成

亜硝酸塩は、肉や魚に含まれるアミン類と反応すると、「ニトロソアミン」という物質が生成されることがあります。

ニトロソアミンの一部には発がん性が確認されており、特に加工肉を高温で長時間加熱し、焦がした場合などに生成しやすいとされています。

ただし、日本では加工肉に使用できる亜硝酸塩の量は食品衛生法に基づいて厳しく規制されており、通常の食生活で過度に心配する必要はありません。

まとめ

今回のタイの事故は、「亜硝酸塩が危険だから起きた事故」ではなく、「正体不明の薬品を食塩と誤認し、大量に使用した」ことが原因でした。

一方で、食品添加物として使用される亜硝酸塩は、厳しい安全基準のもとで管理されており、適切な量であれば食品の安全性を高める重要な役割を果たしています。

大切なのは、「危険だから避ける」「安全だから気にしない」という極端な考え方ではなく、正しい知識を持って付き合うことです。

より安全に付き合うためのポイント

・加工肉は焦がしすぎず、中火程度で調理する。
・ビタミンCを多く含む野菜や果物を一緒に食べる(ニトロソアミンの生成を抑える働きが期待されています)。
・そして何より、出所が分からない粉末や薬品を食品として使用しないこと。

化学物質は「量」と「使い方」によって、私たちの健康を守る存在にも、命を脅かす存在にもなります。今回の事故を教訓に、食品添加物についても正しい知識を身につけ、必要以上に恐れず、正しく付き合っていきたいものです。

参考情報

「塩と勘違い」 タイの飲食店が正体不明の粉を料理に使用、多数の客が救急搬送される

ニトロソアミン類とは:農林水産省

銅化合物でアルツハイマー病モデルマウスの記憶機能が約44%改善―脳の老廃物を排出する仕組みを回復させる新たな可能性

私たちの脳には、日々生じる老廃物を体外へ排出する仕組みが備わっています。近年、この「脳のお掃除システム」の働きが低下すると、アルツハイマー病の発症や進行につながる可能性があるとして注目されています。

そんな中、オーストラリアのモナシュ大学などの研究チームが、学術誌『ACS Chemical Neuroscience』に興味深い研究成果を発表しました。

研究では、銅を含む化合物「Cu(ATSM)」を投与したアルツハイマー病モデルマウスで、脳の老廃物排出機能が改善し、記憶機能も向上したことが報告されています。

今回は、この研究の内容を分かりやすくご紹介します。

アルツハイマー病と脳の「お掃除システム」

アルツハイマー病では、「アミロイドβ」というタンパク質が脳内に蓄積することが大きな特徴の一つです。

健康な脳では、血液脳関門に存在する「P糖タンパク質(P-gp)」がアミロイドβを脳の外へ排出する働きを担っています。

ところがアルツハイマー病では、このP-gpの量や働きが低下し、アミロイドβが脳内にたまりやすくなると考えられています。

注目された銅化合物「Cu(ATSM)

今回研究チームが注目したのは、「Cu(ATSM)」という銅を運ぶ化合物です。

Cu(ATSM)は脳へ効率よく銅を届けることができ、すでにパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などを対象とした研究も進められています。

