【実験レポート】お米に含まれるヒ素は抜けるのか?

〜ミネラルの損失もあわせて検証しました〜

皆さんは、「お米にはヒ素が含まれている」という話を耳にされたことはありますか?

実はイギリスの研究で、「お米を湯でこぼす調理法でヒ素が減る」と報告があり、私たちもいつか検証しようと思い続けてきました。ですがなかなか実施できず、気づけば今日まで…。ついに今回、満を持して当社でも実験を行いました。

日本人はヨーロッパ人の約10倍ヒ素を摂取

日本人のヒ素摂取量は、ヨーロッパの人々と比べて約10倍とも言われています。
ヒ素問題といえば、かつては「ヒジキ論争」が話題になりましたが、近年では「お米」が注目されています。

一説では、計算上 肺がんで亡くなる方の約1割に無機ヒ素が関与している可能性が指摘されています。もちろん計算と実際は異なる面がありますが、お米にヒ素が含まれているのは事実です。

しかも、お米に含まれるヒ素は 毒性の強い無機ヒ素がほとんど

「でも、お米の汚染といえばカドミウムじゃない?」
その通りです。実はカドミウムをできるだけ取り込まないよう工夫をした結果、土壌でヒ素が吸収されやすい環境が生まれてしまったのです。

ヒ素とカドミウムは、まるでシーソーやヤジロベーのような関係。片方を抑えると、もう片方が上がってしまう…。本当にやっかいな存在です。

4つの方法でお米を処理

今回私たちは次の4つの処理法を比較しました。

常温の水で5分洗う
常温の水で5分洗い、そのまま30分放置
80℃のお湯で5分洗う
80℃のお湯で5分間煮続ける

実験結果:ヒ素の減少率

処理方法ヒ素の減少率
①常温5分洗い19%低下
②常温5分洗い+30分放置34%低下
③80℃お湯5分洗い25%低下
④80℃お湯5分煮続け33%低下

一番ヒ素が抜けたのは、
② 常温水で洗ったあと30分放置でした。

ただ④も大接戦です。善戦しました。

しかし、ミネラルはどうなのか?

ここで気になるのが、ヒ素だけでなくミネラルの損失です。
とくにマグネシウムに注目してみました。

処理方法Mgの減少率
①常温5分洗い76%低下
②常温5分洗い+30分放置55%低下
③80℃お湯5分洗い73%低下
④80℃お湯5分煮続け11%低下

④ 80℃のお湯で5分煮続けるが、
ヒ素も落としつつ、ミネラルを最も残す方法であることがわかりました。

と、いうより、しっかりととぐ事ででこんなにマグネシウムが落ちてしまうのか、と驚きました。

とぎ汁のマグネシウム量も比較

さらに、米を処理したあとのとぎ汁に溶け出したマグネシウムも測定。

処理方法とぎ汁中マグネシウム(ppb)
①常温5分洗い51,396 ppb
②常温5分洗い+30分放置38,713 ppb
③80℃お湯5分洗い58,133 ppb
④80℃お湯5分煮続け14,500 ppb

「④」はとぎ汁への流出が少ない=お米にミネラルが残っている可能性大、という二方向から

実験Vlogも公開中

この実験の様子はVlogにまとめました。
なんと動画のどこかに キャンペーンコードも隠されています。
どんなキャンペーンかは…動画をご覧ください。

でも一番大切なのは「おいしさ」

「ヒ素が減るのはいいとして…煮続けたお米はおいしいの?」
これが最大の疑問です。

味についてはそんなに味覚に自信がありませんが、今後検証していきたいと思います。

まとめ

今回の実験では、「80℃のお湯で5分煮続ける」が
ヒ素を減らしつつミネラルを守るベストな方法でした。

しかし、お米は毎日食べるもの。
「美味しさ」を犠牲にしては元も子もありません。
次回は味を確認していきます!

ら・べるびぃ予防医学研究所
「知ることは、すべてのはじまり」
ミネラル分析の専門機関として、毛髪・血液・飲食物など様々な検体を分析しています。
2000年の創業以来、皆さまの健康に役立つ検査や情報を提供しています。
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消えない毒  半世紀以上続く六価クロム汚染の現実  ―『第4回 環境化学物質合同大会』から

先日、ブログでご報告した『第4回 環境化学物質合同大会』で報告されていた論文を分かりやすくご紹介します。

環境問題と聞くと、新しい技術で解決できる、あるいは時間が経てば自然と元に戻る、そんなイメージをお持ちかもしれません。しかし、中には何十年、半世紀以上もの時が流れても、いまだに私たちの生活を脅かし続けるやっかいな汚染が存在します。

今回は、東京都江戸川区や江東区で実際に起きている六価クロム汚染の事例が学会で報告されていました。

六価クロムって?

「クロム」は、必須ミネラルの一つ。必須ミネラルのクロムは膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンであるインスリンの働きをサポートします。

でも、有名なのは「六価クロム」という非常に毒性が強い形態のクロムではないでしょうか?

