氷が食べたい!・・・鉄不足かも?

氷が食べたい!と思うことはありますか?

私のお姑さんは氷を食べるのが大好きで、しょっちゅうキッチンで氷をガリガリ食べていました。
知覚過敏で冷たいものが苦手な私は、見ているだけで歯が痛くなりそうでした。

当時は「変わった好みだなぁ」と眺めているだけでしたが、氷が食べたくなるのは単に好みの問題ではなく、鉄不足の症状の一つといわれています。

なぜ鉄が不足すると氷が食べたくなるのか?

鉄が不足し、貧血になると、

・自律神経の働きが乱れ、体がほてるので冷やしたくなる
・口の中の温度が高くなり、乾く

などの理由で氷が食べたくなると言われることもありますが、じつはよく分かっていません。

通常、食べることのないものを継続的に食べることを「異食症」といいます。
「異食症」で調べてみると、氷の他にもいろいろあるそうです。

氷・土・髪・爪・紙・壁・石などの異食症が知られています。

えええ?土っ?
えええ?壁っ?石って歯は大丈夫なのかっ?!
と思いましたが、どれも鉄欠乏性貧血のときに現れやすいそうです。

鉄不足おそるべし!

このうち、髪を食べたくなる異食症「ラプンツェル症候群」といわれる病気は、自分の髪のみならず、他人の髪も食べたくなってしまうそうです。
ラプンツェルといえば、ディズニー映画でもおなじみの長く美しい髪を持つプリンセス。
そんなプリンセスの名前がついていますが、美しい話ではありませんね。

髪の毛は胃酸で消化されるのかと思いましたが、食べた髪の毛は胃の中で固まり、毛玉になってしまうそうです。

トルコでは、腹痛を起こして病院に運ばれた5歳の女の子の胃から小腸までびっしりと髪の毛で埋まっていたとの論文が発表されています。
この子も鉄欠乏性貧血があり、そのために髪を食べたくなり、髪の毛が消化管を塞ぎ貧血が悪化、さらに髪の毛が食べたくなるという悪循環を起こしていたのではないかと言われているそうです。

鉄不足おそるべし!

鉄、大事!

鉄は、酸素の運搬役として有名ですが、その他にも体の実に様々なところで必要とされているミネラルです。
ATP合成、神経伝達、免疫機能やDNAの合成などなど、生きる根幹に関わるミネラル!

私がら・べるびぃ予防医学研究所に入社したときの勉強会で、「鉄の働きをすべて説明しようとしたら、分厚い本を1冊作ってもまだ足りない」と言われたことを思い出しました。

鉄は、最も不足が懸念されているミネラルの一つです。
食事の鉄を意識してくださいねー!

【毛髪ミネラル検査】汗の影響ってあるの?実際に試してみました!

検査を2週間に1度受けていると、ふとした疑問が湧いてくることがあります。
そのひとつが「汗って毛髪ミネラル検査の結果に影響するの?」ということ。

もちろん、これまでにお客様からそのような問い合わせをいただいたことはありません。
でも、ふと気になってしまったのです。

■ 運動後のナトリウム・カリウム、どうなん??

ナトリウムやカリウムの数値が高めで、まぁ毎日運動してるし、「これはミネラルコルチコイドの影響かも?」なんて考えていました。

でも、ふと思ったんです。
「汗って髪につくよね? それ、影響しないの?」

汗には、ナトリウムカリウムといったミネラルがに含まれています。これらが髪に付着し、そのまま検査サンプルになると、本来の体内のミネラル状態とは異なる結果が出てしまうのではないかという懸念は、やっぱり思ってしまいます。

■ 実験してみました!

気になったら、試してみるのがいちばん!

ということで、走る前と走った後に髪を切って、毛髪ミネラルを比較してみました。
(スタッフにはチョコレートを餌にお願いしました…笑)

スタッフ曰く「汗でまとまってて、逆に切りやすかった」とのこと。
なるほど、美容室でも霧吹きで髪を濡らすのと同じですね。

■ 検査条件について

  • 同じ日に採取した髪の毛(走る前の髪と20分走ってドロドロに汗のついた髪)
  • 長さは1cm(現在、水銀負荷試験のため)
  • 洗浄は通常通りに実施

※ 毛髪検査は前処理として洗浄を行いますが、「汗のミネラルが完全に落とせているかどうか」は、確実な保証があるわけではありません。

■ 結果はこちら!

ミネラル走る前 μg/g走った後 μg/g
ナトリウム155147
カリウム10073

ナトリウムはほぼ変化なし(誤差の範囲)

カリウムはやや減少? でもこれは部位の差かもしれません

ちなみにこのデータはナトリウムが高値、カリウムは基準ギリギリのデータでした。高!!

