【新発見】PM2.5に含まれる「スズ」がスギ花粉症を悪化させる?

環境汚染とアレルギーの意外な関係

皆さんは、花粉症の時期に「今日は空気が霞んでいるな」と感じると、いつもより鼻のムズムズや目のかゆみがひどくなる経験はありませんか?

実は最近の研究で、大気汚染物質であるPM2.5に含まれる特定の成分が、スギ花粉症をさらに悪化させている可能性が明らかになりました。

今回は、名古屋大学が発表した興味深い研究成果(2026年2月発表)をもとに、私たちの鼻の中で何が起きているのかを解説します。

1. 犯人はPM2.5の中の「スズ(Sn)」だった!

これまでも「PM2.5がアレルギーを悪化させる」という話はありましたが、具体的にどの成分が、どのように悪さをしているのかは詳しく分かっていませんでした。

名古屋大学の加藤昌志教授らの研究グループは、以前に発表した「鉛(Pb)」に続き、今回は化学的に似た性質を持つ「スズ(Sn)」に着目。調査の結果、驚くべき事実が判明しました。

  • 花粉症の人の鼻にはスズが多い: スギ花粉症患者の鼻腔内には、健康な人と比べて3〜4倍も高い濃度のスズが蓄積していました。
  • 症状の重さと相関: 鼻の中のスズの濃度が高い人ほど、鼻炎の症状が重い傾向があることが分かりました。

2. 「鼻がPM2.5をキャッチしてしまう」という皮肉な現象

通常、健康な人の場合、PM2.5のような微小粒子は鼻を通り抜けて肺まで到達しやすいと考えられてきました。しかし、花粉症の人の鼻では全く違うことが起きています。

研究によると、アレルギー反応によって分泌される「ムチン(鼻水の主成分)」が、大気中のスズを磁石のように吸い寄せ、鼻の中に留めてしまうことが分かりました。

  1. 花粉で鼻が炎症を起こす
  2. 鼻水(ムチン)が過剰に出る
  3. ムチンがPM2.5中のスズをキャッチして蓄積させる
  4. 蓄積したスズがさらに炎症を悪化させ、さらにムチンが出る……

という、恐ろしい負のスパイラルが起きている可能性があるのです。

3. マウス実験でも裏付けられた「悪化のメカニズム」

研究グループがマウスを使った実験を行ったところ、アレルギー性鼻炎を持つマウスは、そうでないマウスに比べて2〜3倍も多くのスズを鼻腔内に取り込んでいました。

その結果、鼻の症状は劇的に悪化。一方で、鼻でスズがブロックされるため、肺に到達するスズの量は逆に30〜40%減るという皮肉な結果も出ています。「鼻がフィルターになって汚染物質を溜め込んでしまう」という状態です。

4. 私たちができる対策は?

この研究は、単に「花粉」を避けるだけでなく、「大気汚染(PM2.5)」を避けることが花粉症対策において非常に重要であることを示唆しています。

  • PM2.5情報のチェック: 花粉飛散量だけでなく、PM2.5の予測値が高い日も外出時のマスク着用を徹底しましょう。
  • こまめな鼻うがい: 鼻の中に蓄積したスズや花粉を洗い流す「鼻うがい」は、物理的にこれらを除去する有効な手段と言えそうです。

まとめ:これからの環境政策にも期待

今回の発見は、アレルギー性鼻炎を悪化させる具体的な物質を特定しただけでなく、今後の環境基準の見直しや新しい治療法の開発につながる大きな一歩です。

「たかが花粉症」と思われがちですが、大気汚染との相乗効果で私たちの体は想像以上にダメージを受けているかもしれません。日々のセルフケアに加え、環境問題への関心を持つことも、健やかな生活への第一歩になりそうですね。

出典:

PM2.5に含まれる”スズ”がスギ花粉症を悪化させる可能性― 環境汚染とアレルギーの新たな関係 ― – 名古屋大学研究成果情報

Emerging Risk: Intranasal Tin Exacerbates Allergic Rhinitis in Humans and Mice, Allergy, 02 December 2025

参考情報:

スギ花粉症の症状を増悪させる大気汚染物質を発見 〜鼻腔内の鉛濃度はスギ花粉症の増悪因子〜 – 名古屋大学研究成果情報

スズ (準有害金属) – ら・べるびぃ予防医学研究所

【検証動画】雪解け水はミネラル補給になるのか

雪が降ると、なぜか少しテンションが上がります。
積もった雪を見て「昔、雪を食べてたなぁ」と思い出しながら、ふと考えました。

雪って、ミネラル豊富なのだろうか?