研究では、アルツハイマー病モデルマウスに56日間Cu(ATSM)を投与しました。

その結果、次のような変化が見られました。

① P糖タンパク質(P-gp)が24.1%増加

血液脳関門にあるP-gp関連タンパク質が24.1%増加しました。

これは、低下していた脳の老廃物排出機能が回復する可能性を示す結果と考えられています。

アミロイドβが約42%減少

大脳皮質に蓄積していたアミロイドβは42.1%減少しました。

研究チームは、P-gpの働きが改善したことでアミロイドβの排出が促進された可能性があると考えています。

記憶機能が約44%改善

空間学習能力や長期記憶を評価する試験では、記憶機能の指標が43.8%改善しました。

もちろん、この結果はマウスで確認されたものであり、人で同じ効果が得られるかどうかは今後の研究を待つ必要があります。

なぜ銅が重要なのか

銅は私たちの体に欠かせない必須ミネラルの一つです。

脳の健康にも深く関わっており、次のような働きがあります。

・脳のエネルギー産生を支える
脳は多くのエネルギーを消費します。銅は細胞内のミトコンドリアが効率よく働くために必要です。

・活性酸素から脳を守る
銅は抗酸化酵素SODの材料となり、細胞を酸化ストレスから守る働きを助けます。

・神経伝達物質の合成を支える
記憶や集中力、感情に関わるドーパミンやノルアドレナリンの産生にも銅が必要です。

・鉄の利用を助ける
銅は鉄の運搬や利用をサポートし、正常な造血にも関わっています。

これまでの研究では、アルツハイマー病患者の脳で銅代謝の異常が見つかっており、一部の神経細胞では機能的な銅不足が起きている可能性も指摘されています。

研究チームは、Cu(ATSM)によって脳へ銅が供給されることで、血液脳関門の機能改善や酸化ストレスの軽減が起こり、その結果としてP-gpの回復につながった可能性があると考えています。

また、脳の免疫細胞であるミクログリアの働きを整え、アミロイドβの除去を助けている可能性も検討されています。

まとめ

現在のアルツハイマー病治療では、アミロイドβを直接標的とする抗体医薬が実用化されています。

一方、今回の研究は「脳が本来持っている老廃物排出機能を取り戻す」という新しい視点からアプローチしている点が特徴です。

今回の成果はマウスを用いた研究段階のものであり、人への有効性はまだ確認されていません。しかし、Cu(ATSM)はすでに他の神経疾患で臨床研究が進められていることから、今後の発展が期待されています。

アルツハイマー病治療の新たな選択肢につながる可能性がある研究として、今後の続報が注目されますね。

【参考文献】

 Cu(ATSM) Restores Blood–Brain Barrier Abundance of P-Glycoprotein and Improves Cognitive Function in the APP/PS1 Mouse Model of Alzheimer’s Disease; ACS Chemical Neuroscience (2026年発表)

全国鉄瓶の湯、調査プロジェクト

Instagramで「南部鉄器で鉄分補給できるのか?」という動画を公開したところ、50万回以上再生され、多くのコメントをいただきました。

その中でも印象的だったのは、鉄瓶を愛用されている皆さまから寄せられた多くのコメントです。

「もう何十年も使っています。」
「調子がよくなりました」

そんな皆さまの声を読んでいて、一つの疑問が浮かびました。

「全国の鉄瓶では、実際にどのくらい鉄が溶け出しているのだろう?」

鉄瓶はすべて同じではありません。

メーカーや製法はもちろん、

  • 使用年数
  • お手入れの方法
  • 沸かす水の種類
  • 使用頻度
  • お住まいの地域

などによって、鉄の溶出量は変わる可能性があります。

しかし、それを実際に調べたデータはほとんどありません。

そこで私たちは、全国の皆さまと一緒に「全国鉄瓶の湯 調査プロジェクト」をスタートします。

まずは先着100名様限定で募集します

目標サンプル数は300件です。

まずは100名様分のデータを集め、その後も順次募集を行いながら、最終的に300件のデータ収集を目指します。

十分なデータが集まり次第、いったん募集を終了する予定です。

ぜひ、あなたの鉄瓶もこのプロジェクトにご参加ください。

このプロジェクトでわかること

あなたの鉄瓶から、

どれくらい鉄が溶け出しているのか。

そして、全国から集まったデータをもとに、

「どんな鉄瓶が、どんな条件で鉄を多く溶出するのか」

を調べていきます。

一人では集められないデータも、皆さまのご協力があれば見えてくるかもしれません。

お届けするもの

お申し込み後、以下をお送りします。

  • 採水容器(2本)
  • 返信用封筒
  • 採水方法のご案内
  • アンケート用紙(QRコード)

採水していただくもの

同じ水を使って、次の2種類をご採水ください。

① 鉄瓶で沸かす前の水(原水)

