
当社が特に注目している必須ミネラル、それは「亜鉛」です。
必須ミネラルは16種類ありますが、カルシウムや鉄のように不足が懸念され積極的な摂取が推奨されている栄養素とは異なり、亜鉛はまだ十分に意識されていない現状があります。
亜鉛は、私たちの体の中でとてもたくさんの役割を担っています。
なんと 300種類もの酵素 の働きを助け、さらに 「ジンクフィンガープロテイン」という遺伝子のスイッチ役をするタンパク質 が数千種類もあり、その働きにも亜鉛が欠かせません。(亜鉛はジンクといいます)
つまり、亜鉛は体の成長や脳の発達、エネルギーづくりや免疫など、あらゆる場面で支えてくれる “縁の下の力持ち” なのです。
毛髪中の亜鉛は子どもで低い?
当社では毛髪ミネラル検査を行い、年代別の傾向を長年確認しています。
毛髪中の亜鉛濃度は比較的安定しており、成人ではおおよそ 150ppm が平均値です。ところが、1〜7歳の子どもでは平均値が成人の2/3の おおよそ 100ppm なのです。
6年ぶりに改定した亜鉛欠乏症の診療指針 2024
日本臨床栄養学会は、6年ぶりに「亜鉛欠乏症の診療指針」を改定しました。ポイントを分かりやすく整理すると以下の通りです。
1. 診断基準・検査の見直し
- 従来、アルカリホスファターゼ(ALP)の低値も診断に参考にしていましたが、今回の改定でこの記述は削除されました。
- 血液検査による亜鉛測定を中心に、よりシンプルに診断できるようになっています。
2. 採血タイミングの明確化
- 亜鉛治療中は 1〜2か月ごとに採血 して亜鉛の量を調整
- 銅の測定は 数か月に1回 で調整
- 治療中のモニタリング方法が具体的に示され、より安全で効果的な治療が可能になりました。
3. 治療に使う亜鉛製剤の整理
- 保険適用で使えるのは ヒスチジン亜鉛 と 酢酸亜鉛
- ポラプレジンクも紹介されていますが、保険適応は限定的
- これにより、医療現場での選択が明確になりました。
4. 小児・内科疾患における意義の更新
- 亜鉛欠乏が関わる疾患について、最新のエビデンスをもとに内容を大幅に改定
- 小児科・内科それぞれで「亜鉛補充がどのように役立つか」が整理されています。
5. 亜鉛摂取推奨量の改定
- 成人男性: 9.0〜9.5mg/日(旧版10mg)
- 成人女性: 7.0〜8.0mg/日(旧版8mg)
- 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」を反映した最新値になりました。
6. 亜鉛欠乏の頻度・リスク情報の整理
- 国内における亜鉛欠乏の頻度を記載
- 亜鉛欠乏がリスクとなる疾患は、メタアナリシスで証明されたもののみを記載
- 不必要な情報を削ぎ落とし、科学的根拠に基づいた内容に
7. 過剰摂取に関する情報の更新
- 食事摂取基準に基づいた耐用上限量を記載
- 血清膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)の上昇は臨床上ほとんど問題がないため、記述を削除(一部本文には残す)
亜鉛不足が子どもに与える影響
日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針 2024」でも、亜鉛は小児の成長・発達にとって重要な栄養素であると明記されています。
- 亜鉛は小児の成長発達に重要な役割を担う
- 欠乏すると成長障害や脳の発達遅延につながる可能性がある
- 重症感染症の頻度や予後にも影響を与えることがある
- IGF-1(インスリン様成長因子-I)の維持に関与し、骨や身長の成長に不可欠
世界的にも、栄養状態が悪い地域では亜鉛補充によって子どもの成長障害が改善したという報告があります。
お子様の検査が多い
当社では発達障害や自閉症のお子様、あるいは発達が気になると感じている保護者様からのご依頼を多くいただきます。
標準検査ではない毛髪ミネラル検査に費用をかけて受けられる方の多くは、やはり「お子様の成長や発達に関する心配」から行動されているのだと感じています。
毛髪中の亜鉛が低い、という結果は決して珍しくありません。
だからこそ、成長期のお子様にとって必要な栄養素を十分に確保することは、体だけでなく脳の発達にも良い影響をもたらす可能性があります。
まとめ
- 亜鉛は16種類ある必須ミネラルのひとつ
- 成長・免疫・遺伝子発現に広く関与している
- 小児は毛髪中亜鉛濃度が低い傾向
- 亜鉛不足は成長障害や脳発達への影響が懸念される
成長期の子どもこそ、亜鉛の充足度を意識してあげることが大切です。
不足が心配な方は、血清亜鉛の測定や毛髪ミネラル検査で、まずは現状を知ることから始めてみてください。
ら・べるびぃ予防医学研究所
「知ることは、すべてのはじまり」
ミネラル分析の専門機関として、毛髪・血液・飲食物など様々な検体を分析しています。
2000年の創業以来、皆さまの健康に役立つ検査や情報を提供しています。
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