自閉症スペクトラム


    多くの研究から遺伝子の影響や脳の機能障害によって起こると考えられるようになってきていますが、そのメカニズムは未だに解明されていないのが現状です。近年においては、これらの影響と環境との相互作用の結果として発症することも流れのひとつとなっているようです。
    ら・べるびぃ予防医学研究所ではミネラルという側面から検証し、栄養アドバイスにより心身の成長・発育の支援が大切ではないかと考えています。

    自閉症スペクトラムとは?


    自閉症スペクトルは、自閉症やアスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害及び特定不能の広汎性発達障害を含めた総称であり広汎性発達障害や非定型自閉症ともいわれ、一般的には総称して単に自閉症ということもあります。症状の主な特徴は①社会性の障害②コミュニケーションの障害③想像力の障害で、この3つの障害はそれぞれに関係があり3つ一緒に生じるとされています。
    自閉症は、1960年代から1万人あたり有病率が4~5人とされていましたが、近年では自閉症をより広義の自閉症スペクトラムと概念を拡大したこともあり発生率が1万人あたり27.2人と報告されています(横浜市総合リハビリテーションセンター調査)。


     有病率

    ある時点で対象集団のなかのどのくらいの割合がその病気にかかっているかを示す指標、ある時点であるため変動する可能性がある。


     発生率

    集団のなかから一定期間のうちに病気が発生する率、疾患の原因を探るのに有用。

    自閉症スペクトラムの分類


    自閉症スペクトラムはこのように分類されています。

    診断名症状の特徴知的障害レベル
    自閉症社会性、コミュニケーション、想像力の障害を持っている知的障害の重いものから知的障害の無いもの(高機能自閉症)まで
    アスペルガー症候群社会性の障害と想像力の障害のみ知的障害なし
    レット障害0歳にて発症、足の硬直や手もみ行動、すべて女児最重要の知的障害
    小児崩壊性障害幼児期に発症、言葉の消失と発達の退行を示す重度の知的障害
    特定不能の広汎性発達障害診断基準に当てはまらない主として軽いグループ軽度の知的障害から正常知能

    自閉症と注意欠陥多動性障害(ADHD)・学習障害(LD)


    高機能自閉症やアスペルガー障害の場合、多動あるいは学習障害を伴うことが数多くあります。
    一般的な注意欠陥多動性障害は衝動的なトラブルはあるものの対人関係などは良好であるのに対し、高機能自閉症やアスペルガー障害を伴う場合は対人的に孤立し、クラスメートや他人の些細な働きかけで激昂して暴れるといったトラブルもあります。また、学習障害についても、その代表である、読字困難症の場合、一般的な学習障害では字の読取自体が拙劣であるのに対し、高機能自閉症やアスペルガー障害を伴う場合は、字はスラスラ読めても文の意味が読み取れないというタイプの問題が多く見られます。

    自閉症の原因


    多くの研究から遺伝子の影響や脳の機能障害によって起こると考えられるようになってきていますが、そのメカニズムは未だに解明されていないのが現状です。近年においては、これらの影響と環境との相互作用の結果として発症することも流れのひとつとなっているようです。自閉症の環境要因として嗜好品や化学物質、食事、ワクチンなど様々な原因が指摘されています。その環境因子について、最近の傾向が保健医療科学誌に記載されたので抜粋してご紹介します。
    様々な環境要因について報告がありますが、ここに記載している重金属や食事、ワクチンと自閉症について関連性のある報告もある一方、否定している報告もあり、すべての自閉症をお持ちのお客様に対しての原因もしくは改善策ではありませんのでご注意ください。


    重金属

    ■クウェートで行われた調査において、自閉症の子供40人の毛髪水銀濃度は40人の健康な子供より15倍も高濃度であったとの報告(2005)。
    ■シンガポールで行われた調査において、82人の自閉症の子供と55人の対照群の毛髪水銀濃度の平均値はほとんどかわらないとの報告(2004)。
    ■米国(アリゾナ)で行われた調査において、乳児の歯の水銀濃度は15人の自閉症児と11人の健康な対照群を比較した場合、自閉症児の方が2.1倍であったとの報告(2007)。
    ■米国(テキサス)の1184学区で行われた調査において、環境に放出された水銀の濃度が高いほど、自閉症と特別教育を受ける割合が上がるとの報告(2006)。
    ■米国(カリフォルニア)で行われた調査において、自閉症児284人と対照群児童657人を比較した場合、大気中の水銀やカドミウム、塩化ビニル、トリクロロエチレン濃度が高いほど自閉症スペクトラム障害の割合が高かったとの報告(2006)。
    ■米国(メリーランド)で行われた調査において、ワクチン中のチメロサール以外に水銀曝露なかった自閉症児7人にDMSAチャレンジテスト(大量キレーション剤投与による尿誘発試験)を行った結果、尿中水銀濃度は7人全員が基準値を超え、尿中鉛濃度は2人が基準値を超えたとの報告(2007)。
    ■米国で行われた調査において、自閉症児15人にDMSAチャレンジテストを行った結果、尿中の水銀濃度は1人だけ上昇したとされ、尿中鉛濃度が上昇したのは0人との報告(2007)。
    ■米国で行われた調査において、自閉症児群15人と対照群11人の乳歯中の鉛濃度の平均値を比較した場合、有意差がなかった(しかし平均値は自閉症児群の方が高い)、また同様に亜鉛濃度を比較した場合、ほとんど差はなかったとの報告(2007)。


