ビタミンA


    ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸及びこれらの3-デヒドロ体と、その誘導体の総称で、脂溶性ビタミンに分類されます。化学的にはレチノイドと呼ばれ、動物の体内のみに認められます。β-カロテンは、ビタミンAの前駆体であるプロビタミンAと呼ばれており、植物にも存在しています。ビタミンAは、眼球の網膜上にある視細胞で光の明暗をコントロールしている「ロドプシン」という物質の発色に関与していて、光による興奮に関わる重要な働きを持っています。

    摂取・代謝・排泄


    植物に含まれるβ-カロテンを経口摂取すると、小腸で分解され、ビタミンA(レチノール)となり吸収されます。ビタミンAの単位はレチノール 0.33μg/mlを1IU(国際単位)と定めていて、一日の摂取量が10万IUを超えると過剰障害が発生するといわれています。レチノール当量(RE)という表記法もあり、この場合、1IUが0.33μgREとなります。ビタミンAは、動物性由来のビタミンA(レチノール)の過剰摂取が問題となり、豚のレバーには39000IU含有されています。植物性由来のプロビタミンAであるβ-カロテンは、体内のビタミンA(レチノール)量が十分であれば、体内に入ってもビタミンAに変化されないので、量を気にせずに摂取できるといわれています。
    ビタミンA(レチノール)の不足は、ロドプシンが機能しなくなるため、暗闇で見えにくくなる夜盲症が発症すると考えられています。また、レチノイン酸は、ムコ多糖の生合成を促進して、細胞膜の抵抗性を増強するといわれているので、不足により皮膚感染抵抗力の低下や皮膚及び粘膜の角質化を引き起すと考えられています。
    厚生労働省は、健康な個人または集団を対象に、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものとして「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」を策定しました。

    食事摂取基準(単位:µgRE/日1)


    男性

    年齢推定平均
    必要量2)
    推奨量2)目安量3)耐容
    上限量3)
    0~5(月)300600
    6~11(月)400600
    1~2(歳)300400600
    3~5(歳)300450700
    6~7(歳)300450900
    8~9(歳)3505001,200
    10~11(歳)4506001,500
    12~14(歳)5507502,000
    15~17(歳)6509002,500
    18~29(歳)6008502,700
    30~49(歳)6008502,700
    50~69(歳)6008502,700
    70以上(歳)5508002,700
    妊婦(付加量)初期
    妊婦(付加量)中期
    妊婦(付加量)末期
    授乳婦(付加量)

    女性

    年齢推定平均
    必要量2)
    推奨量2)目安量3)耐容
    上限量3)
    0~5(月)300600
    6~11(月)400600
    1~2(歳)250350600
    3~5(歳)300450700
    6~7(歳)300400900
    8~9(歳)3505001,200
    10~11(歳)4005501,500
    12~14(歳)5007002,000
    15~17(歳)4506502,500
    18~29(歳)4506502,700
    30~49(歳)5007002,700
    50~69(歳)5007002,700
    70以上(歳)4506502,700
    妊婦(付加量)初期+0+0
    妊婦(付加量)中期+0+0
    妊婦(付加量)末期+60+80
    授乳婦(付加量)+300+450

    1. レチノール当量(µgRE)=レチノール(µg)+β-カロテン(µg)×1/12+α-カロテン(µg)×1/24+β-クリプトキサンチン(µg)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(µg)×1/24
    2. プロビタミンAカロテノイドを含む。
    3. プロビタミンAカロテノイドを含まない。

    ビタミンAの典型的な欠乏症として、乳幼児では角膜乾燥症から失明に至ることもあり、成人では夜盲症を発症するといわれています。その他、成長阻害、骨及び神経系の発達抑制もみられ、上皮細胞の分化・増殖の障害、皮膚の乾燥・肥厚・角質化、免疫能の低下や粘膜上皮の乾燥などから感染症に罹りやすくなると考えられています。成人が4ヶ月にわたってビタミンAの含まれていない食事しか摂取していない場合でも、肝内ビタミンA貯蔵量が20µg/g以上に維持されていれば血漿レチノール濃度は正常値が維持されるので、この肝内ビタミンA最小貯蔵量を維持するために必要なビタミンA摂取量が、推定平均必要量を算出するための生理学的な根拠となります。
    安定化同位元素で標識したレチノイドを用いてコンパートメント解析を行いビタミンAの不可逆的な体外排泄処理率を算出した結果から、体重1kg当たり1日のビタミンA体外排泄量9.3µg/kg体重/日を補完するために摂取しなければならないビタミンAの必要量が9.3µg/kg/日と推定されるので、この値を推定平均必要量の基準値として策定され、この値を基準体重から概算して推定平均必要量が算定されています。推奨量は、ビタミンA必要量の個人間変動を考慮して策定されています。ビタミンAの過剰摂取により、血中のレチノイン酸濃度が一過性に上昇し、頭痛、頭蓋内圧の亢進、皮膚の落屑、脱毛などが起こるといわれており、肝臓へのビタミンAの過剰蓄積による肝臓障害の報告などを考慮して耐容上限量が策定されています。


    ビタミンAは、過剰摂取にも注意が必要なので、なるべく植物由来のβ-カロテンなどのプロビタミンAカロテノイドを摂取しましょう。


    参考資料

    • 日本人の食事摂取基準(2010年度版)  厚生労働省
    • 2010年日本食品標準成分表  厚生労働省
    • ビタミンの事典  日本ビタミン学会










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