■ 考察

今回の結果からは、汗による毛髪へのミネラル(ナトリウム、カリウム)付着が、検査結果を著しく上昇させる可能性は低いという示唆が得られました。特に、汗で高くなると期待されていたナトリウムがほとんど変動しなかったのは、予想外であり、興味深い点です。

正直、もっと劇的な変化、10倍とか20倍とかを期待していたんですが……残念!

しかしこれは毛髪検査における洗浄処理が、表面に付着したミネラルを効果的に除去しているとも考えられます。あるいは、汗として排出されたミネラルが、毛髪の内部構造にまで入り込んで測定値に影響を与えるほどではない、という見方もできるかもしれません。

ただし、これはあくまで「N=1」のデータ。(一人だけのデータ)
何度か繰り返して、一貫した傾向が見られれば、もっと面白い考察ができるかもしれません。

毛髪ミネラル検査、自分はどうなんだろう、と試してみたい方はこちらからお申込みいただけます↓

牡蠣を5年間毎日食べ続けた女性に起きた衝撃の健康被害とは?

先日、日本テレビの『ザ!世界仰天ニュース』で放送された、ある女性の「牡蠣の食べすぎによる健康被害」の話がありました。個人的に大変驚いたニュースです。

その女性は、健康に良いと思って5年間、毎日牡蠣を食べ続けていたそうです。牡蠣は栄養豊富な食材として知られていますが、その行動が思わぬ結果を招いてしまいました。

なんと、「亜鉛の過剰摂取」によって「銅欠乏症」を引き起こしてしまったのです。

https://www.ntv.co.jp/gyoten/articles/324kqlc8wv54bck4xo4.html

偏った健康習慣がもたらす危険

「体に良いから」と思っていたことが、実は健康を脅かす原因になっていた——。これは誰にとっても他人事ではありません。

テレビで「納豆が良い」と紹介されると翌日スーパーから納豆が消え、「バナナが良い」「鯖缶が良い」と報じられるたびに同様の現象が起きる。
私たちはそれほどメディアの影響を受けやすく、健康に対して良いとされる情報に飛びつきがちです。

でも実際は、「これさえ食べていれば安心」というものはなく、バランスの取れた食生活こそが健康維持の基本なのです。

1日20個の牡蠣を食べていたというこの女性、5年間でなんと36,500個の牡蠣を食べていたことになります。

1日70mgの亜鉛摂取!? 驚きの数値

この女性が摂取していた亜鉛量は1日あたり約70mgとされており、これは常識を超えた量です。

参考までに:

  • 成人女性の推奨亜鉛摂取量:8mg/日前後
  • 一般的なサプリメントに含まれる亜鉛量:10mg程度
  • 日本の規制:サプリ1粒あたり15mg以下
  • 医療用亜鉛製剤「ノベルジン」:1錠あたり25~50mg、最大150mg/日まで(医師の処方のもと)

つまり、サプリですら厳しく制限されている中で、食事だけで70mgもの亜鉛をとっていたというのは驚異的なことなのです。

銅欠乏のリスクとは?

過剰な亜鉛は、体内の銅の吸収を阻害してしまいます。銅は貧血予防や免疫機能の維持など、私たちの体に欠かせないミネラルです。

この女性も、「原因不明の貧血」「歩行障害」などの深刻な症状が現れ、ようやく医療機関で「銅欠乏症」と診断されました。

健康管理に必要なのは「バランス」と「自己チェック」

このエピソードから私たちが学べることは、

  • 健康食品であっても摂りすぎは危険
  • 健康への思い込みが過剰摂取を招くことがある
  • 「これしか食べない」ではなく、多様な食品をまんべんなく摂ることが重要

ということです。

「私は大丈夫かしら?」と思われた方には、毛髪ミネラル検査の活用もおすすめです。日々のミネラルバランスの状態を知ることで、より健康管理に役立てることができます。

自分の栄養バランスが気になる方へ

毛髪ミネラル検査では、体内のミネラルや有害金属などを非侵襲的に確認できます。

「知らず知らずのうちに栄養バランスが偏っていないか知りたい」
「有害金属がたまっていないか調べたい」

という方は、ぜひこちらから毛髪ミネラル検査をお申込み下さい。

カリフォルニア産のお米「カルローズ」を買ってみた!