② 鉄瓶で沸かした後のお湯

採水後は、返信用封筒でご返送いただくだけです。

測定結果をお返しします

お送りいただいたサンプルは、当社で鉄濃度を分析し、測定結果をご返送します。

普段使っている鉄瓶から、実際にどのくらい鉄が溶け出しているのかをご自身で確認できます。

さらに、ご協力いただいた皆さまのデータを集計し、全国の鉄瓶や傾向の解析も公開していく予定です。

参加費

2,000円(税込)

※採水容器・返信用封筒・分析・結果報告を含みます。

参加条件

  • 鉄瓶・鉄玉子など、鉄が溶出する調理器具をお持ちの方
  • 採水・ご返送にご協力いただける方
  • 調査の輪を広げるため、測定結果をInstagramなどのSNSでシェアしていただける方は大歓迎です(任意)。

一つひとつの鉄瓶には、それぞれ違った歴史があります。

その鉄瓶から生まれる一杯のお湯にも、きっと違いがあります。

ぜひ、世界に一つだけのあなたの鉄瓶で沸かしたお湯をお送りください。

皆さまと一緒に、日本で初めてかもしれない「全国鉄瓶の湯データ」を作っていけることを楽しみにしています。

Instagramはじめました

実は2026年5月後半から、当社代表のInstagramアカウントを開設いたしました。

ミネラルや有害金属について、できるだけ分かりやすく、時にはクスッと笑えるような形で発信を続けています。

正直なところ、「こんなニッチな内容に興味を持ってくださる方がいるだろうか」と不安もありましたが、本当にありがたいことに、投稿によっては再生数が5万回近くに達するなど、多くの方にご覧いただいております。

SNSの影響力には驚かされるばかりです。

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脳と腸を繋ぐ鍵?自閉症スペクトラム(ASD)と『金属ミネラル』の関係

近年、「脳腸相関(脳と腸は深く繋がっている)」という言葉をよく耳にするようになりました。「緊張するとお腹が痛くなる」といった経験は誰しもがあると思いますが、実はそれだけではありません。

最近の研究では、自閉症スペクトラム障害(ASD)をはじめとする神経発達の特性を持つ方の多くが、便秘や下痢、腹痛といった「腸のトラブル(消化器症状)」を抱えていることが分かってきています。

「なぜ脳の特性であるはずのASDで、腸のトラブルが多いの?」

その謎を解き明かすための最新の鍵として、今世界中の研究者が注目しているのが「体内のミネラルバランス」です。

今回は、2025年に国際的な神経化学の専門誌(Journal of Neurochemistry)に掲載された最新レビュー論文(O’Grady & Grabrucker)をもとに、私たちの体(特に腸と脳)における有害金属と必須ミネラルの重要性について、分かりやすく紐解いていきましょう!

1. 論文が明かす「ミネラルバランスの破綻」とは?

私たちの体の中には、カルシウムや鉄、亜鉛など、生命を維持するために絶対に必要な「必須ミネラル」が存在します。一方で、環境中には水銀や鉛、アルミニウムといった、体にとって毒性となる「有害金属」も存在します。

健康な状態であれば、体はこれらを正しく選別し、必要なものを取り入れ、不要なものを排出する「恒常性(ホメオスタシス)」を保っています。

しかし、今回紹介する論文では、ASDの背景にはこの「ミネラルバランス(恒常性)の破綻」があり、それが腸の病態(消化器トラブルや腸内細菌叢の乱れ)を悪化させている大きな要因である可能性を指摘しています。

2. 要注意!体を脅かす「有害金属」の影響

環境汚染、食材、日用品などを通じて、私たちは気づかないうちに微量の有害金属を体に溜め込んでしまうことがあります。論文では、これらが腸に与えるダメージについて詳しく触れられています。

  • 水銀(Hg)や鉛(Pb):

これらは非常に強い毒性を持ち、腸に達すると「腸内細菌のバランス」を激変させてしまいます。善玉菌を減らし、悪玉菌を増やしてしまう原因になります。

  • アルミニウム(Al)やカドミウム(Cd):