六価クロムは、必須ミネラルのクロム(三価クロム)と違い、強い毒性と発がん性を持ちます。酸化力が非常に強く、水に溶けやすく、人体に取り込まれると細胞を傷つけ、呼吸器系や皮膚に悪影響を及ぼします。

「六価クロム」:消し去れない過去の遺産

六価クロムは、工場などから排出される非常に毒性の高い金属の一種です。特に問題となるのは、その持続性と拡散性。一度土壌や地下水に染み込むと、無毒化するのが極めて難しいという性質を持っています。

1975年、日本化学工業株式会社が60年間にわたり六価クロム鉱滓(こうさい:産業廃棄物)を投棄し続けていたことが判明し、大きな社会問題となりました。

東京都江戸川区と江東区の区界周辺では、かつて工場が不法投棄した六価クロムが無害化処理をされたのちに埋められ、一部は公園として開放されています。

しかし、この公園周辺ではその後も六価クロムの流出が相次いで検出され、その都度無害化対策が施されています。半世紀以上が経過してもなお、六価クロムを封じ込めることができないのです。

終わらない戦い:雨が毒を運び、結晶が広がる

「封じ込め処理」が行われているにもかかわらず、なぜ六価クロムは消えないのでしょうか? そのやっかいなメカニズムを見ていきましょう。

  • 雨が降るたびに表面へ:2024年5月から11月にかけて江戸川区小松川地区で行われた調査では、道路脇の粉塵に含まれる六価クロム濃度が、降雨後に上昇することが明らかになりました。これは、地中に埋まった鉱滓から毒性の高い六価クロムが溶け出し、雨水とともに毛細管現象によって地表に滲み出してくるためです。つまり、雨が降るたびに、六価クロムが道路表面に「二次汚染源」を作り出しているのです。
  • 乾燥すると新たな汚染源に:路面に滲み出た汚染水は、乾燥すると白や薄黄色の結晶となり、道路脇に現れることがあります。この結晶も、地下の鉱滓由来の元素を含んでおり、風などによって舞い上がれば、新たな粉塵汚染源となります。

このように、

雨が降れば毒が滲み出し、晴れればそれが結晶となって拡散するというサイクルが、半世紀以上経った今も繰り返されているのです。封じ込めの努力にもかかわらず、自然の力(降雨)が、地中の毒を地上に再浮上させてしまうという、非常にやっかいな問題に直面しています。

見えない脅威:私たちの足元に潜む毒

道路は、私たちや車が日常的に利用する場所です。もし六価クロムを含む粉塵や結晶が路面に存在すると、以下のようなリスクが考えられます。

  • 粉塵として空気中に:車の走行や風によって、汚染物質が粉塵となり空気中に舞い上がります。
  • 健康被害の懸念:舞い上がった粉塵を吸い込んだり、手から口に入れたりすることで、健康被害が生じる可能性が懸念されています。

今回の調査では、六価クロムだけでなく、鉛(Pb)ヒ素(As)カルシウム(Ca)ストロンチウム(Sr)といった元素も、道路脇粉塵や結晶から検出され、これらも地下の鉱滓由来の汚染元素である可能性が指摘されています。

環境汚染の長期的な課題

江戸川区周辺の六価クロム汚染は、単なる一地域の問題にとどまりません。これは、過去の産業活動が残した負の遺産が、いかに長く、そしてやっかいな形で私たちの子孫に影響を及ぼし続けるかを示す象徴的な事例です。

半世紀以上経っても「無毒化」の最終的な解決策が見つからず、継続的な監視と対策が求められる。これが、深刻な環境汚染の現実です。

この問題から、私たちは何を学び、未来へどう繋いでいくべきでしょうか。私たちの足元に潜む見えない脅威として、今もなお私たちに問いかけ続けています。

ご紹介した論文:『東京都江戸川区小松川地区における道路脇粉塵の微量元素濃度と降雨の関連』東京農工大学 大学院 / 公益財団法人 海洋生物環境研究所)

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第4回 環境化学物質合同大会 参加してきました!

昨日「第4回 環境化学物質合同大会」に参加してまいりました。
開催地は山形。始発の新幹線に乗り、終電で帰宅するというハードスケジュールでしたが、充実感たっぷりの1日でした。

この合同大会は「環境化学討論会」と「日本環境毒性学会」の合同開催で、なんと山形市内の2つの大きな建物を貸し切って実施されるほどの大規模なもの。

参加者は会場を行き来しながら、同時進行で行われる数多くの発表を聞き比べるというスタイルで、次はどのセッションを聞こうかと目移りしながら、会場を渡り歩きました。

私は無機分析を専門としていることもあり、つい、無機分析関連の発表に集中してしまいましたが、それでも1日があっという間に過ぎてしまうほど内容が濃く、最新の研究に触れてアップデートされた気持ちになれました。

これまで医療や予防の分野の展示会に多く参加してきましたが、今回の大会はその雰囲気とは全く違い、まさに 「マニアック中のマニアック」 という印象。
ヒ素や水銀、セシウム、ストロンチウム、クロムといった元素の環境中での挙動や影響について、研究者の皆さんが発表されている内容はとても刺激的で、圧倒されました。

