鉛製の銃弾 鉛汚染はわんこのおやつにも?

鉛の毒性は、有害金属の中でもトップクラス。

でも、安価で加工しやすいため、世界中で古くから利用されてきました。

鉛製の銃弾による鉛汚染

猟に使われる鉛製の銃弾は、シカなどの捕獲によく使われているそうです。

有害鳥獣対策としてシカの猟は行われていますが、そのときに使われる鉛製の弾丸が、死んだシカの体内に残り、放置されたシカの肉をワシなどの猛禽類が食べ、鉛中毒になることが問題となっています。

野鳥に広がる鉛中毒

鳥類の鉛中毒が問題となったのは1990年代以降。

北海道では、白鳥やガンが鉛中毒によって大量死しました。

水鳥は消化を助けるために小石を飲みこむ修正があります。そのため、環境に放置された鉛弾を誤って飲みこみ、中毒を起こします。

また、国の天然記念物で、絶滅危惧種であるオジロワシをはじめとする猛禽類は、死んだシカの肉を食べ、鉛中毒になることが多いそうです。

鉛弾の規制は?

近年、鉛を使わない弾への移行が世界的に推奨・義務化されつつあります。

北海道では、10年以上前から全国に先駆けて鉛製の銃弾の規制をしています。

環境省では、2030年までに鉛弾による猛禽類を含む全ての鳥類の鉛中毒をゼロにするという目標を表明し、2025年から段階的な規制を開始します。

シカなど哺乳類の狩猟は規制外

鉛弾の規制は、鳥類保護の観点から行われているもので、現時点では、シカなど哺乳類に対する鉛弾の全国的な使用禁止は行われていません。

しかし、環境省は、鉛による環境汚染や、肉の汚染問題(食肉汚染)を考慮し、鉛を使わない弾への切り替えを推奨しています。

また、地方自治体や一部の猟友会によっては、自主的な申し合わせや、特定の猟場での鉛フリー弾の使用奨励・義務付けが行われているところもあります。

鳥類だけの問題ではない

犬などのペット向けに鹿肉のジャーキーなども販売されていますが、そのシカの猟に鉛弾が使われているのか表示はほとんどありません。

鉛弾で仕留められたシカの肉は鉛に汚染される可能性が非常に高く、それが問題視されています。

鉛弾は、動物の体内で高速で筋肉や骨などの組織に衝突すると、非常に細かく砕け散ります。鉛は比較的柔らかい金属なので、特に破砕しやすい性質があります。

この砕けた鉛の微細な破片は、弾丸が貫通した傷口の周囲だけでなく、弾丸が通過した軌道や、その衝撃で圧力がかかった周辺の広範囲の肉の中にまで飛散します。

また、動物の体内で鉛片が溶け、腸内や肉の組織に鉛が拡散することもあります。

鉛の毒性はとても強い

鉛には閾値(いきち)がありません。

閾値とは、このくらいの量までならとっても健康に問題ないです、という量のこと。

その閾値がないということは、たとえ少量であっても鉛が健康に影響しないとは言えないということです。

鉛の毒性

鉛は強い毒性を持ち、特に造血系、神経系、腎臓に悪影響を与えることがわかっています。

特に脳と神経系に大きな影響を与え、子どもの知能指数低下、多動性、衝動性、注意力低下、情緒不安定などがメンタルヘルスへの影響のほか、子供時代の鉛の濃度が高いほど、誠実性が低く、神経症的傾向が強いという研究もあります。

また、飲食物から鉛を摂取した際の消化管からの吸収量は成人が5~10%であるのに対し、小児では約40%と高くなっています。

発育中の神経系は鉛による障害を受けやすいため、胎児や乳幼児への影響が懸念されています。

20年以上体内に残ります

ヒトでの鉛の生物学的半減期は約20年。

「生物学的半減期」とは、体内に取り込まれた物質が、代謝や排出などにより半分になるまでの時間のことです。

体内に取り込まれた鉛は90%以上、骨に沈着します。そのため、体内から排泄されにくく、長期間にわたり健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

環境保護と生物多様性の保全、そして人間やペットの健康を守るために

鉛製銃弾の規制は、環境保護と生物多様性の保全、そして人間やペットの健康を守るために不可欠な取り組みです。

完全に鉛の弾を使わないようにするには、無鉛弾へのスムーズな移行を促すための施策がより一層、求められています。

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