腸の粘膜細胞同士を結びつけている「バリア」を破壊してしまうことが分かっています。これにより、腸の壁に隙間が空いてしまう「リーキーガット症候群(腸漏れ)」が引き起こされ、本来入ってはいけない毒素が血液中に漏れ出し、最終的に脳の炎症へと繋がってしまいます。

3. なぜ足りなくなる?防衛の要「必須ミネラル」

有害金属が体に侵入してきたとき、文字通り「盾」となって戦ってくれるのが、私たちが食事から摂取する必須ミネラルです。しかし、特性や環境の影響で、これらの重要なミネラルが不足しているケースが多いと論文は指摘しています。

特に注目すべきは以下の2つです。

亜鉛(Zn)の重要性

亜鉛は、腸の粘膜を強固に保ち、免疫をコントロールする超重要ミネラルです。さらに、体の中から有害金属(重金属)を捕まえて無毒化・排出する「メタロチオネイン」というタンパク質を作るために不可欠です。

亜鉛が不足すると、腸のバリアが弱くなるだけでなく、有害金属を追い出す力もガクッと落ちてしまいます。

鉄(Fe)のバランス

鉄は多すぎても少なすぎても腸内細菌に影響を与えます。悪玉菌の多くは鉄をエサにして増殖するため、腸内で鉄の吸収や代謝がうまくいかないと、腸内環境が悪化しやすくなります。

4. 有害金属 必須ミネラル の「椅子取りゲーム」

ここが最も面白い、かつ重要なポイントです。

実は、体の中にミネラルを取り込む「細胞のドア(受容体)」は、必須ミネラルも有害金属も同じドアを共有していることが多いのです。

例えば、体の中に「亜鉛」や「鉄」「カルシウム」が十分に満ちていれば、細胞のドアはこれらで埋まります。後から有害金属(鉛やカドミウムなど)がやってきても、入る隙間がありません。

しかし、もし体に必須ミネラルが不足していたらどうでしょう?

空いたドアから、有害金属が「ラッキー!」とばかりにすり抜けて、体内にどんどん吸収されてしまうのです。

つまり、「必須ミネラル不足」は「有害金属の吸収リスクを高める」という最悪の相乗効果を生んでしまいます。これが腸の炎症を引き起こし、自閉症スペクトラムで見られるような強い消化器症状(慢性的な便秘・下痢)や、脳への神経毒性へと繋がっていくというメカニズムが、近年の研究で徐々に明らかになってきました。

5. 私たちの生活に活かせるヒント

この論文の知見から、私たちが日常で意識できる大切なステップが見えてきます。

  • 「入れるな危険」:有害金属を避ける

・大型魚(マグロなど水銀のリスクがあるもの)の過剰摂取を避ける。

・古い水道管の鉛や、調理器具・日用品の素材に少し気を配る。

  • 「盾を強くする」:必須ミネラルをしっかり補給

亜鉛を豊富に含む食材(牡蠣、レバー、ナッツ類など)を意識して摂る。

・加工食品の摂りすぎに注意する(加工食品に含まれる添加物「リン酸塩」などは、

亜鉛やカルシウムの吸収を阻害してしまいます)。

  • 「お腹を育てる」:腸内環境のケア

・発酵食品や食物繊維を摂り、有害金属に負けない強い腸内細菌を育てる。

まとめ

今回の論文は、「自閉症スペクトラム(ASD)の症状や生きづらさは、単に脳だけの問題ではなく、『体内のミネラルバランスの乱れ』と『腸の病態』が深く絡み合っている可能性がある」という、非常に希望のある視点を示してくれています。

ミネラルバランスを整え、腸を元気にすることは、ASDの当事者の方々の消化器トラブルを和らげるだけでなく、脳や神経の健やかな働きをサポートする上でも、とても大切なアプローチになりそうです。

毎日の食事や栄養、ぜひ一度見直してみてはいかがでしょうか?