〜そして、元素分析へ〜

お米が切れてしまったある日、近所のスーパーで目にとまったのは、今話題のカリフォルニア産のお米「カルローズ」。
日本産のお米が4000円ほどする中、カルローズは3150円。
決して値段につられたわけではないのですが、「どんな味なんだろう?」という純粋な好奇心で、手に取ってみました。

袋を開けた瞬間の印象は、「香りが少ない?」というもの。
ただ、私は嗅覚に絶対の自信があるわけではないので、あくまで個人的な感想です。

そして、炊いて食べてみた感想はというと――

「うん、これがカリフォルニア産って知ってるから“違うかも”って思う程度」
米粒がやや小さく感じられましたが、当たり前ですが「ちゃんとお米」です。
もしも外食先で出てきたら、私はきっと気づかないと思います。
(というか、会社では「お前は何食べても旨いって言うよな」と言われるくらい、幸せな舌の持ち主です。参考になるかどうかは微妙です…)

でも!
「ちょっと違うかも」と感じたこのお米、本当に成分的に違うの?
――というわけで、やっぱりここは当社の本領発揮。

カルローズの元素(ミネラル)分析、してみました!

水が違えば育ちも違う。
土壌が違えば当然、ミネラルバランスも変わってくるはず。
そんな期待とワクワクを込めて、分析してみた結果は……?


味覚だけじゃわからない、科学の目から見る「カルローズ」。
さぁさぁさぁどうなんだい!!

日本 VS アメリカの結果やいかに!!

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ドーン!!

元素日本 白米平均ng/gカルローズng/g
ナトリウム7,0096,194
カリウム890,108916,592
マグネシウム364,190262,468
カルシウム44,34743,214
リン1,454,9781,176,638
セレン3530
クロム7.68.5
モリブデン1,045604
マンガン8,38910,668
2,5632,323
2,2441,970
亜鉛17,9349,562
カドミウム25.54.1
水銀2.30
1.10.9
ヒ素228128
アルミニウム159342
リチウム0.73.5
バナジウム0.30.9
バリウム14924

主要なミネラル(カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)には大きな差はなかったものの、いくつか明確な違いが見られました!

●亜鉛:カルローズは低い

ま驚いたのが亜鉛の数値。カルローズは日本のお米に比べて約半分と、かなり低い結果になりました。私たちが分析した中では、日本産のどのお米よりも少ない数値でした。

●カドミウム:カルローズは低め

逆に、有害元素として知られるカドミウムはカルローズのほうが低め。これはポジティブなポイントです!

●リチウム:カルローズが高い!

なんと日本のお米と比べて約5倍! カルローズはリチウム含有量が圧倒的に高かったんです。ウム!カルローズなんと5倍!日本のどの米よりも断トツに高い!

●バナジウム:こちらも高い!

バナジウムもカルローズのほうが約3倍多く含まれていました。

●バリウム:日本の方が多い

逆にバリウムに関しては日本のお米の方が高い結果になりました。

普段なにげなく食べているお米も、こうして“元素レベル”で見てみると違いがあって面白いですね。
味や見た目だけではわからない、お米の個性が浮き彫りになりました。

「カルローズって実際どうなの?」という方の参考になればうれしいです!

「日本のお米が好き」という気持ちも、もちろん大切に

やはり日本人として、日本のお米に誇りや愛着を持っている方は多いと思います。

「やっぱり日本のお米が安心でおいしい」と感じている方のお気持ちは、とてもよくわかります。
長い歴史と丁寧な栽培、そして品種改良によって培われた日本のお米文化は、世界に誇れるものです。

ただ、最近気になるニュースがありました。

話題になった「あきたこまち」のカドミウム検出

2025年4月、秋田県産あきたこまちから、なんと870ng/gを超えるカドミウムが検出されたという報道がありました。
これは国の基準値(0.4ppm = 400ng/g)を2倍以上も超える値です。

読売新聞(2025年4月4日)

比較してみると…

今回私たちが分析したカルローズのカドミウム量はわずか4.1ng/g

つまり、話題になったあきたこまちの約220倍もの差がある、という結果になりました。

もちろん、こうした極端な数値がすべての日本のお米に当てはまるわけではありません。
しかしながら、土壌や栽培条件の違いが元素レベルの差につながることが、こうした事例からも見えてきます。

「安心」は多角的に見る時代へ

「国産だから安心」「外国産だから不安」といった単純な図式ではなく、科学的根拠に基づいた多角的な視点で、食品を見ていくことがこれからますます大切だと感じています。

カルローズにはカルローズの良さがあり、日本のお米には日本のお米の良さがあります。
そしてどちらも、正しく知ることが、安心や信頼につながっていくのだと思います。

もし、普段からこだわりのお米をお召し上がりになっていて、
それでもなお「カドミウムやヒ素などの有害金属が少し気になる…」という方には、
当社で行っているお米の有害金属(カドミウム・ヒ素)分析をおすすめしております。

ご興味のある方は、ぜひこの機会にお申し込みください。
お申込みはこちら

【元素分析結果発表】家庭菜園ほうれん草 vs スーパーのほうれん草!

