環境汚染とアレルギーの意外な関係
皆さんは、花粉症の時期に「今日は空気が霞んでいるな」と感じると、いつもより鼻のムズムズや目のかゆみがひどくなる経験はありませんか?
実は最近の研究で、大気汚染物質であるPM2.5に含まれる特定の成分が、スギ花粉症をさらに悪化させている可能性が明らかになりました。
今回は、名古屋大学が発表した興味深い研究成果(2026年2月発表)をもとに、私たちの鼻の中で何が起きているのかを解説します。
1. 犯人はPM2.5の中の「スズ(Sn)」だった!
これまでも「PM2.5がアレルギーを悪化させる」という話はありましたが、具体的にどの成分が、どのように悪さをしているのかは詳しく分かっていませんでした。
名古屋大学の加藤昌志教授らの研究グループは、以前に発表した「鉛(Pb)」に続き、今回は化学的に似た性質を持つ「スズ(Sn)」に着目。調査の結果、驚くべき事実が判明しました。
- 花粉症の人の鼻にはスズが多い: スギ花粉症患者の鼻腔内には、健康な人と比べて約3〜4倍も高い濃度のスズが蓄積していました。
- 症状の重さと相関: 鼻の中のスズの濃度が高い人ほど、鼻炎の症状が重い傾向があることが分かりました。
2. 「鼻がPM2.5をキャッチしてしまう」という皮肉な現象
通常、健康な人の場合、PM2.5のような微小粒子は鼻を通り抜けて肺まで到達しやすいと考えられてきました。しかし、花粉症の人の鼻では全く違うことが起きています。
研究によると、アレルギー反応によって分泌される「ムチン(鼻水の主成分)」が、大気中のスズを磁石のように吸い寄せ、鼻の中に留めてしまうことが分かりました。
- 花粉で鼻が炎症を起こす
- 鼻水(ムチン)が過剰に出る
- ムチンがPM2.5中のスズをキャッチして蓄積させる
- 蓄積したスズがさらに炎症を悪化させ、さらにムチンが出る……
という、恐ろしい負のスパイラルが起きている可能性があるのです。
3. マウス実験でも裏付けられた「悪化のメカニズム」
研究グループがマウスを使った実験を行ったところ、アレルギー性鼻炎を持つマウスは、そうでないマウスに比べて2〜3倍も多くのスズを鼻腔内に取り込んでいました。
その結果、鼻の症状は劇的に悪化。一方で、鼻でスズがブロックされるため、肺に到達するスズの量は逆に30〜40%減るという皮肉な結果も出ています。「鼻がフィルターになって汚染物質を溜め込んでしまう」という状態です。
4. 私たちができる対策は?
この研究は、単に「花粉」を避けるだけでなく、「大気汚染(PM2.5)」を避けることが花粉症対策において非常に重要であることを示唆しています。
- PM2.5情報のチェック: 花粉飛散量だけでなく、PM2.5の予測値が高い日も外出時のマスク着用を徹底しましょう。
- こまめな鼻うがい: 鼻の中に蓄積したスズや花粉を洗い流す「鼻うがい」は、物理的にこれらを除去する有効な手段と言えそうです。
まとめ:これからの環境政策にも期待
今回の発見は、アレルギー性鼻炎を悪化させる具体的な物質を特定しただけでなく、今後の環境基準の見直しや新しい治療法の開発につながる大きな一歩です。
「たかが花粉症」と思われがちですが、大気汚染との相乗効果で私たちの体は想像以上にダメージを受けているかもしれません。日々のセルフケアに加え、環境問題への関心を持つことも、健やかな生活への第一歩になりそうですね。
出典:
・PM2.5に含まれる”スズ”がスギ花粉症を悪化させる可能性― 環境汚染とアレルギーの新たな関係 ― – 名古屋大学研究成果情報
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