雪解け水という言葉には、山の恵み、自然のろ過、きれいな水、そんなイメージがあります。

そこで今回は、積もった雪を採取し、ミネラル分析をしてみました。

採取したのは自宅の
・車の上
・庭
・ベランダ

この3か所の雪解け水です。

場所によって成分が変わるのでは?
と予想していましたが、、、結果は、ほぼ差なし。

明確な違いは確認されませんでした。

さらに興味深いのはその濃度です。

雪解け水に含まれるミネラル(マグネシウム、カルシウム)濃度は、水道水の約1/100程度 しか確認されませんでした。

つまり、「雪解け水=ミネラル豊富な天然水」というよりも、ミネラルが極めて少ない超軟水と言えます。

降雪は大気中の水蒸気が凝結して形成されるため、その性質は蒸留水に近いとも考えられます。

子どもの頃に食べていた雪は、天然の超軟水だったのかもしれません。

超軟水は、コーヒーやお茶、出汁に向いています。
次に雪が降ったら、雪解け水でコーヒーを淹れてみようと思います。

【外部セミナーのご案内】猫の日講座 被毛検査でわかること

このたび、Animal Nutrition Professional(AHCA認定)
猫犬の健康ごはんアドバイザー青沼ゆき 様 によるオンラインセミナー

「猫の日講座 被毛検査でわかること」

2026年2月25日に開催されます。

本講座では、当研究所が実施している愛犬、愛猫の被毛ミネラル検査を題材に、

  • 腎臓・肝臓への負担の傾向
  • ストレス状態
  • 慢性炎症のヒント
  • 甲状腺の傾向
  • 糖代謝・太りやすさ
  • 有害金属の蓄積

といった、外見からは分かりにくい体内環境について、「被毛ミネラル」という客観的なデータからどのような視点で読み解くことができるのかを解説されます。

また、「今食べさせているもの」が愛猫に合っているかどうかの“答え合わせ”という観点から、日々の食事や生活習慣を見直すヒントや、体調不良の根本原因を探るための一助となる内容も予定されています。

被毛検査の活用方法をより深く理解したい方、栄養学的なアプローチから愛猫の健康を見直したい方におすすめの講座です。

4時間近くの大変ボリュームのあるセミナーです。

タイトル:猫の日講座 被毛検査でわかること

開催日:2026年2月25日

▼セミナーの詳細・お申し込みはこちら
https://www.reservestock.jp/events/1108617

ら・べるびぃ予防医学研究所
「知ることは、すべてのはじまり」
ミネラル分析の専門機関として、毛髪・血液・飲食物など様々な検体を分析しています。
2000年の創業以来、皆さまの健康に役立つ検査や情報を提供しています。
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猫の宿命を変える「AIM革命」。

不治の病を乗り越え、愛猫と30年歩める時代へ

猫の祖先は砂漠で暮らしていたリビアヤマネコ。限られた水分を有効活用するために、尿を濃縮する能力が非常に高い一方で、腎臓には常に大きな負担がかかっています。

さらに、腎臓のフィルターの役割を果たす「ネフロン」の数は、人間に比べて圧倒的に少なく、一度壊れると再生することはありません。これまでは「いかに進行を遅らせるか」という維持療法が限界でした。

革命の鍵「AIM」とは?

