最近、一部報道にて「アメリカでPFAS規制が緩和された」といった表現が見られました。
このニュースをご覧になって、「あれ、PFASって規制がゆるくなったの?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、実際の内容はそう単純な話ではありません。
■ 正確にはどういうこと?
今回の動きは、
「PFASの厳しい規制値を適用するまでの期限を延長した」ことと、
「一部のPFASに対する規制案を撤回し、見直しを行う」という二つの措置が同時に発表された、というのが正確な表現です。
■ なぜ延長されたのか?
アメリカ環境保護庁(EPA)が設定したPFASの新たな規制値は非常に厳しいものでした。
これに対し、公共水道事業者や企業からは、
- 浄化装置の設置や運用が間に合わない
- 代替物質への切り替えの準備が進まない
といった声が多数寄せられました。
そこでEPAは、PFOAおよびPFOSの規制値(それぞれ4ppt)はそのままに、適用期限を2029年から2031年へ延長しました。
これは規制の緩和ではなく、「厳しい基準を守るための現実的な猶予措置」と言えるものです。
■ 規制対象となるPFASと対応の違い
今回のEPAの発表では、以下のような対応が取られています
PFAS物質名 | 規制状況 |
---|---|
PFOA・PFOS | 規制値は維持(4ppt)、適用期限を2029年 → 2031年に延長 |
PFNA・PFHxS・GenX(HFPO-DA) | 規制案を一時撤回、再評価を経て2026年に最終判断予定 |
撤回といっても、「もう規制しません」という意味ではなく、
「現時点で十分なデータや準備体制が整っていないため、科学的な再評価を行った上で2026年に正式な判断をする」という方針です。
■ PFAS問題への国際的な関心は継続中
この延長措置や見直しは、あくまで現実的な対応のための調整期間です。
PFASが健康や環境に与える影響への懸念は、世界的に引き続き高いままです。
今後も、PFAS規制はより厳格化の方向に進んでいくと見られており、企業や自治体、研究機関には、長期的な対応力がますます求められていくと考えられます。