
「毎日歯磨きをしているのに、夕方になると口臭が気になる」「愛犬の口のニオイが強くなってきた」……そんな悩みを持つ方は少なくありません。
実は、ヒトと犬の口内トラブルの根源は驚くほど似ています。最近、その共通の原因をスマートに解決する新成分「サイクロデキストラン(CI)」に関する研究結果が発表されました。今回は、このCIがなぜ「次世代のオーラルケア」と呼ばれているのか、その仕組みを解説します。
1. そもそも、なぜ口臭や歯周病は繰り返すのか?
口臭や歯周病(PD)の最大の敵は、細菌が作り出す「バイオフィルム」です。これは、細菌が自身の身を守るために作る、いわば「バリア」のようなヌメり。
- ヒトの場合: Porphyromonas gingivalis(P. ジンジバリス)
- 犬の場合: Porphyromonas gulae(P. グラエ)
これらは兄弟のような菌で、どちらもバイオフィルムの中に隠れて増殖し、強烈な口臭(揮発性硫黄化合物)や、歯ぐきの組織を破壊する毒素を放出します。従来の殺菌成分では、この強固なバリアの奥まで成分が届きにくいことが課題でした。
2. 注目の新成分「サイクロデキストラン(CI)」とは?
サイクロデキストラン(CI)は、自然界にあるデンプンから作られる環状(ドーナツ型)の構造を持つオリゴ糖の一種です。
今回の研究で、CIは従来の「菌を殺す」という発想ではなく、「細菌の活動を無力化する」という画期的なアプローチを見せました。
注目成分「サイクロデキストラン(CI)」のすごい効果
サイクロデキストランは、環状の構造を持つオリゴ糖の一種です。今回の研究では、CIがこれらの歯周病菌に対してどのような働きをするのかが明らかになりました。
1. 「バイオフィルム」の形成を強力にブロック
CIは、細菌がバイオフィルムの材料として使う「不溶性グルカン」の産生を阻害します。 研究では、CIを加えることで、細菌そのものを殺すのではなく、細菌が「バリア(バイオフィルム)」を作るのを邪魔することが確認されました。
2. 口臭の原因ガスを元から減らす
ガスクロマトグラフィーによる測定の結果、CIを使用すると硫化水素(卵が腐ったような臭い)やメチルメルカプタン(玉ねぎが腐ったような臭い)の濃度が著しく減少しました。 これは、CIが臭いを消しているのではなく、臭いの元を作るバイオフィルムを抑制した結果だと考えられています。
3. 歯ぐきの炎症を抑える
歯周病が悪化すると、マクロファージ(免疫細胞)から炎症を引き起こす物質(IL-1β、IL-6など)が分泌されます。CIはこれらの炎症因子の分泌を有意に抑制することがわかりました。しかも、細胞を傷つける毒性がないことも証明されています。
この研究がもたらす未来
今回の研究のポイントは、「殺菌(菌を殺す)」ではなく「阻害(バリアを作らせない)」というアプローチです。
- 低刺激で安全: 細胞毒性がなく、副作用のリスクを抑えたケアが可能。
- ヒトと犬の両方に有効: 種を越えて共通のメカニズムで効果を発揮。
- 予防的ケアの主役に: 歯周病が進行する前の段階で、バイオフィルム形成を防ぐ新しいオーラルケア製品(ガム、ジェル、添加剤など)への応用が期待されます。
これからの口腔ケアは「バリアを張らせない」こと
お口の健康は、心臓疾患や糖尿病など、全身の健康に直結することがわかっています。サイクロデキストラン(CI)は、ヒトにとっても、大切な家族である愛犬にとっても、「口臭と歯肉炎を元から断つ」ための非常に有望な成分ですね。
Front. Oral Health, 18 December 2025
亜鉛、鉄、サイクロデキストラン配合タブレット<噛む噛む20回>

ら・べるびぃ予防医学研究所 「知ることは、すべてのはじまり」 ミネラル分析の専門機関として、毛髪・血液・飲食物など様々な検体を分析しています。 2000年の創業以来、皆さまの健康に役立つ検査や情報を提供しています。 ら・べるびぃ予防医学研究所のミネラル検査へ