東京大学の宮﨑徹元教授(現・AIM医学研究所所長)が発見したAIM(エイム:Apoptosis Inhibitor of Macrophage)は、血液中に存在するタンパク質です。

  • 本来の役割: 体内の「ゴミ(死んだ細胞など)」に貼り付き、掃除屋であるマクロファージに「ここにゴミがあるよ!」と知らせる目印。
  • 猫の悲劇: 猫のAIMは、生まれつき他のタンパク質(IgM)と強く結合しすぎており、いざという時に「ゴミ掃除の現場」へ向かうことができません。

結果として、猫の腎臓にはゴミが溜まり続け、慢性的な炎症が起こり、腎機能が失われていくのです。

驚異の研究結果:生存率が劇的に改善

最新の臨床研究では、すでに腎機能が低下した猫にAIMを投与したところ、驚くべき結果が報告されています。

項目従来AIM投与後
腎機能の指標悪化の一途をたどる数値が安定、または改善の兆し
生存率進行後は極めて厳しい劇的に向上
QOL(生活の質)食欲不振や活動低下食欲が戻り、元気になる個体も

宮﨑先生のグループによれば、これまで「なす術なし」とされた末期の状態からでも、AIMの投与によって寿命が大幅に延びる可能性が示唆されています。

A clinical impact of apoptosis inhibitor of macrophage on feline chronic kidney disease;

Vet J. 2026 Feb

実用化はいつ?最新スケジュール

産経ニュースなどの報道によると、待望の新薬承認に向けた動きが加速しています。

  • 治験の状況: すでに治験は終了。
  • 承認申請: 2026年4月にも国への承認申請が行われる見通し。
  • 実用化: 早ければ2026年内にも、動物病院で処方される可能性があります。

まさに今、私たちは猫の歴史が塗り替えられる瞬間に立ち会っていると言っても過言ではありません。

飼い主としてできること

新薬が手元に届くまでは、これまでのケアを継続することが何より大切です。

  1. 定期的な健康診断: 早期発見がAIMの効果をより高めます。
  2. 適切な食事と水分補給: 腎臓への負担を最小限に。
  3. 最新情報のチェック: 信頼できるニュースや動物病院からの情報を待ちましょう。

「不治の病」が「コントロールできる病気」へ。愛猫と20年、30年と一緒にいられる未来は、もうすぐそこまで来ています。

参考資料:

A clinical impact of apoptosis inhibitor of macrophage on feline chronic kidney disease;

Vet J. 2026 Feb

<独自>ネコの腎臓病新薬、早ければ年内にも実用化へ 治験終了、4月には国に承認申請 – 産経ニュース

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【あなたの家は大丈夫?】鉛製給水管による健康被害の恐れと、国が進める「年15万件撤去」の最新動向

毎日の生活に欠かせない「水道水」。蛇口をひねれば当たり前のように出てくる水ですが、今、その「通り道」である給水管が改めて問題視されています。

2026年1月、国土交通省は「鉛製給水管」の解消に向けた新たな対応方針をまとめました。読売新聞などの報道によると、国は今後年間15万件の撤去目標を掲げ、自治体などに対して3年後までに交換計画を策定するよう求めています。

なぜ今、これほどまでに鉛製給水管の撤去が急がれているのでしょうか?その背景にある健康への影響と、私たちが知っておくべきポイントを解説します。

1. なぜ「鉛」の管が使われていたのか?

鉛製給水管は、サビにくく、柔らかくて加工がしやすいという特徴から、明治時代の近代水道創設期から1980年代後半まで、全国の家庭で広く使われてきました。

しかし、健康への影響が懸念されるようになり、1989年(平成元年)には新設が禁止されました。その後も交換が進められてきましたが、現在でも多くの地域で古い配管が残されたままになっているのが実情です。