以前、ド素人が挑戦した家庭菜園で、見事ほうれん草を収穫したというご報告をしました。

▼そのときの様子はこちら

そしてこのたび…
ようやく元素分析の結果が出ました!! 🎉

気になるミネラル、有害金属、どうなった!?

分析の比較対象はこちらの3種!

  • 左:スーパーで購入したほうれん草
  • 中:家庭菜園で育てたほうれん草
  • 右:家庭菜園(ビタミンC添加)で育てたほうれん草

ちなみに右端のビタミンC入りほうれん草、見た目がほんのり茶色っぽいです。もっと鮮やかな緑になると思っていたのに…これはビタミンCを与えすぎて酸化してしまったのかも?

いや〜ほんと、家庭菜園って勝手がわかりませんね。。

ビタミンCを入れたのは、虫よけや発芽率アップに効果があるという話を聞いて試したのですが、冬だったのでどちらも虫は出ず。

発芽も若干早かった気がするけど、最終的にはどちらももっさり育ちました。 むしろ、ビタミンCなしの方が成長は良かったかも…?過ぎたるは及ばざるがごとし、ですね。

左、ビタミンC無  右、ビタミンC有

分析方法と注意点

今回の元素分析には当社のICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)を使用しています。
ただし、冷蔵庫での保管期間が少し長くなってしまい、しおれてしまったため水分量は実測できず、食品成分表の水分量92.4%を基準として計算しています。
あくまで参考値としてご覧ください!

【分析結果】100g中の含有量(換算値)

元素スーパー家庭菜園家庭菜園(VC+)
カリウム(mg)558610670
マグネシウム(mg)627479
カルシウム(mg)484967
リン(mg)4186149
クロム(µg)0.993.042.85
モリブデン(µg)13.91.62.2
マンガン(mg)0.130.931.45
鉄(mg)0.690.720.77
亜鉛(mg)0.560.751.15
カドミウム(µg)1.72.94.2
鉛(µg)0.41.01.2
アルミニウム(mg)0.540.290.34

気になるポイントをピックアップ!

  • 亜鉛:なんと!ビタミンC入りほうれん草で2倍に増加!すごい!
  • カドミウム:これも2.5倍…ちょっとびっくり(亜鉛が多いとカドミウムも多いことがあるようです)
  • :3倍だあああああああああ!!
  • モリブデン:なぜかスーパー品が10倍ほど多い。なぜ??
  • マンガン:家庭菜園の方が圧倒的に多い!嬉しい!
  • リン:ビタミンC入りのほうれん草が3倍程度高い、なぜ?

鉄が少ないのはなぜ?

食品成分表では鉄は2.0mg/100gとされていますが、今回の分析では約1/3の量でした。

この違いは本当に低いのか、または分析装置の違い前処理方法による可能性があります。
鉄の定量法は、フェナントロリン吸光光度法、フレーム原子吸光法、ICP発光分光分析などいくつかあり、今回はICP-MSを使用しています。

結論!

家庭菜園のほうれん草、なかなかやるじゃないか!
ミネラルも豊富、条件次第ではプロが作るスーパー品をしのぐ数値も!

とはいえ…やってみてわかる、家庭菜園の根気のいること!
今回初挑戦してみて、農家さんの凄さを本当に痛感しました。

この投稿が、これから家庭菜園を始める方や、ミネラル分析に興味のある方の参考になればうれしいです!

ちなみに味は?

収穫したほうれん草は味噌汁、お浸しで食べました!自分で作ったからとか抜きでちゃんとほうれん草の味でした!おいしかった!!

粉ミルクの鉄分は母乳の約40倍? 含有量の違いと吸収率

「粉ミルクは母乳の成分に近づけて作られている」という印象をお持ちの方も多いと思います。確かに、それは粉ミルクの開発における重要な方針のひとつだと思います。

しかし、ミネラル成分に注目すると、粉ミルクには母乳よりもはるかに高濃度で含まれているものがあることがわかります。

特に「鉄」については、その差が顕著です。

母乳と粉ミルクの鉄分比較

当社で測定した母乳中の鉄の平均濃度は0.23mg/Lでした。
これは、厚生労働省の検討会が参考にしているアメリカ・カナダの食事摂取基準における母乳中鉄濃度(0.35mg/L)と比較しても大きな乖離はなく、自然なばらつきの範囲といえるでしょう。