当社の業務も研究要素を含みますが、私たちは皆様からいただいた検体や情報をもとに解析を行い、その結果から後付けで研究テーマを設定するスタイルです。

一方で、発表された研究者の方々は、まず研究テーマを立て、実現に向けて緻密な計画と行動力でフィールドワークを進めておられ、改めて「本格的な研究者」のすごさを感じました。

また、特に印象的だったのは PFAS(有機フッ素化合物) に関する発表の多さ。全体の約2割がPFAS関連だった印象で、企業展示もPFAS一色といえるほど。環境分野での関心の高さをひしひしと感じました。

交流会も大変盛況で、おそらく200〜300人ほどが参加されていたと思います。

会場では、環境分野で広く利用されている ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計) の話題で盛り上がる場面も多く、同じ分析を行う立場として非常に楽しい時間でした。
ただ「毛髪で分析しています」とお伝えすると、知らない方が多かったのも新たな発見でした。まだまだ認知度が低い!がんばらなければ!

さらに、余興では山形名物の 花笠踊り が披露され、会場は大いに盛り上がりました。
次回の開催地は長崎とのこと。今度は泊まりがけで参加して、もっとたくさんのセミナーに参加する心に決めています。

ちなみに会場でいただいたこのトートバッグ、ベンゼン環を意識して作られたそうです。かわいい。


鉛製の銃弾 鉛汚染はわんこのおやつにも?

鉛の毒性は、有害金属の中でもトップクラス。

でも、安価で加工しやすいため、世界中で古くから利用されてきました。

鉛製の銃弾による鉛汚染

猟に使われる鉛製の銃弾は、シカなどの捕獲によく使われているそうです。

有害鳥獣対策としてシカの猟は行われていますが、そのときに使われる鉛製の弾丸が、死んだシカの体内に残り、放置されたシカの肉をワシなどの猛禽類が食べ、鉛中毒になることが問題となっています。

野鳥に広がる鉛中毒

鳥類の鉛中毒が問題となったのは1990年代以降。

北海道では、白鳥やガンが鉛中毒によって大量死しました。

水鳥は消化を助けるために小石を飲みこむ習性があります。そのため、環境に放置された鉛弾を誤って飲みこみ、中毒を起こします。

また、国の天然記念物で、絶滅危惧種であるオジロワシをはじめとする猛禽類は、死んだシカの肉を食べ、鉛中毒になることが多いそうです。

鉛弾の規制は?

近年、鉛を使わない弾への移行が世界的に推奨・義務化されつつあります。

北海道では、10年以上前から全国に先駆けて鉛製の銃弾の規制をしています。

環境省では、2030年までに鉛弾による猛禽類を含む全ての鳥類の鉛中毒をゼロにするという目標を表明し、2025年から段階的な規制を開始します。

シカなど哺乳類の狩猟は規制外

鉛弾の規制は、鳥類保護の観点から行われているもので、現時点では、シカなど哺乳類に対する鉛弾の全国的な使用禁止は行われていません。

しかし、環境省は、鉛による環境汚染や、肉の汚染問題(食肉汚染)を考慮し、鉛を使わない弾への切り替えを推奨しています。

また、地方自治体や一部の猟友会によっては、自主的な申し合わせや、特定の猟場での鉛フリー弾の使用奨励・義務付けが行われているところもあります。

鳥類だけの問題ではない

犬などのペット向けに鹿肉のジャーキーなども販売されていますが、そのシカの猟に鉛弾が使われているのか表示はほとんどありません。

鉛弾で仕留められたシカの肉は鉛に汚染される可能性が非常に高く、それが問題視されています。

鉛弾は、動物の体内で高速で筋肉や骨などの組織に衝突すると、非常に細かく砕け散ります。鉛は比較的柔らかい金属なので、特に破砕しやすい性質があります。

この砕けた鉛の微細な破片は、弾丸が貫通した傷口の周囲だけでなく、弾丸が通過した軌道や、その衝撃で圧力がかかった周辺の広範囲の肉の中にまで飛散します。

また、動物の体内で鉛片が溶け、腸内や肉の組織に鉛が拡散することもあります。

鉛の毒性はとても強い

鉛には閾値(いきち)がありません。

閾値とは、このくらいの量までならとっても健康に問題ないです、という量のこと。

その閾値がないということは、たとえ少量であっても鉛が健康に影響しないとは言えないということです。

鉛の毒性

鉛は強い毒性を持ち、特に造血系、神経系、腎臓に悪影響を与えることがわかっています。

特に脳と神経系に大きな影響を与え、子どもの知能指数低下、多動性、衝動性、注意力低下、情緒不安定などがメンタルヘルスへの影響のほか、子供時代の鉛の濃度が高いほど、誠実性が低く、神経症的傾向が強いという研究もあります。

また、飲食物から鉛を摂取した際の消化管からの吸収量は成人が5~10%であるのに対し、小児では約40%と高くなっています。

発育中の神経系は鉛による障害を受けやすいため、胎児や乳幼児への影響が懸念されています。

20年以上体内に残ります

ヒトでの鉛の生物学的半減期は約20年。

「生物学的半減期」とは、体内に取り込まれた物質が、代謝や排出などにより半分になるまでの時間のことです。

体内に取り込まれた鉛は90%以上、骨に沈着します。そのため、体内から排泄されにくく、長期間にわたり健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

環境保護と生物多様性の保全、そして人間やペットの健康を守るために

鉛製銃弾の規制は、環境保護と生物多様性の保全、そして人間やペットの健康を守るために不可欠な取り組みです。

完全に鉛の弾を使わないようにするには、無鉛弾へのスムーズな移行を促すための施策がより一層、求められています。

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水筒で銅中毒に!