2. 知っておきたい鉛の「健康被害」と蓄積リスク

鉛は一度体内に取り込まれると排出されにくく、「蓄積性」が高いという厄介な性質を持っています。

  • 「血中」と「骨」での半減期の違い: 体内に吸収された鉛は、まず血液に入ります。血中での半減期は約1ヶ月程度と比較的短いのですが、問題はその先です。血中の鉛はカルシウムと似た動きをして、次第に骨や歯に蓄積されていきます。
  • 骨への蓄積と長い半減期: 成人の場合、体内の鉛の約90%以上が骨に存在すると言われています。一度骨に取り込まれてしまうと、その半減期は数年から数十年(20年〜30年とも)に及びます。つまり、一時的な血中濃度が下がったとしても、長い年月をかけて体内に「鉛の貯金」が蓄積され続けてしまうリスクがあるのです。
  • 具体的な健康影響: 蓄積された鉛が過剰になると、以下のような影響を及ぼす恐れがあります。
    • 神経への影響: 神経の麻痺や、記憶力・注意力の低下、貧血、腎機能への影響など。
    • 子供へのリスク: 特に乳幼児や胎児は影響を受けやすく、少量の摂取でも脳の発育を妨げたり、知能の発達に遅れが出たりするリスクが指摘されています。

3. 国の新しい方針:年間15万件の撤去へ!

これまでのペースでは「鉛管ゼロ」の達成が見通せないことから、国土交通省は2026年1月に強力な新方針を打ち出しました。

  • 目標設定: 年間の撤去件数を、これまでの約10.6万件から15万件へと大幅に引き上げ。
  • 自治体への指導: 3年後(2028年度末)までに、すべての水道事業者に具体的な交換計画の策定を要求。計画がない自治体には立ち入り検査も実施されます。
  • 建て替え時の更新: 家屋の建て替えやリフォームのタイミングで確実に交換されるよう、ハウスメーカーや工事関係者との連携も強化されます。

まとめ

「鉛製給水管の解消」は、私たちの健康を守るための待ったなしの課題です。国が本腰を入れて撤去を加速させる今、まずは自分の住まいの状況を知ることが第一歩となります。

安全でおいしい水を次世代につなぐためにも、自治体や国の動きを注視していきましょう。

参考資料:

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鉛に関するブログ

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環境汚染に立ち向かう「光る」助っ人?微生物の力を借りたゼブラフィッシュの挑戦

今日は、私たちの食卓や環境に潜む深刻な脅威「メチル水銀」に立ち向かう、最先端のバイオテクノロジーをご紹介します。

2025年2月12日付の『Nature Communications』に掲載された驚きの研究。なんと、微生物の遺伝子を組み込んだ動物が、有害な水銀を自ら無害化し、空気中に逃がしてくれるというのです。

1. なぜ「メチル水銀」は厄介なのか?

メチル水銀は非常に強い毒性を持つ物質で、特に脳や神経系に悪影響を及ぼします。その最大の特徴は、「生物濃縮」です。

  • 蓄積の連鎖: プランクトンが水中の微量な水銀を取り込む。
  • 濃縮の加速: 小さな魚がそれを食べ、さらに大きな魚がそれを食べる。
  • ピラミッドの頂点: 食物連鎖を上がるほど、体内の水銀濃度は跳ね上がります。

私たちが食べる大型魚(マグロなど)に水銀摂取のガイドラインがあるのはこのためです。一度体内に入ったメチル水銀は排出されにくく、これまでの技術では、環境中の生物から水銀を効率的に取り除くのは極めて困難とされてきました。

2. 微生物の「武器」を動物に授ける

自然界には、水銀を分解できるタフな微生物が存在します。彼らは以下の2つの強力な酵素(武器)を持っています。

  1. MerB(有機水銀リアーゼ): メチル水銀を、より毒性の低い無機水銀に分解する。
  2. MerA(水銀還元酵素): 無機水銀を、揮発しやすい「金属水銀」に変える。

オーストラリアのマッコーリー大学を中心とする研究チームは、この微生物の遺伝子を、ショウジョウバエ(無脊椎動物)ゼブラフィッシュ(脊椎動物)に導入することに成功しました。

なぜゼブラフィッシュ?

体にシマ模様がある小さな淡水魚で、「実験界のスター選手」です。

  • 遺伝子の約70%が人間と共通している。
  • 体が透明で、体内の変化を観察しやすい。
  • 繁殖が早く、世界中の研究室で標準的に使われている。

3. 実験の結果:水銀が半分以下に!

