先日、友人の中学1年生になる息子さんが軽い貧血と診断されました。
鉄は、もっとも不足が懸念されているミネラルの一つ。
そこで今回は、思春期の貧血についてです。

体は急速に大きくなる思春期は、鉄の必要量が高まります。
また、女子は、月経が始まる人が増え、出血により鉄を失うため、鉄の需要はさらに高まります。
そのため、12歳から17歳の鉄の必要量は、大人よりもずっと多く、貧血になりやすい時期ともいえます。
ほとんどは鉄欠乏性貧血
この時期の貧血は、ほとんどが鉄の摂取不足による鉄欠乏性貧血です。
こんな症状があるなら、鉄が不足しているのかもしれません。
- 朝起きられない
- 集中力、注意力が低下している
- だるい、めまいがする
- イライラしやすい
- 頭痛

※ほかの病気でも、これらの症状がみられることがあります。
スポーツ貧血
さらに、運動が原因で生じる貧血を「スポーツ貧血」といいます。
スポーツをする人特有の原因としてこれらがあげられます。
① 鉄の需要が高まる
成長や筋肉量が増えると、必要とする鉄の量も増えます。
② 鉄の摂取不足
必要量が増えているのに、食事などから摂取する鉄が少ない
③ 溶血(赤血球が壊れる)
ランニング、バレーボール、バスケットボール、剣道など足の裏への強い刺激が繰り返される競技では、足の裏の毛細血管が壊れ、貧血になることがあります
④ 失われる鉄が増える
大量の汗をかくと、わずかに汗に含まれる鉄も一緒に失われます。

鉄の貯蔵庫
鉄は、体でいろいろな働きを担う重要な栄養素なので、鉄が不足した場合にそなえて貯蔵庫を持っています。
それが肝臓です。
肝臓にはフェリチンをいわれる鉄が貯蔵されています。
食事などからとる鉄の量が不足すると、肝臓からフェリチンを放出して、体が必要とする鉄の量を維持します。
え?貧血と診断された?
それはつまり、鉄の摂取量が不足する状態が続き、貯蔵してある鉄も使い果たしてしまったという状態なのです。

貧血にならないために
まずは食事。
食品に含まれる鉄には、赤身の肉や魚などの動物性食品に多く含まれるヘム鉄と、野菜や穀類、豆類などの植物性食品に多く含まれる非ヘム鉄があります。
ヘム鉄は、非ヘム鉄よりも吸収率が良く、胃壁や腸管を荒らしにくく、さらに、食物繊維やタンニンと一緒に摂っても吸収が妨げられにくいという特徴があります。
でも、日本人が食事から摂取する鉄の85%以上は吸収率の低い非ヘム鉄です。
鉄不足を効果的に予防するためには、非ヘム鉄だけでなく、吸収性の高いヘム鉄が豊富な食品をバランスよく摂取することです。


鉄を吸収しやすくする

ビタミンC
ビタミンCは、鉄(非ヘム鉄)の吸収を促進します。ビタミンCを豊富に含む食品(オレンジ、レモン、イチゴ、トマトなど)を食事に追加することで、非ヘム鉄の吸収率を上げることができます。

酢や酸味のある調味料
酢やレモン汁などの酸味のある調味料も非ヘム鉄の吸収を促進します。食事にこれらの調味料を加えることで、鉄の吸収が改善されます

鉄を豊富に含む食品と組み合わせる
ヘム鉄を豊富に含む食品(赤身の肉、鶏肉などの動物性食品)と一緒に非ヘム鉄(豆類、ホウレン草などの植物性食品)を摂取することで、非ヘム鉄の吸収率を向上させることができます。
サプリメントでの摂取には注意が必要
食事で鉄を過剰に摂ってしまうことはほとんどあり得ませんが、サプリメントでの鉄の摂取には注意が必要です。
鉄は、過剰になると体内で活性酸素を発生させ、細胞を傷つけます。
鉄のサプリメントは医師の処方以外ではあまりおススメできません。
鉄の吸収を阻害するもの
- カルシウム: カルシウムは鉄と化学的性質が似ているため、鉄の吸収を阻害することがあります。牛乳を毎日、大量に飲んで貧血になることを「牛乳貧血」と名付けられています。もちろん、カルシウムは大切な栄養素の一つなので、適切な量のカルシウムをとることはとても大切です。
- タンニン: コーヒーや紅茶、煎茶などに含まれる「タンニン」は、鉄(非ヘム鉄)の吸収を阻害する成分の一つです。 タンニンが鉄と結合して水に溶けにくくなるので、食事中や食事の直後に摂るのは避けましょう。
- フィチン酸: フィチン酸は、穀類や豆類などの外皮部分に多く含まれ、体内に入ると鉄や亜鉛と強く結合し、水に溶けない不溶性の成分に変化するため、吸収されずそのまま排泄されてしまいます。健康や美容のために玄米を主食としている人は、鉄が効率よく吸収されない可能性もあるので注意する必要があります。
- シュウ酸:シュウ酸は非ヘム鉄と結合して、鉄の吸収が阻害されることがあります。シュウ酸は、穀物や一部の野菜に比較的高い濃度で含まれています。たとえば、ホウレン草やタケノコのアクに多く含まれますが、シュウ酸は水溶性なので、下茹でをしてアク抜きをすると70~80%のシュウ酸が水に溶けだします。
誤ったダイエットは禁物
その他に、このころから特に女の子のダイエットが多くなります。
極端に食事を減らしたり、偏った食事になったりすることで、成長に必要な栄養素がとれなくなることもあります。

心と体が急速に成長する思春期にこそ、バランスの良い食生活を送らせてあげたいですね。
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