日本では近年、野生動物への配慮や環境保全の観点から、鉛弾の使用規制が進んでいます。特に北海道では、オジロワシ・オオワシなどの希少猛禽類が、ハンティング後に残された鉛弾片を摂取し、鉛中毒で死んでしまう事例が多数報告されてきました。
この状況を受け、北海道ではすでにライフル弾の鉛弾が全面禁止となっており、全国でも同様の動きが進みつつあります。
また、環境省は2025年度以降に鉛弾の使用を段階的に規制し、2030年までに鳥類の鉛中毒ゼロを目指す方針を示しています。
鉛の毒性:なぜ「少量でも危険」なのか?
鉛は人にとっても動物にとっても 蓄積性 の強い有害金属です。
一度体内に入ると、骨・歯・肝臓に長期間蓄積し、ゆっくり血中へ再放出されます。
鉛がもたらす影響
子ども:
- 発達遅滞
- IQ低下
- 行動障害
- 低身長
成人:
- 貧血
- 末梢神経障害
- 高血圧
- 腎障害
特に神経毒性が強く、世界的にも「安全な暴露量は存在しない」とされています。
■ 野生動物にどう影響するのか?
動物が狩猟後の解体残渣(内臓など)を食べる際に、鉛弾の破片を誤って一緒に摂取し、その結果 急性の鉛中毒 を起こして命を落とすことがあります。
猛禽類では、
- ふらつき
- 飛行障害
- 食欲不振
- 痙攣
などが典型的で、死亡例が多いのです。
収容されたオジロワシの 8.6%、オオワシの21.9%が鉛中毒 とされ、野生動物保全問題となっています。
■ ジビエを食べる時に気をつけたい「鉛」問題
近年、地域振興・鳥獣被害対策の一環としてジビエ利用が広がっています。
一方で、鉛弾で捕獲された野生動物の肉には、微細な鉛片が残る可能性があり、健康面で懸念が指摘されています。
■ なぜジビエに「鉛」が入り込むのか?
鉛弾は衝突すると砕けやすく、骨に当たった際に非常に細かい粒状(ミリ以下)になって肉の周囲に飛散します。
見た目では分からないほど微細なため、
- 解体時に完全に除去できない
- 調理しても溶けて消えない
- 食事としてそのまま体内に入る
といった問題が起こります。
このため、ヨーロッパでは「鉛弾で獲られたジビエは子ども・妊婦は特に避けるべき」という公的な健康勧告が複数出ています。
https://www.food.gov.uk/safety-hygiene/lead-shot-game
■ 日本の鉛曝露は「鉛弾」だけではない
日本での鉛暴露源として他にも重要なのが、古い鉛製給水管の存在です。
すでに新設は行われていませんが、1975年以前に敷設された古い住宅や集合住宅では、いまだに局所的に残っています。
腐食により鉛が溶出し、飲料水中の鉛濃度が高くなる事例が報告されており、水道局では順次交換が進められていますが、完全解消には時間が必要です。
■ 鉛のリスクを減らすには?
- 鉛弾の代替として 銅弾や鉄弾 への移行
- 野生動物のモニタリング強化
- 古い給水管の早期交換
- 市民の鉛暴露への理解促進
- ミネラル検査による個人内蓄積のチェック
これらの取り組みが、環境保全と健康維持の両面で重要になります。
鉛は歴史的に便利な素材であった一方、「神経毒性が強く、環境に残りやすい」 という重大な欠点を持つ金属です。
日本でも、鉛弾による野生動物の死亡例や、老朽化した鉛製給水管など、私たちの生活に密接に関わる問題として依然残っています。
当社では、ミネラル検査を通じて、こうした有害金属への曝露実態を明らかにし、皆さまの健康と環境保全の一助となる情報を発信してまいります。
ら・べるびぃ予防医学研究所
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