
「タンポポコーヒーって、ヒ素が入っているって本当?」という噂。
まずタンポポコーヒーってなーに?という方はこちらをどうぞ。
タンポポは重金属を吸収しやすい植物?
タンポポは土壌中の重金属を吸い上げやすい植物として知られており、「まさか…」と思いつつも、気になってしまうのがミネラル分析屋の性。
ということで、実際にヒ素を測定してみました!
分析に使用した製品
今回使用したのはこちらのタンポポコーヒーです。

①100%タンポポ(日本)
②inka 有機タンポポ(有機大麦、有機ライ麦、有機チコリ、有機タンポポ/ポーランド)
③Organic Cereal Drink(有機大麦、有機ライ麦、有機チコリ、有機タンポポ/ポーランド)
④対象群としてドリップコーヒー
②と③は原材料を見ると非常に似ており、どちらも顆粒タイプの飲料です。
①は茶葉のように抽出して飲むタイプとなります。
分析方法
各製品1gを90℃の超純水で抽出、もしくは溶解し、ヒ素濃度を測定しました。
結果
| 試料 | As(ヒ素) ㎍/L |
| ①タンポポ | 156 |
| ②inka | 62 |
| ③Organic | 63 |
| ④コーヒー | 3 |
④の一般的なコーヒーと比べると、タンポポコーヒーのヒ素濃度は明らかに高いことが分かります。
特に①の「100%タンポポ」は最も高い値を示し、当社で分析している日本の米の平均濃度とほぼ同等でした。
②③は原材料の中で「有機タンポポ」が4番目の表記であることから、タンポポの割合が少なく、濃度もやや低めでした。
実際の摂取量を計算してみると?
①100%タンポポコーヒーの商品説明には以下のようにあります。
普通のお茶のように急須でお湯を注いで飲めます。
コーヒーの約3分の1量を目安にしてください。
一般的にコーヒー1杯に使用する豆の量は約10gとされています(参考:YAMATOKAWA COFFEEブログ)。
その1/3ということは、タンポポコーヒー1杯あたり約3.3g使用する計算になります。
これをもとに計算すると、
①のタンポポコーヒー1杯に含まれるヒ素量は約0.5µgとなります。
②③の顆粒タイプは、小さじ1~2杯(約4~8g)を使用するため、
- 小さじ1杯:約0.25µg
- 小さじ2杯:約0.5µg
となり、小さじ2杯の場合は①とほぼ同程度の結果でした。
0.5µgのヒ素は多いの?
この量が「安全なのか」「危険なのか」が気になるところです。
結論から申し上げますと、一概に安全・危険とは言えません。
ヒ素については、かつて設定されていた「PTWI(暫定的週間耐用摂取量)」が撤回されており、「明確な安全閾値はない」とされています。
しかしながら、参考として「NOAEL(無毒性量)」という指標があります。
このNOAELは「体重1kgあたり0.8µg」とされており、体重50kgの方の場合、1日の安全上限の目安は約40µg(※あくまで参考値)となります。
したがって、タンポポコーヒー1杯分の0.5µgは、この値と比較するとごくわずかな量であることが分かります。
ごはんとの比較
日本人の無機ヒ素摂取源の多くは「米」と言われています。
一般的な食生活(朝・昼・晩にごはん1杯ずつ)の場合、1日30~40µg程度を米から摂取していると推定されています。
つまり、タンポポコーヒーからの摂取量(0.5µg)は、ご飯からの摂取量に比べておよそ60~80分の1程度と推測されます。
このことから、タンポポコーヒーを飲んだからといってヒ素摂取量が大幅に増えるわけではなく、
過度な心配をされる必要はないと考えられます。
ただし、ヒ素は土壌中の濃度に依存するため、栽培地域によって含有量が異なる可能性があります。
今回分析した日本産およびポーランド産のタンポポコーヒーについては、いずれも健康上の懸念が生じるレベルではないと考えられます。
タンポポの根のヒ素は有機?無機?
残念ながら、当社の分析ではヒ素の総量(トータルのヒ素濃度)のみを測定しており、有機ヒ素と無機ヒ素の区別までは判別できません。
しかし土壌中のヒ素の形態はほとんどが無機ヒ素であり、陸生植物にはこれらを有機化する能力が極めて低いと考えられているため、タンポポの根に含まれるヒ素の大部分も無機ヒ素であると推定されます。
まとめ
- タンポポは重金属を吸収しやすい植物であるため、一定量のヒ素が検出されました。
- しかし、実際に飲む量を考慮すると、摂取量はごくわずかでした。
- 米由来の摂取量と比較しても、過度に心配する必要はないと考えられます。
ら・べるびぃ予防医学研究所
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