医療の質、日本は195カ国中11位

メディカルトリビューンの記事によると、医療の質ではトップ11位。
国民皆保険制度の恩恵と弊害について考えさせられます。

世界疾病負担研究(GBD)2015

Medical Tribune 17.05.25

米・University of Washington、Institute for Health Metrics and Evaluation(IHME)のChristopher J. L. Murray氏らは、世界疾病負担研究(GBD)2015のデータを用いて1990~2015年の世界195カ国・地域における医療の質およびアクセスの変化を新規の指標により定量化。「1990~2015年に世界全体では医療へのアクセスと質は改善していたが、国・地域間の格差はますます拡大していた。2015年時点で日本は195カ国中11位であった」とLancet(2017年5月18日オンライン版)で報告した。

リスク調整原因別の死亡率からHAQを算出

Murray氏らは、質の高い医療が提供されていれば回避できたと考えられる回避可能死亡率を32の疾患分類ごとに求め、これを基に医療へのアクセスと質を評価する定量的指標「Healthcare Access and Quality(HAQ)インデックス(範囲0~100)」を開発した。その際、脳卒中や心疾患など特定の疾患における回避可能死亡率を従来の方法で算出すると、医療へのアクセスと質以外に、食事内容やBMI高値、身体活動状況などのリスク因子への曝露レベルの違いが反映されるとの指摘があった。そこで、同研究では行動・環境リスクへの曝露の影響を極力排除するため、まずリスク調整原因別に死亡率を算出し、これを基にHAQインデックスを算出した。

167カ国で有意な改善

世界195カ国・地域のHAQインデックスの平均値は1990年の40.7から2015年には53.7に、日本では78.3から89.0に上昇、167カ国で有意な改善が確認された(図)。

図. 世界195カ国・地域における医療へのアクセスと質(HAQインデックス)

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しかしその一方で、HAQインデックスが最も高い国と最も低い国との差は1990年の61.6ポイント(範囲23.1~84.7)から、2015年には66.0ポイント(同28.6~94.6)に拡大していた。

2015年時点でHAQインデックスが最も高かったのはアンドラ公国の94.6、次いでアイスランドの93.6、スイスの91.8の順で、6位のオーストラリアを除き、上位10位を西欧諸国が占めていた。日本は11位、カナダは17位、スロベニアは18位と、これらの国は最高十分位に入っていた。英国は30位(HAQインデックス84.6)、米国は35位(同81.3)に位置していた。最もHAQインデックスが低いグループには、サハラ以南アフリカ諸国、アフガニスタン、パプアニューギニアなどが含まれていた。

1990~2015年に韓国、トルコ、ペルー、中国、モルディブは、HAQインデックスの著明な上昇(それぞれ24.1、24.9、23.7、24.7、29.6)が認められた。その要因として医療システムへの資金増加、医療提供者の責任感と管理遂行力などが考えられるが、詳細な分析は今後の課題であるという。

日本は経済発展に見合った医療政策が実現

さらに同研究では、社会・人口統計学インデックス(SDI)を加味して、当該国の経済的発展段階で実現可能と想定されるHAQの最大値をHAQフロンティアとして算出。HAQインデックスとHAQフロンティアとの差を医療へのアクセスと質の潜在的な改善余地として数値化し、各国の医療政策当局の問題意識を高め、具体的政策策定の手がかりとなることを目指した。

日本の2015年時点のHAQフロンティアは90.4で、HAQインデックスとの差は1.3ポイントと小さく(195カ国の平均は20.1)、1990年時点の6.2ポイント(HAQインデックス78.3、HAQフロンティア84.5)に比べてかなり改善しており、「医療へのアクセスおよび質に関しては経済発展に見合った医療政策が実現していることがうかがえる」としている。

https://medical-tribune.co.jp/news/2017/0525508629/

投稿者:

ら・べるびぃ予防医学研究所

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