ちなみに、牛乳に含まれる鉄分も約0.2mg/L程度とされており、哺乳類の乳に含まれる鉄の濃度はおおむねこのあたりであることがわかります。

では、粉ミルクの鉄分はどの程度含まれているのでしょうか。

以下に、主要な粉ミルク製品の鉄含有量(13.5%調乳液として計算)を示します:

  • ほほえみ:約8.1mg/L
  • ぴゅあ:約8.4mg/L
  • アイクレオ:約9.5mg/L

※すべて13.5%調乳液として算出。正確な調整率は商品により異なる可能性があります。

こうして見ると、粉ミルクの鉄濃度は母乳の約40倍にも達していることがわかります。

なぜこんなに差があるのか? 吸収率の違いに注目

この大きな差は「粉ミルクは鉄を多く含みすぎていて危険なのでは?」と感じさせるかもしれません。
しかし、これは吸収率の違いを補うために設計されたものと考えられます。

一般に、母乳中の鉄の吸収率は20~49%とされており、これに対し粉ミルクの鉄の吸収率は5%程度と言われております。

つまり、母乳に含まれる少量の鉄でも高い吸収効率によって赤ちゃんの体に十分な鉄が取り込まれるのに対し、粉ミルクの場合は吸収されにくいため、あらかじめ多めに鉄を配合しておく必要があるのです。

実際の鉄吸収量をざっくり計算してみると:

  • 母乳:0.23mg/L × 49%(吸収率)= 0.12mg/L 吸収
  • 粉ミルク:8.6mg/L × 5%(吸収率)= 0.43mg/L 吸収

吸収量にしても、粉ミルクの方がやや多くなるよう調整されています。

鉄の高濃度には理由がある

粉ミルクに含まれる鉄分が母乳と比べて極めて多いのは、その背景に吸収率の違いというしっかりとした理由があります。

赤ちゃんにとって鉄は、貧血予防や脳の発達に欠かせない重要な栄養素。それを安全かつ効果的に補えるよう、粉ミルクは鉄が不足しないように設計されているのだとわかりました。

鉄の耐用上限量について

現在のところ、乳児に対する鉄の耐容上限量(UL:Tolerable Upper Intake Level)は設定されていません。その背景には、過剰摂取による明確な有害性が十分に確立されていないことがあります。

しかしながら、過去の報告の中には、過剰な鉄投与により身体への影響が示唆されている例も存在します。たとえば、低出生体重児に対して1日13.8mgの鉄を28日間投与した研究では、その後の20週時点において、赤血球内のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性の低下が認められました。さらに、鉄の過剰摂取によって亜鉛や銅といった他の必須ミネラルの吸収が阻害される可能性についても報告されています。これらのミネラルは、成長や免疫機能、酵素活性などにおいて極めて重要な役割を果たしており、鉄とのバランスが乱れることで健康に影響を及ぼすリスクが懸念されます。

しかし、粉ミルクの場合、13.8mgの鉄分を摂取するにはおよそ1.5Lもの量を飲まなければなりません。そのため、仮に100%粉ミルクで育てていたとしても、実際にこの量を超えて摂取することはほとんどないと考えられます。

※新生児の1日の哺乳量は0.78Lとされています。

ただ含有量を見てみると、粉ミルクには大人が摂取すべき量とほぼ同じくらいの鉄分が含まれているのだということを、改めて実感しました。

鉄の目安量について

あくまで目安量ですが、0.5mg/日が設定されています。

しかし平均的な母乳であれば1.5L-2L飲まないとその量に達しません。

アメリカ・カナダの食事摂取基準の採用値(0.35mg/L)に基準哺乳量(0.78L/日)を乗じて得られる0.273mg/日を丸めた0.5mg/Lを目安量としているようです。

だいぶ丸めてますね。丸めて約2倍になってます。0.3mgでよかったのでは…?

調べた背景について

今回、「母乳と粉ミルクに含まれる鉄量の違い」について調べてみようと思ったきっかけは、毛髪ミネラル検査の結果では、全年齢層の中で、0歳児における鉄の濃度が最も高いという傾向が見られたことです。

毛髪ミネラル検査は体内のミネラルバランスを評価するひとつの方法であり、必ずしも体内全体の状態を直接示すわけではないとはいえ、興味深い指標となります。

「なぜ0歳児の鉄濃度が特に高く出るのか?」という疑問が湧いたことをきっかけに、新生児期の鉄摂取源である母乳や粉ミルクに注目してみることにしました。

特に粉ミルクに含まれる鉄分が母乳と比較して非常に高い(場合によっては40倍以上)という結果に、「これは過剰摂取のリスクに関わるのではないか」という不安も一瞬よぎりました。しかし、その一方で、鉄の吸収率や赤ちゃんの発育における鉄の必要性などを調べるうちに、その配合には明確な栄養学的意図があることがわかってきました。