暑い季節がやってきました。

この時期、熱中症予防のために水筒に飲み物を入れて持ち歩く方も多いと思います。

でも、それが銅中毒を引き起こしたという事故があります。

銅は必須ミネラルだけど、、、

銅は、生きていくうえで欠かせないミネラルの一つです。

でも、過剰に摂ると吐き気や嘔吐、下痢を引き起こすことがあります。

水筒で?!

銅は実際に起きた事故

2020年、大分県の高齢者福祉施設で、古いステンレス製のやかんでイオンドリンク(スポーツ飲料)を作り飲んだところ、施設利用者13名全員が嘔吐・はき気症状を起こし、その後の調査で銅中毒だと判明しました。

2008年には、水筒に入れたスポーツ飲料により、水筒の金属に含まれる銅が溶けだし、銅中毒事故が起きています。

ステンレスに含まれる銅が酸性のイオンドリンクによって溶け出したために起こったものです。 ステンレス製の水筒にスポーツ飲料を入れて部活の練習に行く子供にもたせる、なんて、すごくよくあることなのに!

さらにっ

2010年には、保育園でアルミ製のやかんに入れた乳酸菌飲料を飲んだ園児15人が、銅中毒になっています。

このやかんには銅は使われていませんでしたが、日常的にお湯を沸かすために繰り返し使われていたため、水道水に含まれる微量の銅がやかんに蓄積されていたそうです。

→そのやかんに乳酸菌飲料を入れ→乳酸菌飲料の酸で銅が溶けだしたために起こった事故と考えられています。

金属製の容器に酸性の飲み物を保存するのは、避けたほうがよさそうですね。

鍋でも!

銅の鍋とかフライパンとか、すごくプロってイメージありませんか?

ピカピカに磨かれた銅鍋がずらーっと並んでいる高級フレンチレストランのキッチン!

銅は、熱伝導率が高く、蓄熱性にも優れているため、優れた調理器具としてプロに愛用されています。

でも、銅製の鍋でも銅中毒が起こっています。

とあるお弁当屋さんで、銅中毒が発生したのです。

この店では普段、銅の鍋で小豆を煮ていたそうですが、その鍋を使って焼きそばを作ったところ、焼きそばのソースの酸で銅が溶けだし、集団食中毒になってしまったとのことです。

現在販売されている銅の調理器具や食器は、食品が直接銅に触れないようにメッキをしなければいけないと食品衛生法で定められています。

銅鍋の内側が銀色なのはこのためなのですね。 しかし、金属のたわしでゴシゴシこすったり、酸性の食品を長時間煮込んだり、保存したり、空焚きをしたりすることで、メッキがはがれて食品が銅に触れてしまう場合があるそうです。

台湾では、死亡事故も

また、こちらは「銅」とされたわけではないのですが、台湾で、約10年間、同じ保温ボトルを使い続けた男性が「重金属中毒」で亡くなったと報じられました。

この男性は、水筒の内部がサビていることに気がついていたにも関わらず、コーヒーやジュースなどの酸性飲料を入れていたそうです。

報道では「重金属」とされ、鉛などの可能性も指摘されていますが、どちらにしても、酸性飲料が金属を溶かして中毒を起こした事例です。

食中毒の季節ですが、銅中毒にもご注意を!

ますは、金属製の容器に酸性の飲み物を入れない

銅製の調理器具を使用する場合は、

  • 調理後はすぐ陶器やガラス製など金属製以外の別の容器に移す
  • 酸性の強い食品での長時間調理・保存は避ける
  • 空焚きしない
  • たわしなどでこすらない

ちなみに、

酸性の飲み物とは

スポーツ飲料・乳酸菌飲料・果汁・炭酸飲料など

酸性の強い食品とは

柑橘類全般: レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ミカンなど。

ベリー類: イチゴ、ラズベリー、ブルーベリーなど。

パイナップル、キウイ、リンゴ

トマトとその加工品: トマトソース、トマト缶、ケチャップなど。

カレーや一部の香辛料

ワイン、ビール、日本酒などの酒類

炭酸飲料

ヨーグルト、キムチなどの発酵食品 など

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身近なヒ素が赤ちゃんに与える影響!低濃度でも影響?–米国の最新研究から

「ヒ素」は、毒物として有名ですが、実は私たちの生活の中にも潜んでいます。

そんなヒ素が、妊娠中のお母さんの体を通して赤ちゃんに影響を与える可能性があるとしたら、、、ちょっと気になりますよね?