この「エンジニアリング(遺伝子改変)された動物」たちにメチル水銀を与えたところ、劇的な効果が確認されました。

  • 蓄積量が50%以上減少: 通常の個体に比べ、体内に残る水銀が半分以下になりました。
  • ガスとして放出: 体内で分解された水銀が、極めて微量かつ無害なレベルの「金属水銀蒸気」となって体外へ放出されました。
  • 圧倒的な生存率: 通常なら死んでしまうような高濃度の水銀環境でも、彼らは元気に生き延びることができました。

4. この研究が変える未来と、乗り越えるべき壁

「遺伝子組み換え動物を自然に放つ」ことには慎重な議論が必要ですが、この技術は未来の環境を守る大きな鍵になるかもしれません。

  • 養殖の安全性向上: 水銀汚染が懸念される海域でも、魚自らに解毒能力を持たせることで安全な食材を確保する。
  • バイオレメディエーション(生物修復): 汚染地域の生態系で、食物連鎖を通じて効率的に水銀を「回収・気化」させる。
  • 廃棄物処理の効率化: 水銀汚染された有機廃棄物を、動物の力を借りてクリーンにする。

もちろん、実用化には「遺伝子改変個体が野生種に影響を与えないためのセーフガード(不妊化など)」や、倫理的な法整備が欠かせません。

これまでは「汚染されたら手出しできない」と考えられてきた食物連鎖の中の水銀。それを「生物自らの力で掃除させる」という逆転の発想は、環境保護の新しい扉を開く一歩になるはずです。

参考資料:

 Tepper, K., et al. “Methylmercury demethylation and volatilization by animals expressing microbial enzymes.” Nature Communications (12 February 2025).

関連記事:

魚好きは要注意?血中水銀と糖尿病の意外な関係

2025年、国立環境研究所などの研究チームは、日本人勤労者を対象とした大規模調査の結果を公表しました。
これまで欧米を中心に同様の研究は行われてきましたが、「魚介類(水銀・ヒ素)」や「お米(カドミウム・ヒ素)」の摂取量が多い日本人に特化したデータは非常に貴重です。

研究の核心:水銀リスクが「約2倍」に

この研究では、血中のカドミウム・水銀・鉛・ヒ素の濃度と、2型糖尿病の発症リスクとの関連を分析しました。その結果、次のような事実が明らかになりました。

  • 水銀濃度が高いグループは、最も低いグループと比べて、2型糖尿病の発症リスクが約2倍
  • 一方で、カドミウム・鉛・ヒ素については、明確な関連は認められなかった

数ある重金属の中で、「水銀」だけが際立った関連を示した点は、非常に注目すべき結果です。

なぜ「水銀」だけがリスクを高めたのか?

水銀は主に大型の魚を食べることで体内に取り込まれます。
研究チームは、血中水銀濃度が高い状態が、

  • 膵臓でのインスリン分泌を低下させる可能性
  • 酸化ストレスを増大させ、糖代謝に悪影響を及ぼす可能性

といったメカニズムを通じて、糖尿病リスクを高めているのではないかと指摘しています。

日本人特有の背景がカギ

日本人は欧米人と比べて魚を食べる習慣が強く、水銀摂取量の80%以上が魚介類由来とされています。
そのため、日本人は他国とは異なる水銀ばく露環境にあります。

今回の研究は、「健康に良い」とされてきた魚食文化の裏側に潜むリスクを、日本人のデータで初めて明確に示した点で、非常に重要な意味を持っています。

水銀リスクを抑える「賢い魚の選び方」

水銀と糖尿病リスクの関連が示されたとはいえ、魚は良質なタンパク質やEPA・DHAなどを含む、優れた食品です。
大切なのは、「魚を避けること」ではなく、「どの魚を、どれくらい食べるか」です。

1. 「食物連鎖」の低い魚を選ぶ

水銀は食物連鎖を通じて、大きな魚ほど体内に蓄積されやすい(生物濃縮)性質があります。

リスク度魚の種類(例)選び方のポイント
低い(安心)アジ、イワシ、サバ、サンマ、サケ、タイ食物連鎖の下位にいる小型〜中型魚、回遊魚
注意が必要本マグロ、メバチマグロ、カジキ、キンメダイ、イルカ大型・深海・肉食性の魚

