カルシウム

「カルシウムの値は十分なのに、アドバイスに〝カルシウムを摂りましょう〟と書かれてあるのはなぜ?」

毛髪ミネラル検査を受けた方からこんなお問い合わせをいただきました。
そこで、今日はカルシウムのお話しです。

 

概 要

カルシウムは体内に最も多く存在するミネラルです。その量は、全体重の1.8%、つまり体重が60Kgの人では1080gものカルシウムが存在します。

体内のカルシウムの内、99%が骨と歯の成分となり、0.9%は筋肉や神経組織などの細胞内外の体液に、残りの0.1%は血液中にあります。

カルシウムはリン(P)と結合し、ハイドロキシアパタイトという固くて丈夫な結晶となり、骨や歯を構成します。

血液や体液中にあるカルシウムは、電子を2個失ったカルシウムイオン(Ca2+)の状態になっています。
このカルシウムイオンは、体内の神経伝達に役立っています。

日本人の場合、カルシウムの摂取量は男女ともに目標を下回っており、厚労省の平成26年国民健康・栄養調査によると、1日当たりの推奨量が680mgのところ、実際には490mg程度しか摂取されていません。

全般的に不足しがちな微量栄養素の中でも最も不足が懸念される栄養素の一つです。

カルシウムの必要量は年代や性別によって違いますが、骨にカルシウムを急速に蓄積する幼児期・思春期と、妊娠中の女性はカルシウムを多く必要とする時期です。

閉経後の女性は特に注意!
女性は、いわゆる更年期である閉経前後5年間に女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が急激に減少します。古い骨を溶かし新しい骨をつくるバランスのとれた骨代謝にはエストロゲンが深く関係しているため、女性は更年期以降、骨粗しょう症になるリスクが高まります。

カルシウムを積極的に摂ることで骨密度の低下を抑えることができます。

 

働 き
①骨や歯を構成する

食物から摂取したカルシウムは、小腸で吸収されます。
小腸では、“エンテロサイト”という細胞がビタミンDと協力してカルシウムを吸収します。さらに、ビタミンDは、吸収したカルシウムを効率よく骨や歯にする手助けをしています。

つまり、カルシウムは、ビタミンDと一緒に摂らなければいけません。

さらに、骨の形成にはビタミンD以外に、ビタミンC・マグネシウム・ビタミンK、さらに微量ですが丈夫な骨の形成には銅・マンガン・亜鉛・鉄なども関わっています。

イラスト骨

②情報伝達(カルシウムイオンの働き)

神経系
カルシウムは血中や体液中ではカルシウムイオンとなり記憶形成や感覚伝達など脳のあらゆる神経系の情報伝達に関与しています。

ニューロンの興奮によって神経終末から放出される神経伝達物質がその受容体と結合すると、細胞質内のカルシウムイオン濃度が上昇します。

この細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が神経系における情報伝達のトリガーとなるのです。

シナプス

筋肉を収縮させる
カルシウムイオンは筋肉でも同様の働きをします。

神経細胞の中を伝わってきた電気信号が到達すると、筋小胞体という袋の中に貯蔵されているカルシウムイオンが放出されます。

放出されたカルシウムイオンは筋肉の収縮を抑制しているタンパク質と結合して抑制を解除します。

すると、筋肉を動かす時のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)が作用して筋肉が収縮します。

イラスト筋肉

 

 

 

 

 

 

 

 

③その他にも…
その他にもカルシウムイオンは、下記の働きなど、体内の様々な働きを担っています。

・出血時に血液を凝固させる
・ホルモンの分泌を助ける
・消化酵素など多数の酵素分泌を助ける
・細胞分裂・分化を促す

カルシウムイオンが機能するためにはマグネシウムが不可欠です。そのため、カルシウムとマグネシウムはバランスよく(Ca:Mg=2:1~1:1)摂ることが重要です。

 

カルシウムが足りないと…

・骨や歯が弱くなる
骨粗しょう症など
・精神的な障害
情緒不安定、認知障害、うつ症状など
・筋肉系の障害
筋肉のけいれんや痛み、心不全など
・血管系の障害
高血圧、動脈硬化など

血中のカルシウムはカルシウムイオンとして一定の濃度に保たれています。

血中のカルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンが働き、骨に貯蔵しているカルシウムが血中に溶けだします(脱灰と呼ばれる状態です)。

カルシウム不足が慢性化すると副甲状腺ホルモンの分泌が盛んになり、骨からのカルシウム流出が増加します。

その結果、骨のカルシウムは失われていくのに、細胞や血中のカルシウム濃度だけが高くなり、高血圧を誘発し(カルシウムには血圧をあげる作用がある)、余分な血中のカルシウムが血管に沈着し動脈硬化を引き起こし、反対に骨はスカスカになって骨粗しょう症と呼ばれる状態に陥ります。

イラスト_折れた骨

 

 

 

 

 

 

 

このように、体内のカルシウムが不足しているにもかかわらず、ミネラル検査や血液検査では高値にでることがあるため、カルシウムは『パラドックスミネラル』とも呼ばれています。

冒頭でご紹介した受検者さまもこの状態でした。

ミネラル検査では、カルシウムとマグネシウムが両方とも高値の場合、脱灰の可能性を疑います。

 

過剰摂取

食事からの摂取だけで過剰に摂ることは、まずありえません。
しかし、サプリメント等で過剰に摂取すると高血圧・動脈硬化・腎臓障害・泌尿器系の結石などの他、鉄やマグネシウム・亜鉛などの吸収をさまたげることがあります。

 

サプリメントでの補給について

食事だけではカルシウムを十分に補給できない場合は、サプリメントも活用しましょう。

その場合、摂取基準量を守るほかに、いくつか注意点があります。

・カルシウムは食間に摂る。
カルシウムは鉄と一緒に摂ると、鉄の吸収を妨げます。
カルシウムをサプリメントで摂る場合は、食後すぐはさけ、食事と食事の間にとるようしましょう。

・ リンの摂りすぎに気を付ける。
リンは摂りすぎても足りなくてもカルシウムの吸収を妨げます。
リンとカルシウムの割合は1:1を超えないようにと言われますが、加工食品に多く含まれるリンは現代人では摂りすぎの傾向にあり、足りない方はほとんどいません。

加工食品を控え、リンの摂りすぎに気をつけましょう。

・ビタミンCを十分に摂る。
 丈夫な骨を作るためには、カルシウムだけではなく、コラーゲンも欠かせません。骨はコラーゲンで作られた組織の上にカルシウムがくっついて作られるのです。

ビタミンCを十分に摂り丈夫なコラーゲンを生成すると、しなやかで弾力性のある丈夫な骨が作られます。

ビタミンCは摂りすぎると尿に排出されるため、過剰摂取の心配がないビタミンです。
十分に摂りましょう。

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投稿者:

ら・べるびぃ予防医学研究所

健康な生活のために、予防医学の立場からいろいろな情報を発信しています。 ら・べるびぃ予防医学研究所のブログです。