低濃度でも影響が? ヒ素が赤ちゃんに与える影響

最近、国立衛生研究所の子どもの健康への影響の研究で、衝撃的な報告がありました。それは、公共の飲料水に含まれる低濃度のヒ素、たとえ国の安全基準を下回る濃度であっても、それにさらされた可能性のある母親から生まれた赤ちゃんは、早産、低出生体重、または在胎週数に比べて小さい体格で生まれる可能性が高いというものです。

Public Water Arsenic and Birth Outcomes in the Environmental Influences on Child Health Outcomes Cohort | Environmental Health | JAMA Network Open | JAMA Network

さらに、複数の観察研究をまとめたメタアナリシス※でも、ヒ素曝露と子宮内胎児発育遅延(IUGR)のリスク増加、特に在胎不当過小(SGA)との間に有意な関連が示されています。これは、お腹の中で赤ちゃんが十分に成長できない状態を指します。

Association between arsenic exposure and intrauterine growth restriction: A systematic review and meta-analysis – PMC

※メタアナリシスは、一般的に最も高いレベルのエビデンス(科学的根拠)として位置づけられています。

日本とイランのコホート研究からも、妊娠中のヒ素を含む複数の金属への曝露が、出生時体重に影響を与える可能性が示唆されており、妊娠中の女性は潜在的に有害な金属への遭遇を可能な限り最小限に抑えるべきだと結論付けられています。

Prenatal exposure to metal mixture and birth weight; a Bayesian kernel machine regression analysis of two cohort studies in Japan and Iran | Journal of Environmental Health Science and Engineering

なぜヒ素が私たちの身近に?

ヒ素と聞くと、毒性が高く危険な物質というイメージがあるかもしれませんが、実はヒ素は自然界に広く存在しています。地殻中に分布しており、火山活動や森林火災、鉱物の風化などの自然現象で放出されます。

また、火力発電、廃棄物の処理といった産業活動に伴って環境中に放出されたものもあります。このため、飲料水や食品などに微量のヒ素が含まれています。

完全にヒ素をなくすことは、その自然発生的な性質から考えると非常に難しいのが現状です。

今すぐできることでヒ素を軽減する!

ヒ素を完全に避けることは難しいと聞くと、不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、できる限りヒ素の摂取を減らし、もし体内に入ってしまっても速やかに排泄できるような工夫をすることは可能です。

たとえば、ひじき。栄養豊富ですが、実は毒性の高い「無機ヒ素」を比較的多く含んでいます。でも大丈夫!ヒ素は水に溶けやすい性質があるので、調理法で量を減らせます。

農林水産省によると、乾燥ひじきは:

  • 水戻しで約5割減
  • ゆで戻しで約8割減
  • ゆでこぼしで約9割減

に、無機ヒ素を減らせるのです!しかも、鉄分やカルシウム、食物繊維といったひじきの栄養は7割以上残るので、上手に調理して安心して食べられますね。

さらに、バランスの取れた食事も大切です。食物繊維が豊富な野菜、果物、きのこ類は腸内環境を整え、有害物質の排出を助けてくれます。抗酸化作用のあるビタミンCやミネラル(セレン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、鉄など)も積極的に摂って、体の解毒をサポートしましょう。

主食であるお米にもヒ素が…

私たち日本人の主食といえば「お米」ですよね。

ですが、このお米にもごく微量ながらヒ素が含まれていることをご存知でしょうか?

ヒ素には無機ヒ素と有機ヒ素があり、特に無機ヒ素は健康への影響が懸念されています。もちろん通常の食事でただちに健康被害が出るわけではありませんが、毎日食べるものだからこそ、少しでもリスクを減らす工夫が大切です。

そんな中、イギリスの研究機関によって、家庭でも簡単に実践できる「お米のヒ素を減らす方法」が発表されました。

ご家庭でできる!ヒ素除去率最大73%のお米の炊き方

(出典:ScienceDirect 論文リンク

1.新鮮な水を鍋で沸騰させる(お米1カップにつき水4杯)
2.沸騰したお湯にお米を入れて5分間湯がく
3.お湯を捨て、米の水気を切る(このときにヒ素が除去される)
4.新鮮な水を通常の分量入れ直す
5.弱火〜中火で炊飯し、お米が新鮮な水を吸収するまで炊き上げる

妊娠中や授乳中だけでなく、これから妊娠を考えている女性も、こうした小さな心がけで、新しい命をヒ素の悪影響から守ることができます。

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放置してた冷蔵庫の製氷機で作った氷のミネラル分析してみた

最近ふと思ったんです。
「そういえば、氷、全然作ってないな」と。

暑くなってきたし、そろそろ製氷機の出番かな~なんて思ったのですが、
……ちょっと待てよ、と。

製氷機、最後に使ったのはいつだったか……全く思い出せないのです。
去年の夏?いや、もっと前かもしれない。
ということは、軽く見積もっても 1年以上氷を作っていない ということになります。

そんなことを考えているうちに、ふと気になったのが「衛生面」。

氷を作る通り道に汚れが溜まっていたり、
金属などが溶け出していたり……なんてことは?