【参考文献】

O’Grady, K., & Grabrucker, A. M. (2025). Metal Dyshomeostasis as a Driver of Gut Pathology in Autism Spectrum Disorders. Journal of Neurochemistry, 169(3). DOI: 10.1111/jnc.70041

自閉症スペクトラム障害における幼少期ミネラルアンバランスの評価

自閉症スペクトラム障害における幼少期ミネラルアンバランスの評価(論文発表) – ら・べるびぃ予防医学研究所

からだミネラル検査

https://www.lbv.jp/analysis/karada.html

■書籍「栄養素のチカラ」

栄養素のチカラ | ら・べるびぃ予防医学研究所 Online Shop

【最新研究】妊娠中の「鉛」曝露が子供の喘息リスクに?エコチル調査より

今回は、最新の医学論文から、私たちの生活環境に潜む「鉛(なまり)」が次世代の健康にどう影響するかについてお話しします。

紹介するのは、2026年に発表された日本の大規模調査「エコチル調査(JECS)」の最新データに基づく研究です。

1. そもそも「鉛」ってどこにあるの?

かつては有鉛ガソリンや水道管、ペンキなどが主な発生源でしたが、現在は規制が進んでいます。しかし、古い建物の塗料の粉塵、一部の輸入玩具、装飾品、さらには土壌などを通じて、現代の私たちも微量の鉛を体に取り込んでいます。

特に日本における現在の曝露レベルは、世界的に見ても非常に「低い」とされています。

2. 研究が明らかにしたこと:低濃度でもリスクがある?

今回の研究(Nishihama et al. 2026)では、約7万人以上の親子を対象に、「お母さんの妊娠中の血中鉛濃度」「子供が4歳になるまでの喘鳴(ぜんめい:ゼーゼーすること)や喘息の経過」の関係を調べました。

驚くべきは、現在の日本の非常に低い鉛曝露レベルであっても、子供の呼吸器リスクに関わっている可能性があるという点です。

  • 一過性のゼーゼー(一過性早期喘鳴): 鉛濃度が高いグループの子供は、このリスクが上昇していました。
  • 持続的な喘息: 妊娠中の鉛曝露量が多いほど、成長しても続く「持続性喘息」になるリスクが高まる傾向が示されました。

3. なぜ「妊娠中」が大事なのか

胎児は胎盤を通じて、お母さんの体から栄養だけでなく、鉛などの有害金属も受け取ってしまいます。胎児期は肺や免疫系が形成される非常にデリケートな時期。この時期に微量の鉛に触れることが、将来の「アレルギー体質」や「呼吸器の弱さ」のスイッチを入れてしまう可能性が示唆されています。

4. 私たちができる対策は?

「鉛をゼロにする」ことは現代社会では難しいですが、リスクを最小限にするために以下のことに気をつけましょう。

  1. 古い建物のリフォーム時は注意: 剥がれたペンキの粉塵を吸わないようにしましょう。
  2. 手洗いの徹底: 外遊びの後の土汚れには微量の鉛が含まれることがあるため、親子でしっかり手を洗いましょう。
  1. バランスの良い食事: カルシウムや鉄分が不足すると、体は代わりに鉛を吸収しやすくなってしまいます。お母さんの栄養状態を整えることが、結果として子供を守ることにつながります。

まとめ

今回の研究は、「現代の低い曝露レベルであっても、できるだけ避けるに越したことはない」という重要な警告を発しています。

「神経質になりすぎる必要はありませんが、正しい知識を持って環境を整えること」。それが、子供たちの健やかな呼吸を守る第一歩になります。

出典元: Nishihama Y, et al. Associations between maternal blood lead concentration during pregnancy and trajectories of wheezing and asthma in offspring: The Japan Environment and Children’s Study (JECS). Environ Int. 2026.  

<参考:弊社ブログより>

緑茶のチカラ~有害金属を除去!? 実験してみました~ – ら・べるびぃ予防医学研究所Blog

【あなたの家は大丈夫?】鉛製給水管による健康被害の恐れと、国が進める「年15万件撤去」の最新動向

鉛(なまり)の記憶:私たちの髪が語る、環境政策の劇的な成果 – ら・べるびぃ予防医学研究所Blog

妊娠高血圧症候群と「重金属」の意外な関連【エコチル調査最新報告】 – ら・べるびぃ予防医学研究所Blog