2. 厚生労働省のガイドラインを活用する

厚生労働省は、特に水銀の影響を受けやすい妊婦さん向けに、魚介類摂取の目安を示しています。
一般の方にとっても、リスク管理の参考になります。

  • 週1回までが目安:本マグロ、メバチマグロ、キンメダイ
  • 週2回までが目安:キハダマグロ、ビンナガマグロ
  • 特に制限なし:ツナ缶、サケ、アジ、サバ など

3. 「ツナ缶」は意外と安心?

「マグロ」と聞くと水銀が心配になりますが、一般的なツナ缶(ライトミート)に使われるのは、キハダマグロやカツオなど、水銀蓄積が比較的少ない種類です。
そのため、本マグロの刺身を頻繁に食べるよりも、リスクは低いと考えられています。

当社の代表が3ヶ月間キハダマグロ(100g)を毎日食べ続けた実験も行っておりますので、ぜひご参考ください。

最大の防御策は「分散」

今回の研究が伝えているのは、「魚を食べるな」というメッセージではありません。
特定の大型魚に偏らないことが、最大のリスク対策です。

  • 週の半分は、アジ・サバ・イワシなどの青魚を中心に
  • 肉類や大豆製品も取り入れ、タンパク源を分散させる

こうした小さな工夫で、魚の健康効果を活かしながら、重金属リスクを抑えることができます。

参考資料

水銀の蓄積を知りたい場合は毛髪ミネラル検査がお勧めです。最大で34種類の元素を調べることが可能です。

鉛(なまり)の記憶:私たちの髪が語る、環境政策の劇的な成果

私たちの体は、生きてきた環境を静かに、しかし正確に記録しています。最新の研究によれば、その中でも「髪の毛」は、過去数十年にわたる人類の環境汚染との戦いを証明する、極めて重要なタイムカプセルであることが明らかになりました。

2026年2月2日に発表された最新論文(PNAS掲載)は、「ガソリンへの鉛添加禁止」がいかに劇的な効果をもたらしたかを、数十年にわたり保管された毛髪サンプルから証明しました。

髪の毛は「過去を映す鏡」

なぜ髪の毛が重要なのでしょうか?血液中の鉛濃度は数週間から数ヶ月で代謝され変化してしまいますが、髪の毛は成長の過程でその時の体内のミネラルや有害金属などを取り込み、固定します。変質しにくいため、いわば「生体の記録媒体」として機能するのです。

今回の研究では、米国環境保護庁(EPA)が設立された1970年代から現在に至るまでの膨大な毛髪サンプルを分析。その結果、私たちの体内の鉛レベルが、環境規制の強化とともに驚異的なスピードで減少したことが示されました。

なぜ「鉛」の減少がこれほど重要なのか?

ここで、鉛が私たちの体にどのような影響を及ぼすのかを再確認しておく必要があります。鉛は、「これ以下なら安全」という閾値が存在しないと言われるほど、少量でも人体に毒性を示す物質です。

  • 脳へのダメージ: 中枢神経系に侵入し、認知機能や記憶力を低下させます。
  • 子供への深刻な影響: 発達段階にある子供が曝露すると、IQの低下、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害のリスクが高まることが判明しています。
  • 全身への毒性: 血液中の酸素運搬を妨げ(貧血)、腎臓機能の低下や高血圧など、循環器系にも長期的な悪影響を及ぼします。

かつての私たちは、文字通り「脳と体を蝕む空気」の中で暮らしていたのです。

科学が証明した「規制」の勝利

この調査結果から見えてくる、いくつかの驚くべき事実があります。

  1. ガソリン規制の威力: 1970年代に有鉛ガソリンの段階的廃止が始まって以来、毛髪から検出される鉛濃度は直線的に減少しました。EPA設立以降、髪の中の鉛濃度は約2桁(100分の1レベル)も減少しています。
  2. EPA(環境保護庁)の功績: 環境政策が単なる理念ではなく、物理的に私たちの「細胞レベル」で健康を守っていることがデータで裏付けられました。
  3. 世代を超えた蓄積: 保管された古いサンプルを現代のものと比較することで、かつての私たちがどれほど高濃度の有害物質に晒されていたかが浮き彫りになりました。