そんな疑問を確かめるべく、実際に調べてみることにしました。

浄水器だって、長期間放置してしまうと、内部で雑菌が繁殖したり、劣化が進んだりするものもありますよね。

下記のような報告もありますし。

病棟の製氷機で作成された氷の細菌汚染調査

氷に含まれる金属、調べてみた

今回は、以下の2種類の水を比較しました。

  • 普通の水道水
  • 製氷機で作った氷を溶かした水(おそらく1年以上前に稼働が止まっていた製氷機)

測定して2倍以上の差が出た項目

項目水道水(ppb)製氷機の氷(ppb)
マンガン0.044.66
0.390.84
ヒ素0.40.9
バリウム5.911.8

なんと……

マンガンが100倍以上!

製氷機を通しただけで、こんなに数値が上がるとは……
特にマンガンの上昇はかなり極端です。

いったい、何が原因なのでしょう?

からくりは冷蔵庫の中に…?

ちなみにこの製氷機、SHARP製の冷蔵庫についているものです。タンクに水を入れて吸い上げて製氷皿で氷作って下にぼとぼとと落とすタイプです。

製氷皿はプラスチックのような素材。

考えられる原因としては:

  • 内部に金属部品があり、長期間の放置で溶出した?
  • 製氷経路に汚れや沈着物があった?
  • プラスチック部品に何かしらの変化が?

はっきりとした原因は不明ですが、「長期間使っていない製氷機から作った氷」は
マンガンが高かったのです。

しかし、水質基準からしても1/10以下ですので、問題があるわけではありませんが、、、不思議ですね。

氷もメンテナンスが必要かも?

日頃、水や空気の「きれいさ」には気をつけていても、意外と見落としがちなのが「製氷機」。

今回は金属を調べましたが、実際には細菌の繁殖も気になるところ。
(ちなみに私たちは細菌は測れませんが、金属はしっかり測れます!)

気温が上がり、氷が活躍するこれからの季節。
一度、製氷機のお掃除や点検をしてから再稼働してみてはいかがでしょうか?

あなたの家の氷、もしかすると「マンガン氷」かもしれませんよ……?


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緑茶のチカラ~有害金属を除去!? 実験してみました~

朝日新聞GLOBE+で紹介されていた記事(リンクはこちら)を読んで、「これはうちでも実証してみよう!」と思い立ちました。

記事では、緑茶が鉛を吸着する可能性について触れられていましたが、せっかくなので鉛だけでなく、水銀・カドミウムも対象にして実験してみました。ワクワクドキドキ!

■ 実験内容

まず、有害金属(鉛・水銀・カドミウム)をそれぞれ一定濃度に調整した水を用意しました。
そして以下の2パターンで比較実験を行いました。

パターン①:市販の緑茶ティーバッグをそのまま使用

→ 10回ほど上下にタプタプ(約25秒間の浸漬)

パターン②:ティーバッグを開け、茶葉を直接水に投入

→ 軽くかき混ぜた後、2~3分程度浸漬

この2パターンを選んだ理由は、ティーバッグの袋部分自体が吸着に関与しているかもしれないと考えたためです。茶葉本体の効果を確認したくて、茶葉単体でも検証してみました。なお、水の温度は80℃に調節しています。

また、結果の信頼性を上げるため、各条件につき3サンプルずつ測定しました。

実験風景(80℃を保ちながら、緑茶を作っています)

パターン①と②で浸している時間がことなるため、お茶の色もずいぶんと異なりました。

画角を統一しておらず、すみません。。

■ 結果

① ティーバッグ使用の場合

測定項目使用前平均(ppb)使用後平均(ppb)除去率
カドミウム117367443%
水銀943761%
105035766%

② 茶葉を直接使用した場合

測定項目使用前平均(ppb)使用後平均(ppb)除去率
カドミウム117830474%
水銀994159%
103916384%

■ 考察

どちらの方法でも、有害金属の濃度が大きく低下しており、緑茶には明らかに吸着効果があることがわかりました。特に茶葉のみで行った場合、鉛・カドミウムの除去率は80%近くに達しています。これは正直、驚きです。

お茶の浸漬時間にも差があるので、その点が吸着率に影響している可能性もあります。ただし今回の実験では明確に「緑茶に有害金属を吸着する力がある」ということが示されました。

なお、参考にした記事上では除去率はおよそ15%程度と記載されていましたが、当社の実験では最大で80%近くの除去が確認されました

この差異については、実験条件の違いによる可能性があります。特に、今回の実験では有害金属を高濃度に調整した水を使用しており、そのため茶葉への吸着量が溶出量を大きく上回ったものと考えられます。

また、参考記事では5分以上から24時間程度の浸漬時間における検証結果が記載されておりましたが、当社の実験においては、わずか25秒程度から2分程度の短時間の浸漬であっても、緑茶が有害金属を吸着する効果が確認されました。

このことから、日常的な使用においても、緑茶には一定の有害金属吸着効果が期待できる可能性があると考えられます。

■ 注意点と補足

  • 吸着された金属は茶葉に残るため、茶葉ごと飲み込む粉末茶や抹茶では意味がない点に注意してください。
  • 鉛については「安全な摂取量がない」とされており、完全に除去できるわけではありませんが、日常の中で少しでも減らせる選択肢として、お茶は有効かもしれません。
  • ちなみに余談ですが、ずっと「ティーパック」だと思っていたのですが、正式には「ティーバッグ」が正しい表記だそうです。知らなかった…!

