今回は「鉄」と「免疫力」のお話です。
鉄といえば、貧血予防に大切な栄養素として知られていますが、実は免疫システムにも深く関わっていることをご存知ですか?

幼少期の鉄不足が将来に影響する
コロンビア大学の研究チームが興味深い発見をしました。幼少期に食事から十分な鉄が摂取できないと、その後、鉄レベルが正常に戻っても、肺の免疫細胞がウイルスと闘う力が弱くなってしまう可能性があるというのです。
研究者のトーマス・コナーズ助教授は、「鉄欠乏症は世界中で最も一般的な栄養問題の一つで、特に子どもに多く見られます。長年、ウイルス感染や重症化のリスク増加と関連付けられてきましたが、私たちの研究はその理由の一つに新たな光を当てています」と述べています。
メモリーT細胞の働きが低下する
この研究では、過去に遭遇した病原体への反応を助ける「メモリーT細胞」という免疫細胞に注目しました。
マウスを使った実験で、鉄が不足した状態でインフルエンザに感染すると、見た目は正常なメモリーT細胞ができるものの、その機能に問題があることが分かりました。感染症と闘うために重要なインターフェロンγや腫瘍壊死因子αといったタンパク質を十分に作れなくなってしまうのです。
そして注目すべきは、この機能低下が鉄分レベルを回復させた後も続いてしまうという点です。つまり、鉄欠乏症は目の前の感染症を克服しにくくするだけでなく、将来のウイルスに対する免疫システムの反応にも長期的な影響を及ぼす可能性があるのです。

日本の子どもの10人に1人以上が貧血の可能性
この報告書によると、米国では子どもの約10%が鉄欠乏症に罹患していますが、日本でも同様の状況があります。
一般社団法人ラブテリと聖路加国際大学大学院の共同研究によると、日本人の子どもの12.7%が貧血の可能性があることが明らかになりました。さらに、その割合は1歳半から5歳にかけて増加する傾向が見られたのです。

家庭での対策が十分に進んでいない現状
ラブテリの調査では、食事以外で子どもに鉄を補給している母親は全体の約4割にとどまっていることも分かりました。実施している場合の内容としては、「鉄を強化したお菓子や食品」や「フォローアップミルクの摂取」が多く挙がっています。
また、子どものヘモグロビン値と母親のヘモグロビン値に相関が見られたことから、家庭での食事が子どもの鉄の状態に影響を与えている可能性も示唆されています。
なぜ幼児期の鉄が重要なのか
乳児期と小児期は、免疫システムの成熟を含む急速な成長と発達の時期です。この大切な時期に十分な鉄を摂取することは、将来の健康にとって特に重要です。
特に離乳期に鉄が不足すると、脳や身体の発達に長期にわたり影響を及ぼす可能性があることが明らかになっています。この時期の栄養不足の影響は、その後どんなに栄養状態の改善を行っても挽回できないケースもあるのです。
予防が何より大切
コナーズ助教授は「私たちの研究は、免疫システムの発達と将来の健康にとって、食事からの鉄摂取が重要であることを強調しています。子どもたちがバランスの取れた食事を摂り、小児科医による定期的な検診を受けることが重要です」と語っています。
鉄は、レバー、赤身肉、魚、豆類、緑黄色野菜などに多く含まれています。お子さんのいるご家庭では、日々の食事で意識的にこれらの食材を取り入れることが、将来の健康を守ることにつながります。必要に応じて、鉄分強化食品やフォローアップミルクなどを活用することも一つの方法です。
子どもの健康な成長のために、まずは鉄不足という問題があることを知り、日々の食事を見直すことから始めてみませんか?

Iron-deficient diet prevents lung cells from fighting the flu | EurekAlert!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000107795.html
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