    食事

    ■血液中、毛髪中もしくは他の組織中のマグネシウム、亜鉛、セレン、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンE、オメガ3脂肪酸、カルニチンなどを含む栄養素が自閉症児では明らかに低値であることがしばしばみられるとのそれぞれ別の報告。
    ■米国で行われた調査において、自閉症児861人と対照群児童123人を対象とし、ドコサヘキサ塩酸(DHA)とアラギドン酸の加えられていない育児用粉乳を与えられた子供は母乳栄養児よりも自閉症スペクトラムを発症させるリスクが4.41倍であったとの報告(2006)。
    ■米国で行われた調査において、自閉症児20人を対象とし、包括的なマルチビタミンとミネラルサプリメントの摂取は睡眠と消化器症状の改善に著しく有益で、行動や受容言語の改善については、あまり顕著ではなかったが有益であったとの報告(2004)。
    ■米国で行われた調査において、自閉症児にL-カルノシンを投与するとジリアム自閉症評価尺度に顕著な改善が見られたとの報告(2002)。
    ■ビタミンB6、葉酸、オメガ3脂肪酸、ビタミンCなどを自閉症児に投与すると、何らかの改善が見られたとのそれぞれ別の報告。
    ■フランスで行われた調査において、マグネシウムとビタミンB6の経口補給により自閉症スペクトラムのある子供の社会的交流、コミュニケーション、知的機能が著しく改善されたとの報告(2006)。
    ■症例報告において、肝油、カルニチン、コエンザイムQ10のような栄養素は個々の自閉症患者に役立つようであるとのそれぞれの報告。


    ワクチン

    ■米国の調査において、水銀を含んだ保存剤チメロサール(有機水銀化合物)の入ったワクチンの曝露が自閉症の確立を高めることと関連があるとの報告はいくつかある。
    ■チメロサール含有のワクチンと自閉症はなんら関係ないとの報告もいくつかある。
    ■米国食品医薬品局によるレビューにおいて、局所過敏正反応は別としてチメロサール含有のワクチンのリスクの証拠はないと結論している(2001)。
    ■英国で1973年以降に生まれ1987年から2001年の間に初めて広汎性発達障害と診断されている人々を対象にMMR(麻疹,おたふくかぜ,風疹)ワクチンが自閉症もしくはその他の広汎性発達障害の危険性を高めるかどうかの調査(症例群:1294人 対照群:4469人)を行った。その結果、MMRワクチンと広汎性発達障害の関係におけるオッズ比(リスク比)は0.86倍であり有意な関係は認められず、また、これを3歳までにMMRワクチンが投与されていて自閉症と診断されている子供のみに限定しても、結果はほぼ同様のであった。これにより、MMRワクチンが自閉症もしくはその他の広汎性発達障害の危険性を高めるという関連はないとの報告(2004)。


    父親の年齢

    ■父親の年齢が高い場合、交絡変数で調整した後でも、それぞれが自閉症や自閉症スペクトラム障害の明らかなリスクファクターになるとのいくつかの報告。
    ■イスラエルで生まれたユダヤ人を対象とした調査において、父親の年齢が10歳上がるごとに、自閉症スペクトラム障害になるリスクが2倍以上となるとの報告(2006)。



     交絡変数

    原因と考える変数以外に影響を与える恐れのある変数のことです。例えば、飲酒する人のガンのリスクを調べようとした場合、ガンになるリスクの高い他の変数(喫煙など)が交絡変数となります。この際、喫煙が調査に影響を与えないように補正する必要があります。


    母親の年齢

    ■交絡変数で調整する前では多くの研究で自閉症のリスクと関連があるとのいくつかの報告。
    ■母親の年齢は他の交絡変数で調整した後でも独立した危険因子であったとのいくつかの報告。
    ■母親が35歳以上の場合の相対リスクは、米国のコホート調査で相対危険度=3.4(2002)、デンマークの研究で相対危険度=2.3(2001)、オーストラリアの研究で相対危険度=1.5(1990)とのそれぞれの報告。


     参考

    自閉症の環境要因 保健医療科学. 2010 59(4):330-337.