日本人として緑茶のチカラがすごい、というのはなんだか嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


ら・べるびぃ予防医学研究所
「知ることは、すべてのはじまり」
ミネラル分析の専門機関として、毛髪・血液・飲食物など様々な検体を分析しております。
2000年の創業以来、皆さまの健康に役立つ検査や情報を提供しています。
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あきたこまちのカドミウム問題を受けて、当社でも調べてみました。

先日報道された、「カドミウム濃度が基準値を超えた米の廃棄」のニュース。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e786aa8326a118963135f50955b4c37bf0b8344e

価格が高騰しているお米が大量に廃棄されるという現実に、なんともやるせない気持ちになります。

たしかに、カドミウムの基準値を超えてしまったお米をそのまま販売することはできません。
でも、ブレンドして濃度を下げる方法もあるのでは…という意見もあるようです。実際にブレンドすれば、濃度は下がりますからね。

とはいえ、消費者の立場からすれば「カドミウムが高いとわかっているお米が混ざっている」と聞けば、不安になるのも当然です。
仮に基準値を下回っていたとしても、「気持ちの問題」で避けたくなる方がいるのもわかります。

個人的には、廃棄するくらいなら「きちんとブレンドして基準をクリアしたうえで、安く販売する」という選択肢もアリではないかと感じます。
「それなら買うよ」という方も、少なからずいるのではないでしょうか。

私もその一人です。

そこで、当社であきたこまちのカドミウムを測定してみました。

実は今回の件をきっかけに、「うちでもあきたこまちを測ってみよう」と思いました。

というのも、ちょうど妻が秋田県産の「あきたこまち」を購入していたのです。
これまでは、当社に届く検体にあきたこまちは含まれておらず、測定の機会がありませんでした。


でも、こういう偶然こそ「ご縁」ですね。よし、やってみよう、と。

測定結果は…

  • カドミウム濃度:66 µg/kg

でした。

まず結論から言えば、基準値(400 µg/kg)には大きく届かず、安全圏内です。
ひとまずホッとしました。

ただし、これがどの程度の位置づけなのか気になったので、参考までに当社でこれまでに測定した約50種類のお米と比較してみました。

  • 中央値:14 µg/kg
  • 平均値:27 µg/kg

※平均値は一部の高い数値に引っ張られやすいため、50検体程度の場合は中央値のほうが全体像を把握しやすいです。

つまり、66 µg/kgというのは 当社で測定限りでは高め の部類です。
基準は大きく下回っていますが、当社データでは 第5位の高濃度
「表彰台」には届きませんでしたが、入賞といったところでしょうか。

品種カドミウム濃度(µg/kg)備考
あきたこまち(今回測定)66当社分析で第5位の濃度
全体中央値1450検体中の中央値
全体平均値27高濃度の影響あり

とはいえ、繰り返しますが、基準値(400 µg/kg)からは大きく離れており、十分に安全といえる数値です。
日常的に摂取するうえで、特に懸念する必要はないと考えられます。

最後に

食品の安全性において、科学的な根拠と、消費者の「安心感」は必ずしも一致しないことがあります。

「基準を満たしていればOK」というのは事実ですが、
「知ってしまった以上、気持ち的に避けたくなる」という声もまた、理解できます。

もちろん、今回のニュースのように「あきたこまちから基準値を超えるカドミウムが検出された」と聞くと、
「じゃあ、あきたこまちはもうやめておこうかな…」と感じる方がいらっしゃるかもしれません。

ですが、私としては、それは少しもったいない判断かもしれないと感じています。

なぜなら、ニュースのような結果はあくまで一例であって、
すべてのあきたこまちが高いわけではありませんし、産地や田んぼの条件、収穫年によっても大きく異なる可能性があるからです。

実際、基準値を大きく下回っているお米の方が圧倒的に多いですし、
あきたこまち自体も、全国で長く愛されている美味しいお米であることに変わりはありません。

だからこそ、ひとつの数値だけで「この銘柄はダメ」と決めてしまうのではなく、冷静に判断することが大切なのではないかと感じています。

今回のように実際の分析情報を知ることは、安心感にもつながるのではないでしょうか。

当社では、こうした実測データを通じて、皆さまの食品に対する理解と選択の手助けができればと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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犬猫の爪を調べてわかったこと〜モニター調査のご報告〜

当社は犬猫の被毛検査を実施しておりますが、こんなお問い合わせをいただくことがあります。

「うちの子毛が無いんだけどどうしたらいいの?」

そこで昨年、私たちは被毛のない子でも測定ができるよう、犬猫の犬猫の爪を用いたメタル測定のモニター調査を実施いたしました。
ご協力いただいた皆さまには、心より感謝申し上げます。

今回のブログでは、その調査結果についてご報告させていただきます。

モニター数の内訳

  • 犬:85検体
  • 猫:56検体

調査のため、被毛も一緒にご提供いただきました。

食事について

加工食のみ手作り食のみ両方
23(29%)47(59%)9(11%)
26(46%)12(21%)18(32%)