この研究は、「環境を守ることは、私たちの健康を直接守ることと同義である」というシンプルで強力なメッセージを投げかけています。

出典: Lead in archived hair documents a decline in lead exposure to humans since the establishment of the US Environmental Protection Agency Environmental Sciences, February 2, 2026 123 (6) | [PNAS]

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【最新研究】認知症リスクが34%上昇?脳の健康を守る「亜鉛」の重要性と、今すぐできる対策

「あれ、なんだっけ?」と、喉まで出かかった言葉が出てこないもどかしさを感じたことはありませんか?単なる「年齢のせい」と片付けてしまいがちなその症状、実は脳からの重要なサインかもしれません。

2025年、科学誌『Frontiers in Nutrition』にて、脳の健康を左右する「ある栄養素」の存在が大きな注目を集めました。その正体は、「亜鉛」です。今回は、科学誌『Frontiers in Nutrition』に掲載された論文の内容とともに、脳と亜鉛の深い関係について解説します。

1. 衝撃の最新データ:亜鉛不足で認知症リスクが34%

2025年11月、科学誌『Frontiers in Nutrition』に、約1万人を対象とした大規模な追跡調査の結果が発表されました(Association of zinc deficiency and risk of new-onset dementia)。

この研究で判明した最も注目すべき点は、「血中の亜鉛濃度が低い人は、正常な人に比べて認知症の発症リスクが34%も高い」という事実です。

さらに驚くべきことに、亜鉛不足が深刻なほどリスクは高まり、重度の欠乏(50µg/dL未満)の場合、リスクはなんと1.7倍(70%増)にまで跳ね上がることが示されました。

2. なぜ「亜鉛」が足りないと脳が衰えるのか?

なぜ、これほどまでに亜鉛が脳に影響を与えるのでしょうか? 論文では、主に以下のメカニズムが指摘されています。

  • 脳内の「慢性炎症」を防げなくなる 亜鉛には強力な抗酸化作用と抗炎症作用があります。亜鉛が不足すると、脳内で微細な炎症が続き、神経細胞がダメージを受けやすくなります。
  • 神経伝達の乱れ 亜鉛は、脳内の情報のやり取り(神経伝達物質の代謝)をスムーズにする役割を担っています。不足することで、情報の処理スピードや記憶の定着に支障が出ると考えられています。

3. 「脳の亜鉛不足」を招く現代のライフスタイル

「自分はしっかり食べているから大丈夫」と思っている方も注意が必要です。実は、現代人は亜鉛不足に陥りやすい環境にあります。

  • 加工食品の摂りすぎ: 食品添加物(フィチン酸など)の中には、亜鉛の吸収を妨げてしまうものがあります。
  • 過度なストレス: ストレスを感じると、体内の亜鉛は急速に消費されてしまいます。
  • 加齢による吸収力の低下: 年齢を重ねるごとに、食事から亜鉛を吸収する力は自然と落ちていきます。

4. 今日からできる!脳を守る「亜鉛」習慣

最新研究が示唆するのは、「亜鉛不足を放置しないこと」が将来の認知症予防に直結するということです。

  • 亜鉛豊富な食材を取り入れる 牡蠣、赤身の肉(牛・豚)、レバー、カボチャの種、カシューナッツなどがおすすめです。
  • 吸収率をアップさせる工夫 亜鉛はビタミンCやクエン酸と一緒に摂ると吸収が良くなります。お肉にレモンを絞る、といった工夫が効果的です。

まとめ

「たかがミネラル、されどミネラル」。 2025年の最新研究は、私たちの脳が健康に働き続けるために、亜鉛がいかに不可欠であるかを教えてくれました。

10年後、20年後の自分を支えるのは、今日の食事かもしれません。まずは今日の献立に、少しだけ「亜鉛」を意識してみませんか?