こうした調査の中で得られた情報を整理し、少しでも同じような疑問を持つ方のお役に立てればと思いまとめました。

ご参考になれば幸いです。

母乳のミネラル分析にご興味があればこちらからお申込みください。

カルシウムとマグネシウムのバランスについて【考察】

よくカルシウムとマグネシウムの比は2:1~1:1が理想である、という意見を目にします。

パラパラと栄養摂取基準や測定データを見ながら、果たしてそれは成長期でもそうなのだろうか、とふと疑問に思いました。

今回検討したのは成長期におけるカルシウムとマグネシウムのバランスです。

結論からですが、成長段階によって最適な比率が異なるのではないかと考えられます。例えばですが母乳や牛乳の比率について、以下のデータが示されています。

母乳のCa:Mg比 → 6.6:1(カルシウムが多い)(当社の分析による)

牛乳のCa:Mg比 → 11:1(カルシウムが多い)

母乳に含まれる栄養は赤ちゃんにとっては適した栄養バランス食のはずです。その母乳の比率がマグネシウムに対してカルシウムがかなり高いのです。これはつまり赤ちゃんの成長に適したバランスになっているのではないでしょうか。

また栄養摂取基準においてカルシウムとマグネシウムの比率は以下となっております。

男性

1歳~2歳 推奨量 Ca : Mg = 6.4 : 1

3歳~5歳 推奨量 Ca : Mg = 6 : 1

6歳~7歳 推奨量 Ca : Mg = 4.6 : 1

8歳~9歳 推奨量 Ca : Mg = 3.8 : 1

10歳~11歳 推奨量 Ca : Mg = 3.3 : 1

12歳~14歳 推奨量 Ca : Mg = 3.4 : 1

15歳~17歳 推奨量 Ca : Mg = 2.2 : 1

18歳~29歳 推奨量 Ca : Mg = 2.4 : 1

30歳~49歳 推奨量 Ca : Mg = 2.0 : 1

更に犬猫にいたっても同様に(AAFCO)

成長期の犬  Ca : Mg = 40: 1

成犬 Ca : Mg = 6.6: 1

成長期の猫 Ca : Mg = 20: 1

成猫 Ca : Mg = 7.25: 1

人では15歳以降が2:1とほぼ理想とされる比となっておりますが、成長期はカルシウムの推奨量はマグネシウムと比べて割合が高くなっております。犬、猫も割合は異なりますが、成長期にカルシウムの量が多いということは同じです。

このことから、成長期にはカルシウムの需要が高く、母乳や牛乳のようなカルシウムの割合が多いバランスが適している可能性が高い と考えられます。

【出版】自閉症児の体内ミネラルの不均衡

ら・べるびぃ予防医学研究所で顧問を務める安田寛(薬学博士)の本が出版されました。

Imbalances of Body Minerals in Children with Autism

ー自閉症児の体内ミネラルの不均衡ー

安田の長年にわたる亜鉛と自閉症児に関する研究の集大成です。

本は英語で書かれたものすが、ご興味のある方はAmazonからお求めいただけます。

概略

自閉症スペクトラム障害(自閉症)や注意欠陥/多動性障害(ADHD)などの神経発達障害と診断される子どもの割合は、ここ数十年で増加しています。例えば、自閉症は50人に1人の割合で子どもに診断されています。

本書の研究論文は、特に0-3歳の自閉症障害のある子どもたちにおける、必須ミネラルである「亜鉛とマグネシウム」の欠乏と一部の有害金属の負荷に注目しています。これは、神経発達障害とその治療において「乳児期の時間枠」または「人生最初の1,000日(受胎後1000日)」と呼ばれる重要な期間の存在を示しています。

第1章では、安田らが1,967人の自閉症児(0-15歳の男児1,533人、女児414人)の毛髪中の亜鉛濃度を調べたメタロミクス研究の結果を示し、584人(29.7%)が亜鉛欠乏症に苦しんでいることを実証しています。0-3歳の乳幼児グループにおける亜鉛欠乏の割合は、男児で43.5%、女児で52.5%と推定されています。これらの発見は、乳幼児期の亜鉛欠乏が自閉症の病因にエピジェネティックに寄与していること、そして栄養学的アプローチがその予防と治療に新たな希望をもたらす可能性があることを示唆しています。