    追記

    ■(独)医薬品医療機器総合機構により行われたチメロサールについての調査結果が厚生労働省のホームページに記載されていますのでこちらもご参照ください。
    詳細はこちら
    ■MMRワクチンと自閉症の関係性は、英国の研究グループが自閉症の12症例について、MMRワクチンが自閉症の原因であると報告し、1998年にLancet誌に掲載されたのが最初です。しかし、この報告は様々な問題点を含んでいたためLancet誌からは既に削除されています。詳細な経緯は様々なホームページに掲載されているのでそちらをご参照ください。


    「自閉症」について研究を開始したきっかけ


    海外ではミネラルやビタミンの不足が自閉症の原因の一つと考える文献が数多くあります。現在では否定されていますが、ワクチンに保存剤として添加されているチメロサ-ルが自閉症の原因であるとの説もありました。
    「毛髪ミネラル検査」を行い、その結果から必須ミネラルの不足や有害金属の蓄積が自閉症の原因と言い切ることはできません。しかしながら、多くの自閉症児に特徴的な「毛髪ミネラル検査」の検査結果が明らかになりつつあり、これらを改善することは、良好な心身を造るという意味では大変重要なことと考えます。
    ら・べるびぃ予防医学研究所ではミネラルという側面から検証し、栄養アドバイスにより心身の成長・発育の支援が大切ではないかと考え、自閉症に限らず様々な研究発表を行っています。

    「自閉症」の研究成果の例


    自閉症児における毛髪中微量元素に関する研究

    自閉症児約360名を対象とした「毛髪ミネラル検査」の結果、多くのケースで必須ミネラルが健常児童に比し低レベルであり、一部のお子様を除き水銀をはじめ有害金属は決して高いレベルではありませんでした。また、食事調査からはたんぱく質の摂取が全般的に少ないことがわかりました。食品の質や頻度など、自閉症児に対する食・栄養指導は必要であると考えられますが、元素間の相互作用やその他の影響については今後の課題となっています。


    自閉症児のミネラルのアンバランス

    自閉症児105名を対象とした「毛髪ミネラル検査」の結果、鉄・銅・コバルト・セレンなど12種類の必須ミネラルが自閉症児は健常な子ども達に比較し少ないことがわかりました。これらの所見は、自閉症児の必須ミネラルが不足状態にあることを示唆しています。


    幼児期亜鉛欠乏:自閉症スペクトラム障害との関連

    自閉症児1967名(男児1553名、女児414名)を対象に毛髪亜鉛濃度を調べたところ、亜鉛欠乏と自閉症との関連性が示されました。その結果、自閉症児の毛髪亜鉛濃度は全般に低く、584名(29.7 %)が統計的に異常に低い亜鉛濃度を示し、この中でも0-3歳の自閉症児群の亜鉛欠乏は、43.5 %(男児)と52.5 %(女児)でした。幼児期の亜鉛欠乏が後天的に自閉症の病因に関わる可能性が示唆され、栄養学的なアプローチが自閉症の治療・発症予防への新たな道を拓くのでは考えられます。


     調査の方法について

    ら・べるびぃ予防医学研究所では「(総称としての)自閉症」あるいは「自閉傾向」との申告に基づく研究・調査発表です。


    その他の研究成果はこちら


    オキシトシンとの関係

    オキシトシン (Oxytocin, OXT, OT) は視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンであり、9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンです。オキシトシンはこれまで一般的に陣痛促進剤として使用されたりしますが、出産時の子宮収縮作用をはじめ乳の分泌促進作用など母性に関与し、親子の絆を深めたり、信頼を深める脳内ホルモンとして知られています。
    2010年4月に金沢大学の子どものこころ発達研究センターなどのグループがオキシトシンの投与で知的障害をもつ自閉症患者の症状が改善したとの報道が各種新聞紙上でありました。知的障害を持たない高機能自閉症やアスペルガー障害のケースでは社会的な関わり合いをもとうとする改善例の報告はありましたが、知的障害をもった自閉症児では初めてとのことです。しかし、このグループの症例は1例のみであり、今後、オキシトシンの(この研究での)安全性や症例数の拡大などより詳しい試験を行う必要性があるのではと考えます。


     参考

    ■Two genetic variants of CD38 in subjects with autism spectrum disorder and controls. Neurosci Res. 2010 Jun;67(2):181-91. Epub 2010 May 1.
    ■オキシトシンと発達障害 脳21;13(2):211 -214. 2010
    ■Promoting social behavior with oxytocin in high-functioning autism spectrum disorders. Proc Natl Acad Sci U S A. 2010 Mar 2;107(9):4389-94. Epub 2010 Feb 16.





Contact

e-mail. inf@LBV.jp

tel. 0120-117-424(平日 9:00 ~ 17:00)

fax. 03-3668-5001