出典: Association of zinc deficiency and risk of new-onset dementia: a retrospective cohort study. Frontiers in Nutrition (2025). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12624281/

おいしく食べる亜鉛、鉄タブレット「噛む噛む20回 for kids」

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子どもの片頭痛と「亜鉛」の意外な関係。立ちくらみを伴わない子ほど不足に注意?

「朝、子どもが頭痛を訴えて学校に行けない…」 「頭痛だけでなく、立ちくらみや朝の弱さも気になる…」

そんな悩みを持つ親御さんに知ってほしい、最新の研究結果が発表されました。兵庫医科大学の研究チームが2025年に発表した論文によると、子どもの片頭痛と、体内の「亜鉛」の量には深い関係があるというのです。

今回は、この論文のポイントを分かりやすく解説します。

そもそも「亜鉛」は子どもにどんな役割があるの?

亜鉛は「微量元素」と呼ばれますが、子どもの健やかな成長には欠かせない立役者です。主な役割は3つあります。

  1. 脳と神経の「鎮静剤」 亜鉛は脳内の神経伝達物質のバランスを整えます。不足すると神経が過敏になり、脳が刺激に対して「過剰反応」しやすくなります。これが、片頭痛(脳の過敏な反応)を引き起こす一因と考えられています。
  2. 成長の「スイッチ」 細胞分裂を助けるため、身長を伸ばしたり、皮膚や粘膜を健康に保ったりするのに必須です。成長期の子どもは大人よりも多くの亜鉛を必要としています。
  3. 自律神経のサポート ホルモンの合成にも関わるため、心身の安定や自律神経の働きを助けます。

1. 片頭痛の子どもの40%が「亜鉛不足」?

研究チームが片頭痛と診断された小児(平均13歳)を調査したところ、なんと約40%の子に「亜鉛欠乏」が見られました。

亜鉛は、脳の神経の働きを安定させたり、炎症を抑えたりする重要なミネラルです。大人の片頭痛患者でも亜鉛不足が指摘されることがありますが、子どもでも同様の傾向があることが示されました。

2. 「立ちくらみ」がない子ほど、亜鉛が低いという驚きの結果

今回の研究で最も注目すべきは、片頭痛とあわせて「起立性不耐症(OI)」があるかどうかで、亜鉛の数値に差が出たことです。

  • 起立性不耐症(OI)とは? 立ち上がった時にめまい、ふらつき、動悸などが起こる状態。不登校の原因になることも多い症状です。

普通に考えると「症状が多い(頭痛+立ちくらみ)子の方が、栄養不足が深刻なのでは?」と思いがちですが、結果は逆でした。

  • 立ちくらみを伴わない片頭痛の子:亜鉛レベルが有意に低い
  • 立ちくらみを伴う片頭痛の子:亜鉛レベルは比較的保たれている

つまり、「ただの頭痛だけだから大丈夫」と思っている子の方が、実は深刻な亜鉛不足に陥っている可能性があるのです。

3. なぜ「立ちくらみがない子」の方が亜鉛が低いの?

研究者たちは、片頭痛のタイプによって「原因(メカニズム)」が異なるのではないかと推測しています。

  • 頭痛+立ちくらみの子:自律神経の乱れが主な原因?
  • 頭痛だけの子:亜鉛不足による神経の過敏さが主な原因?

もしそうだとすれば、頭痛だけのタイプの子は、亜鉛を補うことで症状が改善する可能性が高いということになります。

まとめ

「たかが頭痛」と思われがちな子どもの片頭痛ですが、その裏には栄養不足という意外なサインが隠れているかもしれません。特に、立ちくらみなどの目立った随伴症状がない場合は、一度「亜鉛」という視点で体の状態をチェックしてみてはいかがでしょうか。

出典:Association Between Serum Zinc Level and Comorbid Orthostatic Intolerance in Pediatric Patients with Migraine.Journal Nutrients. 2025 Nov 28;17(23);

参考:成長期の子どもに大切な必須ミネラル「亜鉛」 – ら・べるびぃ予防医学研究所Blog

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