第2章では、自閉症障害のある1,967人の子どもたちの毛髪中の26種類の微量元素濃度を調べています。584人(29.7%)が亜鉛、347人(17.6%)がマグネシウム、114人(5.8%)がカルシウムで欠乏していることがわかりました。他の必須金属では2.0%以下でした。ミネラル欠乏の発生率は0-3歳の乳幼児で高く観察されました。一方、339人(17.2%)がアルミニウム、168人(8.5%)がカドミウム、94人(4.8%)が鉛の高負荷に苦しんでおり、水銀とヒ素の負荷は2.8%以下でした。これらの発見は、乳幼児期の亜鉛とマグネシウムの欠乏や有害金属の負荷が、自閉症障害の環境要因としてエピジェネティックに主要な役割を果たしているように見え、メタロミクスアプローチが神経発達障害の早期スクリーニングと予防につながることを示唆しています。

第3章では、1,967人の自閉症児(0-15歳の男児1,533人、女児414人)のメタロミクス研究の結果をまとめ、乳幼児期のミネラルバランスの乱れ(亜鉛とマグネシウムの欠乏、アルミニウム、カドミウム、鉛、水銀、ヒ素などの有害金属の高負荷)の自閉症の病因におけるエピジェネティックな役割についての最近の理解の進展を議論しています。したがって、メタロミクス分析は自閉症児の早期評価と介入に有用であると期待されています。重度の亜鉛とマグネシウムの欠乏、有害金属の負荷、ナトリウム/カリウムのアンバランスなど、様々なミネラルバランスの乱れに苦しむ個人の典型的な自閉症メタローム・プロファイルが図で示されています。

第4章では、77組の子供/母親ペアのボランティアグループを対象とした別のメタロミクス研究論文を報告しています:「乳幼児/子どもとその母親における有害金属負荷の評価のためのメタロミクス分析:早期評価と介入が不可欠」が引用されています。子どもの水銀濃度は母親と同程度で、子どもと母親の間に高度に有意な密接な相関が観察されました。鉛、カドミウム、アルミニウムについては、子どもの平均蓄積レベルは母親の約3倍高く、一部の個人、特に乳幼児では母親の数十倍高いレベルでした。対照的に、亜鉛やマグネシウムなどの一部の必須金属は母親よりも有意に低く、29人(37.7%)の子ども被験者が亜鉛欠乏と推定されました。さらに、子どもたちにおいて亜鉛と鉛の間(r = -0.267、p = 0.019)、マグネシウムとヒ素の間(r = -0.514、p = 0.0001)に有意な逆相関が観察されました。乳幼児における有害金属の高負荷と拮抗作用のある必須金属の欠乏は深刻な懸念事項であり、そのような被験者に対する早期評価と介入が彼らの神経発達と健康に有益であると考えられます。

第5章では、2,550人の自閉症児を対象とした最近のメタロミクス研究に基づく展望論文「神経発達障害の早期評価と個別化介入のためのメタロミクス分析」(2022年発表)を引用しています。この総説論文は、メタロミクス研究の決定的な発見をまとめ、神経発達障害の病因における乳幼児期/胎児期の様々なミネラルバランスの乱れ(亜鉛とマグネシウムの欠乏、有害金属の負荷だけでなく一部の必須金属の過剰)のエピジェネティックな役割についての理解を深めています。個々の子どもにおける様々なミネラルバランスの乱れ(または恒常性の乱れ)の早期評価と介入が、近い将来、神経発達障害および併存する免疫障害の証拠に基づく個別化治療への道を開くことを期待しています。

付録
第6章「乳幼児と高齢者は亜鉛欠乏になりやすい」
亜鉛のヒトの健康にとっての重要性は1960年代初頭から認識されていますが、今日、先進国では亜鉛欠乏についてあまり懸念されていません。この研究では、28,424人の日本人被験者(女性18,812人、男性9,612人)の毛髪中の亜鉛濃度を測定し、1,754人(6.17%)が対照参照範囲の2標準偏差(86.3 ppm)以下の亜鉛濃度を示し、亜鉛欠乏症と判定されました。成人の亜鉛欠乏の有病率は加齢とともに増加し、80代で最大19.7%に達し、90歳以上では3.4%に減少しました。0-4歳の乳幼児における亜鉛欠乏の割合は、男児で36.5%、女児で47.3%でした。これらの発見は、乳幼児と高齢者が亜鉛欠乏になりやすいこと、そして亜鉛欠乏への介入が正常な人間の発達、健康、長寿にとって必要であることを示唆しています。