以前の猫の被毛検査作成の際の調査において加工食が72%を占めていたため、今回の調査では46%でした。今回のモニターは、より食事に対する意識の高い飼い主様にご参加いただいたものと推察しました。

食事によって有意差のあるミネラル等

加工食のみと手作り食のみで比較をしてみました。

犬で有意差のあったミネラル

有害金属では差がありませんでしたが、下記ミネラルで有意差を示しました。

マンガン(P=0.0172)、モリブデン(p=0.001)、鉄(p=0.034)、亜鉛(p=0.003)

※Pの値が低い程、2群間には差がある、という解釈となります。

検体数

ペットフードのみ:18検体 手作りのみ:31検体

爪は数が多い黒色の検体としました。

●食事によるミネラル濃度の差(犬の爪)

猫で有意差のあったミネラル

犬と同様に有害金属では差がありませんでしたが、下記ミネラルで有意差を示しました。

モリブデン(p=0.036)

犬と同様にモリブデンはペットフードのみの個体の方が高い結果となりました。

犬で有意差を示したほかのミネラルについては以下の通りでした。

マンガン(p=0.193)、鉄(p=0.395)、亜鉛(p=0.104)

マンガンの含有量については、統計的に有意な差は認められなかったものの、犬とは逆にペットフードの方が手作り食に比べてやや高い傾向が見られました。マンガンは一般に肉類よりも植物性の原材料に多く含まれるため、ペットフードにはその不足を補う目的でマンガンが添加されていることが考えられます。猫は本来肉食性の動物であり、手作り食では植物性原料の使用が限られることから、食事中のマンガンの含有量が低くなる可能性があります。

鉄はほぼ有意差がありませんでした。

亜鉛については有意差は認められなかったものの、手作りの方が平均値も中央値も高い傾向がみられました。

検体数

ペットフードのみ:26検体 手作りのみ:13検体

●食事によるミネラル濃度の差(猫の爪)

爪の色とミネラル濃度の関係

  • 猫の爪:ほとんどが白色
  • 犬の爪:白と黒の両方が存在

被毛と同様に、爪にもメラニン色素が含まれており、これがミネラルの蓄積に影響を及ぼしている可能性があります。

色によって有意差が見られた元素:

  • ストロンチウム(Sr)
  • アンチモン(Sb)
  • バリウム(Ba)
  • タリウム(Tl)

これらの元素は、爪の色によって濃度に差がある傾向が見られました。

爪と被毛の相関性について

被毛も併せてご提供いただいたことで、爪と毛の間にどれくらいの相関があるかを分析することができました。

特に相関が強かった元素(犬猫共通):

  • 水銀(Hg)
  • ヒ素(As)

水銀については、主に魚由来のフードに多く含まれており、ヒ素についても魚や一部の穀類などに含まれています。
これらは日常的に摂取される可能性があるため、体内で一定の蓄積が生じやすい元素と考えられます。

そのため、今回の調査では、爪と被毛の両方で類似した蓄積傾向が確認されました。
この結果から、水銀やヒ素は、長期間にわたり継続的に取り込まれている可能性がある元素であることがうかがえます。

相関がほぼ確認できなかった元素(犬猫共通):

  • アンチモン(Sb)

犬のデータ考察

  • 鉛(Pb)とカドミウム(Cd)について、爪と毛の間で明確な相関は見られませんでした
  • 散歩や草むらへの接触など、環境由来の付着や一時的な摂取が要因である可能性があります。

猫のデータ考察

  • 鉛の相関は犬同様に高くはありませんでしたが、最大値を示した個体は爪・毛ともに一致していました
  • カドミウムに関しても、高濃度を示した2個体は毛・爪ともに高値でした。
  • 一方で、濃度が低い場合には爪と毛のばらつきが大きく、相関性が低下していました。

つまり、高濃度であればある程度の信頼性があるが、低濃度では評価が難しいという傾向が見られました。

測定対象の「期間の違い」について

  • :ブラッシングした毛を使用しており、長さの指定はしておりませんでした。そのため、長期間の平均値を反映している可能性があります。
  • :普段の爪切りで採取されたものであり、おそらく直近1ヶ月程度のデータを反映していると考えられます(人間の場合は4〜5ヶ月前のデータとされますが、犬猫は爪母に近い部位が切られるため短期間と思われます)。

このように、毛と爪では反映している時期が異なる可能性が十分に考えられました。

まとめ

今回のモニター調査では、犬猫の爪に含まれるメタルの分析を通じて、以下の知見が得られました。

  • ペットフードまたは手作り食によって爪中のミネラル濃度に差が認められました。
  • 被毛と同じく爪も色によって濃度に差がありました。
  • 犬は白黒の爪があり、猫はほぼ白色の爪でした。
  • 水銀やヒ素は爪と被毛の相関性が高く、長期的な摂取傾向の把握に有効と推察されました。

皆さまからご提供いただいたサンプルは、今後の研究やサービスの質向上に役立ててまいります。

ご協力いただいた皆さま、改めて本当にありがとうございました。


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