第7章「有害金属の2つの年齢関連蓄積プロファイル」
乳幼児から高齢者までの28,424人の日本人被験者の毛髪サンプルにおける5種類の有害金属濃度をICP-MSで測定しました。毛髪の水銀濃度は、両性において高度に有意な年齢相関増加(r = 0.341、p 女性)を示しています。ヒ素も水銀と同様の蓄積プロファイルを示し、成人における年齢依存性と性差が見られました。対照的に、カドミウム、鉛、アルミニウムは別のタイプの蓄積プロファイルを示しました:両性において0-3歳の乳幼児で最も高い負荷レベルが観察されました。さらに、カドミウムは高齢女性に蓄積する特性を持ち、年齢依存性(r = 0.134、p 男性)が見られました。これらの発見は、有害金属がその蓄積プロファイルに基づいて2つの家族に分類されること、そして成人で年齢依存的に蓄積する水銀、ヒ素、カドミウムの3元素が加齢過程で役割を果たし、それらの高負荷が加齢の加速につながる可能性があることを示唆しています。加齢の分子的・細胞的メカニズムのさらなる理解は、高齢者の医療ケアを改善するだけでなく、加齢プロセスを遅らせるための実現可能な解決策を見出す希望をもたらす可能性があります。

ら・べるびぃ予防医学研究所、「ミネラル講座」を始めます。

いつも「ら・べるびぃ予防医学研究所」のブログをご覧いただき、ありがとうございます。

この度、ら・べるびぃ予防医学研究所では新たに「ミネラル講座」を開始することとなりました。

私たちは、25年間にわたりミネラルや有害金属の分析を行ってきた経験を活かし、教育研修事業を手掛けるグリーンヒルキャリアとの共同制作による本講座を提供いたします。

これまではお電話等でミネラル検査に関するお問い合わせにお答えしてまいりましたが、「ぜひ講座にしてほしい」といった嬉しいお声を多くいただき、このたび具体化する運びとなりました。

講座制作の背景

検査会社として講座作成のノウハウがない私たちは、教育研修事業を手掛けるグリーンヒルキャリア様のご協力を得て、ようやく皆さまにお届けできる内容を完成させました。当初の予定より半年遅れとなりましたが、徹底したファクトチェックと改善を経て、納得のいく質を追求しました。

実は、ミネラルについて体系的に学ぶ機会は少なく、義務教育や専門学校、さらには医大でも扱いが限られています。そのため、日常生活や事業活動に役立つ知識を分かりやすくお届けできるよう心がけました。

講座の目的

この講座では、以下のことを目指します:

  • ミネラルや有害金属に関する知識をつけて生活に活かす。
  • 健康事業に活用できるノウハウを身に付ける。

ミネラル講座の概要

講座はオンラインで行うため、ご自宅やお好きな場所で、好きな時間に学ぶことができます。ネット環境があれば、パソコン、スマホ、タブレットなどから受講可能です。

3つの学習コース

  1. 基礎知識編
    ミネラルを学ぶ前に知っておくべき基本的な内容
    • 履修時間:約9時間
  2. ミネラル編
    必須ミネラル16種類の詳しい解説
    • 履修時間:約25時間
  3. 有害金属編
    有害金属や懸念される金属について
    • 履修時間:約20時間

各コースは個別でのお申込みも可能です。基礎知識をすでにお持ちの方は、ミネラル編や有害金属編からの受講も柔軟に選べます。

詳細については、下部画像をクリック、タップしてご覧ください。

ぜひこの機会に、ミネラルの世界を深く学び、新しい知見を日々の生活に活かしてみませんか?
皆さまのご参加を心よりお待ちしております。

愛犬・愛猫爪メタル検査モニター大募集!

家族に負担のない検査を目指して。

「被毛がない」「抜けずらい」などのお声があり、犬猫の爪メタル検査を開始いたします。

爪も被毛と同じ非侵襲性で負担がありません。

有害金属などの蓄積を把握し、ごはんや環境の見直しにご活用いただけます。

〇分析項目(11項目)

水銀(Hg)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、タリウム(Tl)、アンチモン(Sb)、スズ(Sn)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)

必須性のない金属を中心に分析をいたします。

フードによっては魚原料であれば、水銀やヒ素、米原料であればヒ素やカドミウムが混入しやすくなります。

〇爪の理由

犬猫の爪は円錐状に伸び、爪母が爪で切る箇所の近くにあるため直近のデータを反映している可能性があります。※人の場合は半年ほど前のデータと考えられています。

〇検査結果

暫定基準値を作成しているため、1ヶ月以内に検査結果をアップロードいたします。

基準値については変更する可能性があります。

〇検査キットの送付

2024年8月より順次検査キットを出荷いたします。

〇申込方法

モニターのお申込みや研究の応援をしてくださるサポーターは下記にお進みください。

https://www.lbv.jp/lbv-ec/?p=1801